「そんな時が何百年も続いていた、永遠に続くと思って皆は諦めていた。
その頃、世界中に戦争が拡大し、戦禍は激しく なっていた。
一族はその現状にやっと気付き、逃げ出すのは今しかないと、見張りの目を盗み城を抜け出し海を越えた。
そして放浪のはてに、やっとこの地にたどり着いたんだ。」
ケイルの話を聞いていた広人が、
「そんな思いをしてこの国に、この村に辿り着いたなんて…それが真実なのか…。
じゃあもしかして、君達は今もまだその呪いの言葉に縛られたままなのか。」
と聞いた。 ケイルはしばらく黙り、静かに言った。
「ああ逃れられない、この血の続く限り…俺達は人にはなれない…俺達は…俺は、吸血鬼…化け物なんだから。」
広人は思いもよらない言葉に、ただただ驚いた。
「きゅ…吸血鬼…」
広人は動揺のせいで、視線が定まらずにいた。 そんな広人にケイルは、
「空想なんかじゃない、これは現実だ…俺達は人の血を食事とし、100年以上生きて、未来を見ることが出来る。
その力のおかげで、この村で住んでいられたんだ。」
と言った。そして
「クロード…」
と黒沢を呼んだ。 静かに、黒沢が表れた。
「はい、ケイルさま。」
広人は驚いて
「きみは、たしか平岩さんの…」
黒沢は広人に会釈をし
「わたくしの主は、今も昔もケイルさまだけで す。」
と言った。驚き息を飲む広人に、ケイルは
「広人…今すぐ彼女達3人を連れて、この家から出るんだ。逃げ道はクロードが教える。」
混乱している広人に、ケイルは続けて話した。
「それと、もう一つの質問、君を見てみんなが驚いたその答えは、きみの持っている写真集にある…。」
広人は驚いて思わず
「え、写真集?」
と聞いた。
「そう、この城の写真を撮った写真家、天野新一郎…君がその彼にソックリだったからだ。」
広人は、食い入るように写真集を見ていた結を思い出した。
俺が似ている…この家の写真を撮った天野新一郎に。だから、皆驚いていたのか…。広人は聞いた。
「その人は、天野新一郎はいま何処にいるんですか?」
ケイルは目を伏せて
「彼は…新一郎はもうここにはいない…彼は殺された、いや俺が殺したも同然だ。」
と言った。
広人はあまりの衝撃に、ただ立ち尽くすだけだった。ケイルは続けて、
「新一郎は、この国で…今生まれてはじめて出来た友達だった…なのに、その彼を俺は助ける事が出来なかった…。見殺しにしてしまった。」
と言った。そして、広人を見て
「その新一郎の姪が…麻衣子さんなんだ。」
と言った。
広人はその言葉に、驚きと共にやっと全てのピースが揃ったような気がした。
だからか…俺があまりにもおじさんにそっくりだったから、麻衣子さんはあんなに驚いていたのか…。
やっと事態を納得した広人にケイルが、
「彼女…麻衣子さんは、新一郎の行方を知るためにここまでやって来たんだ。
でも、新一郎はもう…生きてはいない。
たのむ、彼女に伝えてくれないか…残酷だけど新一郎は死んだと、そんな新一郎の代わりに、ここから逃げ出し生きてほしいと。」
その言葉に広人は力強く
「分かった、かならず伝えるだから……生きろ…。」
と言い、ケイルを見た。
「そうだな…」
と、ケイルは悲しく微笑んだ。
「諦めたら終わりだ、諦めるなよ。」
と言い、広人は黒沢と共に部屋を出ていった。
「君だから頼むんだ…新一郎にそっくりの君だから、彼女たちを頼む。」
ケイルが呟いた。