『CisLugI-シスラギ-』プレイしました。
須々木です。
ここはレビューサイトではありませんが、時々、レビューのようなそうじゃないような謎記事を書きます。
というわけで、今回取り上げる作品は・・・
SF革命群像劇
『CisLugI-シスラギ-』
2018年8月発売のPC用ノベルゲーム(全年齢)です。
制作はNext Villageです。
http://nextvillage.sakura.ne.jp/
例によって、まとまりなくつらつらと書いていきます。
すべて個人的な感想であり、ちょっとした覚え書きのようなものです。
必要以上に深読みしないでください。
なお、ネタバレはしない方向で書いています。
* * *
さて、このブログを見ている人で知らない人はいないと思いますが、念のために知らない人向けに動画を貼っておきます。
オープニングムービーです。
大きな画面推奨です。
(あれ・・・貼っていいのかな? 問題があったら言ってください)
作品紹介は・・・とりあえず公式を見てください。
※前知識なしでこのブログを見ている人は、こちらに目を通した方が良いです。
http://nextvillage.sakura.ne.jp/index.html#world
体験版はこちらより
http://nextvillage.sakura.ne.jp/trial_download.html
“視る体験版”グランドPV
https://www.youtube.com/watch?v=su3yz8FJ-8E
というわけで、8月某日、COMITIAに用のあった米原にお使いを頼んでゲットしてきてもらいました。
↓ ↓ ↓
オムニバス形式ということで、冒頭の選択肢から以下の4つのエピソードをプレイすることができます(各エピソード内では分岐ナシ一本道)。
◇罪過の兎は手を伸ばす
◇道化の電波時計は時を刻むのか
◇不良の少女は愛を知らない
◇彼岸の獣は言葉を喰んだ
僕は「罪過の兎は手を伸ばす」からプレイしましたが・・・(左上だったので)
『尊厳維持装置』という針状の爆弾が国民全員の脳内に埋め込まれ、「死にたい」と言えば苦しまず、いつでも気軽に自殺を行えるようになった世界の話なので、当然ライトな方向の作品でないことは分かっていましたが・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
ちょっとばかり甘くみてました。。
エピソードごとに雰囲気やボリュームはだいぶ違いますが、少なくとも「罪過」に関しては、そこそこの覚悟が必要だなと。
「罪過の兎は手を伸ばす」は、本作においては軸と言える一本だと思いますが、これはなかなか何と言っていいのやら。
これでもかと揺さぶってくるストーリーは一見の価値ありですが、そこに留まらないアレやコレやもモリモリ盛り込んでいます。
これは一本終えるまで止まることはできません。
ですが、ただ心地よく良い気分でエサを与えられ続けて前進していくのとは少し違います。
ちょっとばかり過激な言い方をするなら、本作は、プレイヤーの顔色を伺って、口当たりの良いものをひたすら与えてくれるようなタイプの作品ではありません。
むしろ、プレーヤーを引き裂き殺しにかかっている。
油断しているとヤられる!
その上で、続きを読まずにはいられない状況に追い込まれます。
正直、途中「これはプレーするべきではなかったかも・・・」とかなり本気で思いました。
もちろんクオリティ的な問題ではなく、メンタル的に純粋にキツかった。
人によって感じ方に差はあると思いますが、結構耐え難く感じる人がいるんじゃないかと思うレベルで展開していきます。
ただ、これは作品として必要なものではあるので、裏を返せば、配慮忖度妥協を遠慮なくカットし、作品世界を突き詰めていったことの証なのでしょう。
というわけで、広く人に薦める気になるかというと、少し躊躇わざるを得ない、ちょっとした危険物の趣きがあります。
だけど、そういったものだからこそ刺さるとも思います。
むしろ、逆に清々しくさえ思えてきます。
当然、人それぞれ好みというものがありますし、無難に万人受けするタイプの作品とも思えませんが、プレイすれば「ちょっとゲームつくってみた」ではないということだけは、間違いなく伝わると思います。
同じ初期条件でゲームをつくらせて、ここまでのものを世に出せる人たちが日本にどれだけいるのか・・・と真顔で言えるくらいには本気度を感じます。
というわけで、この記事をここまで読んでしまった人でまだプレイしていない人は、とりあえずやりましょう。
やってみて微妙だったら、文句はNext Villageまで (オイ
内容についてもっと具体的に触れるのもありかと思いましたが、ネタバレはせっかくのカタルシスを損ないかねないので、ここではナシということで。
=== 以下、独り言 ===
一方で、中身に触れないと魅力を伝えにくい難しさは感じます。
現代の広く〈商業コンテンツ〉は、表面的な分かりやすさを徹底追求して生存競争をくぐり抜ける戦略をとり、「触れないと分からないような中身にどれほどの価値が?」と言わんばかりの、逆転の発想と本末転倒をない交ぜにしたような超現実路線で攻めているように感じますが、本作は、それとは一線を画しているように思えます。
「やれば分かる」が、この現代のコンテンツ市場に通用するのか?
そういった穿った見方をついしてしまい、本作が世に出たことが前述の価値観への挑戦状と勝手に捉えるのなら、その行く末というもの自体が興味をひくし、個人的には一つのエンターテインメント・コンテンツと思えたりもします。
平たく言えば、リアルな方向でこの先どうなるのか興味深い。
=== 独り言、ここまで ===
ちなみに、インパクト含め総合的には「罪過の兎は手を伸ばす」が一番印象に残りましたが、「道化の電波時計は時を刻むのか」の独特の言語センスも癖になります。
エンディングテーマは「彼岸の獣は言葉を喰んだ」の「沈魂花」が好みです。
※ レビューっぽい何かはここまで。以下、ますます脱線。
“同人ゲームの枠組みを超えた作品”
“同人ゲームとしては初となる地上波TVでのCM”
このような謳い文句を添えてプロモーション展開されてきた『CisLugI』ですが、実際、事前に聞かされずにプレイすれば、同人ゲームと思わない人も普通にいる気がします。
プレイすれば分かると思いますが、特に過剰な宣伝文句を並べているわけではなくて、本当に字面のとおりだと思います。
一方、ひと呼吸おいて思考し、「同人ゲームとは?」なんて思う人も普通にいるでしょう。
というか、そもそも〈同人ゲームの枠組み〉って何なんでしょうね。
こういう、根本的な問いを引き摺りだすきっかけを与えてくれるのも、本作の一つの特徴という気がします。
結局、本作は問題提起の話です。
自殺が合法化された世界において“命を問う”話であり、世界を覆う常識に疑問を投げつける者たちの話です。
体制(大勢)を疑い、抗い、問い直す、行動する。
これを、本作の世界観からの引用で表現するなら〈革命〉と言うのでしょう。
そして、そんな〈革命〉を描いた作品が、リアルにおいても“問い”を投げているのだとしたら、これはまた新感覚の面白さのような気がします。
制作している側としては「いいから黙って作品を楽しめ」と思うかもしれませんが、この相似関係は何やら匂い立つものを感じずにはいられません。
つまり何が言いたいのかというと、『CisLugI』という作品は勿論のこと、それを制作した『Next Village』自体にも注目して欲しいなと。
「この人たち、何をしたい人たちなんでしょうね?」と。
「何をする人たちなんでしょうね?」と。
作品世界の中で起きる〈革命〉には、本当の意味で巻き込まれることはできません。
しかし、リアルの出来事、しかも現在進行形の出来事については、その限りではありません。
ここは一つ、「革命群像劇」なるものに巻き込まれてみてはいかがでしょう?
* * *
さて、最後に一応。
ここで触れるか触れないかと思いましたが、ちょっとだけ触れておきます。
プレイした人で気付いた人がいるか分かりませんが、エンドロールで、なんとビックリわざわざ「横浜創作オフ会メンバー」なんてクレジットされています。
知らない人からしたら「何じゃこりゃ?」だと思いますが、ありがたきことかな。
僕は、横浜創作オフ会幹事をやっているわけですが、当然のように本作に何一つ貢献していません。
オフ会に集まる多彩なメンツを眺めれば、Next Villageとの関係は、ギブ&テイクと言えるのかもしれませんが、それでもテイクの方がかなり多い感覚です。
スペシャルサンクスのクレジットも、こちらとしては棚ぼた的なもので、「宣伝してもらってありがとうございます!」という感じです。
改めて言うまでもなく、本作のすべては彼らのたゆまぬ努力の結果でしょう。
“次”を楽しみにしております。
http://nextvillage.sakura.ne.jp/
sho