実加は、麻衣子を抱きしめた。
遠くで、父の声がした。
まだ実加が6歳だったころ、父は実加の隣で銀色の銃弾を作っていた。
実加はそれが何かわからず、父に聞いた。
「父さん、この丸いのなに?」
父は優しく微笑み、
「これは大切な銃弾なんだ。出来上がったらこの十字架に入れて、実加にわたすから無くすなよ。」
と言った。それから暫くして、あの事故が起こり父は亡くなった。
父が亡くなって暫くしたある日、実加は母から父の手紙を貰った。
「実加へこれから、お前は母さんと一緒に天野新一郎と言う男性を探してくれ。
もし、本人に会えなかったとしても、天野新一郎に続く者を探し出してくれ。
だが、決してその者達には近付き過ぎないようにするんだ。
そして、目を離さないようにするんだ。 それが、約束の地に行く近道なのだから。
約束の地で、全てを救い終わらせる事が出来るのはお前しかいない。
必ず約束を果たしてくれ。」
実加と母親は遺言の通り、天野新一郎を探した。
だが残念なことに、実加と母親が天野新一郎の住所を見付けたのは、新一郎が行方不明になり亡くなった後だった。
そこで仕方なく、天野新一郎に続く者をさがし、麻衣子にたどり着いたのだ。
麻衣子を見張りながら、約束の地に行く時を実加は待っていたのだ。
そう、全ては予定されていた。
実加が心を閉ざしていたのは、麻衣子に近付き過ぎない為。あくまで、約束の地に行く為に麻衣子を利用するためだった。
だがそんな実加の凍った心を、麻衣子はゆっくりときほぐしていったのだ。
だからこそ、この事だけは実加は麻衣子に知られたくなかった。
麻衣子を、利用していたと言う事を。
それほど麻衣子は実加にとって、大切な人になっていたのだ。
そんな5人を、青年は呆然と見ていた。
広人はそれが村で会った青年だと気付いた。
「君は確か村で。」
広人の言葉に青年は、
「あんた達がここにいるってことは、もう終わったのか。」
と言った。その青年に、奈月が
「もしかしてはじめてこの村に来たとき、あなた何とかって人と一緒にいたでしょ!」
と言った。麻衣子も気付き、
「確か、ひかる?そう、もう一人を光って呼んでたはず。」
と言うと、青年が
「ああ、そうだ。光…あいつはこの村の闇にのみ込まれしまった。」
と言った。光と言う名前に、広人が気付き
「光…もしかしてあのブログ…あれはその彼のブログなのか?
闇に飲み込まれたって…いったい…。」
青年は、悔しそうに
「光は殺されたんだ…村の掟をやぶり、この村から出て今までやって来た事、全てを告発しようとした事がバレたんだ。」
と言った。そんな青年に黒沢が、
「未来がみえる彼等を利用して、裏から日本を支配し利益を得る。その為には人殺しも当たり前それだけではなく、世界中の紛争も操っていた、という事実をですね。」
と言った。青年は頷き、
「ああ…光は、それが許せなかった。
笑いながら他人を踏みにじり、死に追いやるやり方が、許せなかったんだ。
はじめは、城の2人が仕組んだと思っていた…村の皆を洗脳して、やらせているんだと思っていた…でも違ったんだ。」
広人が
「2人の方が、権力の欲しい村人達に利用されていたんだあの力のせいで。」
と言うと、青年は
「ああそうだ…でも、でもやつらがこの村に来なければ、こんな事にはならなかったんだ。
貧しくても、平和に寄り添いながら、生きていられたはずなんだ。
皆が悪に堕ちた原因は、やっぱりやつらなん だ…。
なんで、なんでこうなっちまったんだ。」
と言い、拳を握りしめた。
