



■Title:「記憶に残るブック&マガジン」 -時代を編集する9人のインタビュー集-
■インタビュー・編集:深沢慶太
■Data:2008年11月12日発行/224ページ/A5版
■ISBN:978-4-86100-588-6
■ゲスト:幅允孝/ブックディレクター・箭内道彦/『風とロック』・田中杏子/『Numéro TOKYO』・ルーカス・バデキ・バルコ/『PAPER SKY』・米原康正/写真家、編集者・菅付雅信/編集者・赤田祐一/『dankaiパンチ』・いとうせいこう/『Planted』
雑誌(出版)業界という名のカジノで勝ちまくっている9人のギャンブラー達の対談集である。
扱っている媒体のジャンルやスタンスは異なれど、出版不況と言われるこの時代に確実に実績を残している編集者達の作品の紹介とインタビューで構成されている。個性立ちまくっている各編集にまつわる裏話が、深読みすればこの国の出版業界に沈殿する根本的な問題点を的確に抽出しているところが興味深い。
端的に言えば「雑誌媒体は誰の為に制作されるのか?」という、単純なこの質問にこの国の編集部の姿勢と構造が、そのまま制作物のクオリティーに反映されて売上不振につながっている負の連鎖を生んでいるんだよとインタビューの中でズバリ!と代弁している。つまり「広告出稿していただいているクライアントの気に入るような骨抜き去れた特集や編集姿勢には賛同出来ません。私達は己の信じるべき道を進みます」と彼等は言い放っている。
痛快である。
雑誌の実売部数が下降線の一途をたどる現状の中で、広告出稿は制作費の柱となる重要な収入源である。それはそれで全く持って正論なのだが、だからといってクライアントの広告出稿を見込んだ企画や構成は読者の雑誌に対する購買意欲を萎えさせる。だって、タダで配っているフリーペーパー全盛のこの時代に、カタログ的な記事満載の雑誌媒体に消費者はお金払わないもの。本来、雑誌媒体は広告を出稿するクライアントや広告代理店アカウントの為ではなく、「読者」の為に制作されなければならない。しかも、一番の「読者」とは編集者自分自身である事が読み進めるうちに分かってくる。著者のインタビューが上手いんでしょうね。
雑誌に限らずテレビ・ラジオ等にも当てはまる事だが、文化の牽引者としてマス媒体が機能すれば消費に対する指向性も高まり、必然的にマーケットは成長するはず・・・。マーケットが成長すれば、流通が活性化して経済に反映されるのが健全な消費コミュニケーションではないかと個人的に思っている。広告出稿を打っているクライアント(広告代理店)を意識した企画や紙面作りが主流となっている多くのメディアの組織的なパワーバランスの低下は、R25をはじめとするフリーペーパーの台頭を誘引し、雑誌業界全体のマーケット縮小につながっている。しかし、インタビューで展開される各編集者の「雑誌・編集部・企画」に対する明確なスタンスの打ち出し方は、雑誌媒体のリボーンの可能性を秘めた編集スキルとして今後注目を集めるのではないだろうか? ある意味情けない話でもあるが・・・
いずれにせよ、本書は、編集志望の一般読者よりも出版社の上層部や雑誌広告の出稿を打っている企業担当者が読むべき一冊だと思う。
★★