病弱な高校生少年と級友の友情を描いた物語です。憧れが羨望になり嫉妬になり、やがて愛情へと変わってゆく思春期の繊細な心の揺らぎを連載でお届けしたいと思います!
病人は天野さんを抱きしめる。
彼の中では筋肉質な太い腕が天野さんの腰に
巻きついてることになっている。
痛ましいほどの勘違い。
二人の体は強く密着する。だが次の瞬間、
病人の体は角砂糖を潰したように
バラバラになって砕け散った。
夢想の失敗。
思わずため息が漏れる。
結局、僕は僕から逃れることはできないのだ。
何かを手に入れる前から何かを失っている。
始めから何もないのになぜか喪失を味わっている。
バスの窓から差し込む西日が眩しくて
自然に目蓋が閉じた。
このまま揺られて十五分もしたら
家の近所のバス停にたどり着く。
僕は美容室前のいつもの見慣れた風景になんの
感慨も持たず、カードをタッチして、
自分はどちらの足から先に降りるべきかを
ぼんやりと考えながらバスのステップを踏むのだろう。
それ以外にやることはないし、
それ以外に重要だと思えることはない。
けれど、目を閉じたまま僕の体は本来のバス停を
通り過ぎ、当然のように次のバス停も通り過ぎていた。
急に、自分が慎重になっていることの全てが
バカらしく思えてきた。
いったい誰のために何を守ろうとして
いるのだろう。
確実に家に辿り着かなければいけない理由は?
クラスメイトの嫌がらせに耐えなければ
いけない理由は?
体育を休まなければいけない理由は?
こういう疑問を自分に投げかけたとき、
真っ先に浮かんでくるのが母の顔である時点で
答えは出ていた。
【続きます】
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