いつものように階段を降りて地下に潜る
どこを歩いているのか
胸から提げた方位磁針の針が
ぐるぐる廻っている
案内板が見えた
改札をぬけさらに階段をおりる
大きな警笛がトンネルに反響し
スカートがふわりとゆれ
ゴーッという音がどちらからともなく
やってきた

電工掲示板に目をやった
はっきりとうかぶ赤い文字が
出発の時間を知らせる
ただの数字なのに
日本人の義務ですよと見下ろすように
主張してくる
ちらほらと降りてくる人達を待たずに
アナウンスが流れる
ドアが閉まります
遠くで車掌さんが安全確認をしている
動き出した車両の窓に映るのは光の加減で
だろうか
弛んでみえる並んだ多くの顔
わたしは到着する駅までの
カウントダウンをはじめ
下を向き携帯でニュースを読むふりをする
どうしよう
暗闇だ
世の中に取り残されたような不安がまた
押し寄せた
うん
明日はバスで帰ろう
信号の向こうに路線バスの案内表示が
かすかに見えた
走らなきゃ
バックミラーに映ったのか少しの間停車
して待ってくれた
間に合った
ゆっくりと走り出したバスのかすかな振動
を感じうとうとしそうになりながらも
ふと窓の外に目をやる
昨日感じた闇が嘘かのように
オレンジ色の夕暮れがビルの向こうに
見えた
♪夕やけこやけで 日が暮れて
♪山のお寺の 鐘がなる
♪お手々つないで みなかえろ
♪からすといっしょに かえりましょ
もう五時か
美容院の店先に
柚子の木がなっている
綺麗に髪を整えたおばあさんがお店から
出てきた
笑顔で美容師らしき男性と言葉を交わして
いる
信号待ちの軽トラック
助手席に座っている女性は上機嫌で
何か歌を歌っているようだ
ふと目が合い恥ずかしそうに向こうを
むいてしまった
季節のうつろぎと
他人の日常を垣間見る
そしてゆるやかに
人の数だけ幸せをかぞえる

いつもを少し変えてみる