「あの日彼女は、ケイル様が私に言った言葉と同じ言葉を、実加さんに言ったんです。
驚きました…この人を知りたい、そばにいてみたい、そう思ったのです。」
黒沢の言葉に、みるみる赤くなる麻衣子。
「ちょっと元さん、恥ずかしいからそんなこと言わなくていいから…。」
元??
広人と奈月はキョトンとした。そんな2人に気付いた実加が
「黒沢元…これが名前、兄さんはいつも、ミドルネームのクロードで呼んでたから。私も知ったのは…」
「あれです…まあ、色々とあって…。色々とね。」
と麻衣子が慌てていった。そんな麻衣子と黒沢を見ながら、実加が
「結局、ケイル兄さんも私も黒沢さんも、麻衣子が好きだって事が分かった…って事です。
まあ、麻衣子を私からとった黒沢は、いまだに大嫌いですけど。 」
と言い、黒沢を睨み付けた。
「だから、すいませんでした。」
困った顔をして、黒沢は謝った。
「ったく、麻衣子ったらどこが良かったのやら。」
プリプリしながら言う実加を、麻衣子と黒沢は顔を見合わせながら、でも笑顔で見ていた。
その唐突な話に、まだ2人は信じられずに、固まったままでいた。
だが、麻衣子と黒沢を包む空気は昔とは違い、ほのぼのと暖かかった。
実加も、なんだかんだ言いながら、優しく2人を見つめていた。
そんな3人を見て、広人は思った。
ケイル…もしかしたら、君の望みの1つはこれ だったりして。 君は、君が最後にかかわった人達の笑顔を見たかったんじゃないかな。
とくに、麻衣子さんの笑顔だったりして…。
ケイル、君は麻衣子さんが、好きだったんだな。
広人は麻衣子の笑顔を、眩しく見ていた。
4人と話したあと、館から出た広人は、緑の隙間から差し込む、初夏の陽射しをあびながら、森の中を歩いた。
あの日俺はこの館に来て、結さんとケイル、2人の美しい悪魔に魅いられた。
あの日から、俺は変わりはじめた…。
大切な誰かを守る力が欲しい、そう願いはじめ た…。
今はまだ、大切な誰かを見つけてはいないけれ ど、いつか必ず出会えたら、必ず守り抜いてみせる。
君がどんなことがあっても、結さんを受け止めたようにね…。
広人は館を振り返り、緑に包まれて静かにたたずむ白銀の城を、そのカメラにおさめた。