いつか優しい未来33 | 「山あり谷あり笑いあり」らんのblog

「山あり谷あり笑いあり」らんのblog

インドアなのに司会やイベントに参加する方向音痴不思議さんの日々を綴ったり、小説や詞を書いたりする迷走系ブログ❗️時折、失踪してblog更新怠ります
再編集投稿の小説は「小説家になろう 名月らん」で検索よろ❗️
なおTwitter・Facebookは、しておりません。m(__)m

「私に、お供をさせていただけますか?」

と、ふいにばあやの声がした。ケイルはばあやを振り返り

「お前は…それでいいのか?」

と聞いた。ばあやは微笑み、

「生まれたときから、お二人と一緒に居ることが私の幸せでしたから、他の道など考えたこと はございません。その時が来たらご一緒にと思っておりました。」

ばあやの言葉に、ケイルが

「お前が一番辛かったはずだ、すまない…さくら。」

と名前を呼ぶと、ばあやは涙が溢れ出した。

「なつかしい名前です。自分の名前さえ忘れていました、最後に呼んでいただきありがとうございます。今日まで生きて来てよかった。」

そう言うばあやを、ケイルは、そっと抱き締めた。

そこに結がやって来て、ケイルを睨み付けた。

「よくもやってくれたわね、皆を逃がすなんて。私をうらぎるのね。」

そう言い、結はケイルに近寄った。

「結、もうやめようこんな事。今が最後のチャンスなんだ。」

とケイルが言うと、結が

「最後?いやよ私は生きるの、ずっと生き続けるのよ。 」

そう言う結の腕を、ケイルはつかんだ。

「この手袋、アザが広がったんだろ。結、お前の体はもう。」

ケイルの手を振りほどき、結が言った。

「そうよ、生きながらどんどん腐っていくわ。あんな血さえ体に入れなければ、私は人でいられたのよ!」

結は怒りで震える体を、必死で抑えようとしていた。そして

「あの日、この血のせいで錯乱した私が、お祖父様とお祖母様を噛み殺したあの夜、その場で殺すことも出来たはずなのに、あなたは私を生かした。
それなのに、今になってこんな風に裏切るなんて、こんな事になるのならなぜあの日に見捨てなかったの、なぜ殺さなかったの、そうすればよかったのに!!」

深い悲しみの色が、2人を包んでいた。

「こんなになるまで生かしておいて、今さら何を言っているの。ふざけないで!全部あなたのせいよ。いいこと、私は全てを手に入れるまで死なないわ。」

そう言う結を、ケイルは悲しい目でみつめた。

「またそんな目で私を見るのね…許さない、許さないわ!」

結の目が赤く光り、ケイルを指差すと、空気が刃物のようにケイルに向かって飛んできた。

「危ない、ケイルさま」

ばあやが、ケイルの前に飛び出した。それは、ばあやの胸を激しく貫いた。

「さくら!!」

ばあやは、崩れ落ちるように倒れた。
ケイルは、ばあやを抱えあげ、

「さくら、なぜだ。俺なら大丈夫なのに。」

と言った。ばあやは苦しい息の中、ケイルに言った。

「あなたの、ケイル様のお役に立ちたかった。やっと、お役にたてました。」

そう言い、ケイルの頬に触れた。そして

「ケイル様、最後に名前を呼んでくださってありがとうございました。あなたに会えて幸せでした。」

と言い、ばあやは静かに息を引き取った。

「さくら…今までありがとう、ゆっくり休んでくれ。」

ケイルはばあやをそっと床に寝かせ、結の方を見た。
結は力を使ったために、苦しそうに肩で大きく息をしていた。そんな結にケイルは

「まだそんな力が残っていたんだな。でも、もう限界なんだろ。それに、その程度では俺の息の根は止められない。」

と言った。