私には、2才年下の弟がいる。
弟は私とは対照的に、小さいころから明るく社交的で、スポーツが得意なクラスの人気者だった。
両親の離婚後、母が夜遅くまで働いていたので、小さいころは家では弟と遊ぶことが多かった。
ただ、父のことを話題にしたことは一度もなかった。
ピース数の多いパズルを一緒にやった時のこと…
最初はなかなか目に見える進展がなかったものの、毎日少しずつ二人で取り組むうちに、輪郭や部分部分のピースがまとまりを見せてきた。
完成が近づくにつれ、お互いピースを手に取るスピードが速くなっていく。
残り少なくなり、胸の鼓動が聞こえ始め、いよいよ最後の1ピースになった時…
私たちは同時に、手を伸ばすのをやめた。
お互い顔を見合わせる。
弟はにこにこしながら、
「お姉ちゃん」
というと、残されたピースと私の顔を交互に見た。
私は、迷いながらも最後のピースを手に取り、パズルにはめこんだ。
「わ〜い!!」
歓声とともに2人で大きな拍手をし、完成を喜び合った。
弟は、姉の私よりもずっと心が成長していると感じられることが普段から多かった。
いつも私のことを気にかけ、自分のことよりも優先してくれた。
母のいない夜に、弟がいてくれるだけで安心できた。
大人になって気づいたこと…
弟は、私が思っていたほど陽気で楽天的な性格というわけではなかった。
表面は明るく振る舞っていても、寂しがりやで傷つきやすく、急に不安になったりして、好きだった営業の仕事も心身の不調のため辞めざるを得なかった。
相当無理をしていたのだと思う。
もっと早く弟の心の声に気付き、苦しんでいる時に寄り添ってあげられていたら…
子供のころに、姉としてもっと弟のことを理解し大切にしてあげられていたらよかったと、それだけを後悔している。