夏の風が吹く8加筆 | 「山あり谷あり笑いあり」らんのblog

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静寂を破るように、タキが話し出す

タキ「そう言うたら、豊子さんの旦那さんがフィリピン沖で亡くなって、もう2年もたつんやね」

と「タキさん、突然なに言うんよ」

ま「フィリピン沖で?」

静「うちの父さん海軍におったんよ、のっとった軍艦がフィリピン沖で敵に攻撃されて沈没してな…いつも元気な母さんが、泣いて泣いて…」

タキ「ほんまに、あんなに豊子さんが落ち込むやなんて…うち、見てられんかったわ」

と「ほうやったかええ?」

静「忘れたんでか?母さんがそんなんやったけん、私が頑張らな…父さんの分もしっかりせんといかんって、必死やったんでよ。お陰で、ゆっくり悲しむ暇やなかったんで」

と「あんたなあ、偉そうに」

千代「おばちゃんそんなに言わんと…うちな、静ちゃんはいつも偉いと思っとんよ」

静「千代ちゃん、そんなん言うてくれてありがとう」

千代「そんな…こっちこそ」

と「千代ちゃんはええ子じゃ、千代ちゃんにくらべたら静や大した事ないんよ。大変なんはみんな同じじゃ、おばちゃんないつも皆に助けてもろうて感謝しとんよ。」

静「母さん、それひどいわ」

千代「おばさん、ほんでも静ちゃんはやっぱりすごいと思うんよ。うちなんか母さんがおらんかったら、どうしたらエエんか全然分からんもん」

静「なに言いよんよ、千代ちゃんとこも大変だったでえ。千代ちゃんが頑張っとるけん、タキおばさんもうちも頑張れるんよ」

タキ「ほうよ、千代がおらんかったらとうに諦めて死んどったかもしれんのやで」

千代「母さん」

ウメ「ほうやね、ほんまじゃわ」

みち子「あの」

のぶ「みち子ちゃん、どしたん?」

みち子「あの、父が最近私に良く言う言葉があるんです」

村山「北見先生が?」

みち子「はい」

村山「何を言うたんや?」

みち子「人は何処ででも、何をしてでも生きていける…諦めるんはその後でええ…ほなけん、生きること生き抜く事が一番大事で一番難しいんじゃって」

のぶ「北見先生らしいなぁ」

村山「ほうじゃの、そう思うとんじゃったら、何があっても帰ってきてもらわんとな、みち子ちゃんのためにも」

みち子「はい」
 
また外の音が大きくなる

と「…そういうたら、ウメちゃんの旦那さんどうなったん?まだフィリピンなんか」

ウメ「それが、ようわからんの…昨日な、どこぞの島に配属になるけん、一度もんてくるって手紙来たんじゃけど、まだ帰ってこんのでよ」

タキ「小さいキイちゃんかかえて、ただでさえしんどい思いしとんのになぁ」

ウメ「ほなけど、待っとるって約束したけん、約束は守らんと」

ま「みんな、すごい…わたし…自分が恥ずかしいです」

のぶ「そんなことないでよ、真樹さんかて口には出さんけど、記憶なくすくらい辛い思いしとるじゃろ。」

タキ「ほんまじゃ、真樹さんも同じじゃ」

ま「あ…ありがとうございます」

村山「ほうじゃの、みんなそれぞれ乗り越えようとしとるんじゃ。生きようとしとるんじゃ…それにしても、智夫くん遅いのう」

紀夫「兄ちゃん、父さんと母さんの位牌を持ってくるん忘れたって、家に戻ってしもて」

のぶ「ほんまに、智夫くんはもう」

紀夫「大事な両親のやからって…」

村山「ほんまにどいつもこいつも、なんで自分の命を大事にせんのじゃろ」

と「ほんまじゃわ、一つしかない命じゃのに…」