麻衣子たちは、ケイルの部屋へと向かった。
ケイルの部屋の前につくと、黒沢が部屋の扉を叩いて開けた。そこには、やわらかな微笑みを浮かべたケイルがいた。
「やっぱり来たんだね。」
とケイルが言った。
奈月は、ケイルのあまりの美しさに息をのみ見とれていた。麻衣子はケイルに
「やっぱり、あなたは叔父の事を知ってたのね。
教えて、なぜ叔父は死んだの?ここで何があったの? ちゃんと、本当の事が知りたいの、だから教えて下さい。」
麻衣子の力強い視線に、ケイルは覚悟を決め、
「分かった、全て話すよ。さあ、暖炉のそばにおいで」
と、ソファーに座るように促した。
麻衣子と奈月と広人は、ソファーに腰掛けた。 そして、ケイルは話を続けた。
「新一郎は、君達も知っているように写真家だった。
専門は世界遺産、遺跡や建物や仏像、彼は世界中を旅していた。
そんな彼は偶然、本当に偶然この城にやって来たんだ。」
そう言い、ケイルは麻衣子を見た。
「彼は世界中の話を、瞳を輝かせて俺達にしてくれた。
いつかここから出られる日が来たら、必ず自分が案内するからって。」
そう言い、ケイルは目を伏せた。
遠くから新一郎の声がする。
「ケイ…ここには俺がかわりに残る、だから君はここから出て自由に生きてほしい。」
その言葉に、ケイルは悲しそうに微笑み
「それは無理だ、俺はここから出られない。結を一人にしないと約束したから。
それに、ここを出られるのは結だ。」
と言った。
「でも、君だって出たいんだろ!!これが最後のチャンスかもしれないんだぞ。
結さんは俺が、絶対にここから連れ出す。だから自由に生きてくれ。
何処かにきっと、生きられる場所がある。君は、何にだってなれるはずなんだから。」
と言い、新一郎は微笑んだ。そして、
「俺は結さんに、本当に人を愛することや愛されることを教えてあげたいんだ。
今までの孤独や苦しみを、少しでも和らげてあげたい…
俺は結さんを愛してしまったから。」
そう言い、愛しそうにやわらかな瞳をした新一郎を、ケイルは見つめ
「新一郎、君は強いな。俺は君が羨ましいよ。 」
と言った瞬間、新一郎の未来がケイルに見えた。ケイルは息をのみ固まった。新一郎が
「ケイ…」
と声をかけると、
「新一郎…やっぱり、ダメだ。このままだと君は…俺は君に死んでほしくない、助けたい。
頼む今すぐ逃げてくれ、すぐにやつらが来る。」
と青ざめたケイルが言った。
「ケイ…俺は覚悟をしたんだ、生きてここからは帰れないだろうと。だから、仕事も早くケリをつけたし、姪の麻衣子にも手紙を出した。」
ケイルは新一郎の言葉に、強い覚悟を感じた。
そこに、結と白山達が現れた。
「やつらを捕まえろ」
白山の声がして、槍をもった20人ほどの村人たちがケイルと新一郎を取り囲んだ。ケイルが飛びかかろうとしたとき、何本もの長い棒で押さえつけられた。
押さえ込まれたケイルをみて白山が
「危ない危ない、あなたに襲われるのはお断りです。さあ、やれ❗️」
と言うと、数人の村人たちが新一郎に飛びかかった。
「やめろ、やつらを止めるんだ結!結」
ケイルの叫びもむなしく、新一郎は村人たちに床に押さえ込まれながらも
「俺は諦めない、ここを出るんだ。」
と言い、鋭い視線で白山をみた。その白山が
「しぶとい男だ、もう諦めるんだな。」
と、蹴りを入れた、
「やめろ❗️」
ケイルが叫ぶと、新一郎が
「俺なら大丈夫だ、これくらい覚悟してる。だから結さん頼む、もうケイを自由にしてあげてくれ。俺が彼の代わりにずっとそばにいるから、もうこれ以上2人とも不幸になっちゃだめだ!!」
新一郎の言葉に、白山が
「まだ言うか❗️」
と、蹴りを入れようとしたとき、結が
「自由…そんなもの、初めから無かったわ。
ケイルは、これまでもこれからも私のモノよ、誰にも渡さない…誰も代わりになんてなれないのよ。2人一緒なら、どんなに残酷な未来でも構わないわ。」
と言いはなった。
ケイルは、村人たちを撥ね飛ばそうと力を放ったが、本来の力が出ずにいた。
「こんな時に、力が足りない。」
と言うケイルに、
「当たり前でしょ…もう5年以上も、血を飲んでないんですもの。 いくら不老不死と言っても、未来をみる力や跳ね返す力は、血を飲まなければ弱くなる、分かっているはずよね。」
と結が言った。
ケイルはなにもできずに、押さえ込まれたままだった。
