翌朝、麻衣子と実加と奈月の3人は、厨房へと向かった。
その途中で、迎えに来たばあやとあった。
「どちらへ、いらっしゃるのですか?」
ばあやに聞かれて、麻衣子が答えた。
「配膳の手伝いや、掃除をしようかと。」
3人をゆっくりみて、ばあやが言った。
「皆さま方は主に、結さまの話し相手をしていただくのが仕事です。
後は、用事が出来しだい申し上げますので、お気になさらないように。」
その言葉に、奈月が
「でもそれじゃ、遊びに来てるみたいじゃないですか、バイト代もらってるのに。」
と言うと、
「こんな山奥に、わざわざ来ていただいているのですから、あれでも足りないくらいです。」
そう言い、ばあやは向きを変え
「さあ、すぐに朝食の用事が出来ます。様おいでください。」
と言い、歩きだした。
3人は、そんなばあやの後をついていった。
扉を開けると、結と広人がいた。
「おはよう皆さん、昨日はゆっくり休めたかしら。」
実加が口を開いた。
「はい、ゆっくり休ませてもらいました。」
「それはよかったわ。」
そう答える結に、奈月が話しかけた。
「あの結さん、私達何をすればいいですか?
バイト代もらってるのに、何もしないなんて、居心地が悪くって。」
「私も、何をすればいいか言って下さい。」
と麻衣子も言った。
「珍しい人達ね、今までの人達は喜んでいたのに…。
そうね、じゃあ今晩の夕食をお願いしようかしら、何でも作っていいわよ。」
と結が言うと
「それじゃあ、うち特製の鍋なんかどうですか? もう、何でも入ってるんです!!」
嬉しそうに、奈月が言った。
そんな奈月に広人が
「あ、俺も何か手伝うよ、って言っても運ぶくらいだけど。」
と言うと、
「コキ使いますからね~覚悟してください。」
と、奈月が答えた。
笑いあい、和やかな空気が流れていた。
朝食が終わり3人がさり、結と2人になった広人が言った。
「結さん、もしかしてこの家には、もう1人住んでいるんですか?」
紅茶を飲んでいた、結の手が止まった。
「なんの事かしら…。」
明らかに動揺して答える結に、広人はいった。
「俺、見てしまって…あれは誰ですか?」
結が満面の、しかし張り付いたような笑顔で、広人を見て言った。
「夢でも見たんじゃないかしら…でも、居るのなら、そのうち逢えるかも知れないわね…。」
結の言葉に、広人は
しまった…また、怒らせてしまった…さすがにまずい…
広人は慌てて
「あ……俺…すみません失礼します。」
と言い、足早に部屋を出て行こうとした。
そんな広人を横目に、結が呟いた。
「生きていればね…。」
広人は驚き振り返ったが、そこには穏やかな表情の結が、紅茶を飲んでいるだけだった。
聞き間違いか?時々、結さんがわからない 。
でも、この家には何かある。
広人は部屋を後にした。
「侮れない男ね…本当に新一郎によく似てること。」
と、結は呟いた。
広人は1度自分の部屋に戻ったが、昨日の部屋を探しに廊下に出た。
「どちらへ、いらっしゃるのですか?」
いつの間にか、背後にばあやがいた。
「うわぁ」
思わず、広人は叫んだ。
「す、すみません、ビックリして。」
ばあやは無表情で、広人の横を通りすぎた。
「待ってください!!」
広人は、思わず呼び止めた。そして、思いきって聞いてみた。
「あの人は、誰ですか?」
広人の問いかけに、ばあやの顔が一瞬不気味に歪んだ。
「どなたの事でしょうか…」
動揺するばあやに、広人はもう1人の存在を確信した。
「やだな彼ですよ…結さんたら意地悪して、名前を教えてくれないんです。
教えて、もらえますか?」
と、広人はばあやの様子をじっと見つめ、かまをかけてみた。
ばあやのグレーの瞳は、落ち着きがなくなっていた。
そして、ばあやは小さなため息を1つつき言った。
「あの方は…結さまの兄の、ケイルさまです。 」
ケイル…結さんの兄…