新宿で仕事の打ち合わせ帰り、

今日はどういうわけか

花屋さんにばかり目が止まる。

それもガーベラの花ばかり。

 

ガーベラは昔から好きな花。

屈託ない明るさとかわいらしさと華やかさ。

ガーベラの花を見ていると

なんだか前向きな気持ちになれる。

 

で、ミニブーケ 千円也。

うーん、千円…ランチ1回分かぁ。

 

少し悩んで 結局買わずに電車に乗る。

しかし最寄駅に着き、

改札を出てすぐの催事場には

「ガーベラまつり」と銘打って、

色とりどりのガーベラが並んでいた。

 

間違いない、

今日はガーベラに呼ばれている。

(しかも10本で500円。お安い)

 

即買い・帰宅して

早速リビングに飾ってみる。

 

珍しがって、ネコも見に来る。

 

「ガーベラの花を見て 前向きになる」

 

それもそのはず、花言葉を調べてみたら

「希望」 「常に前進」

なるほどー。

 

希望と前進、これは

昨今の私が最も必要としていたこと。

だから強く惹かれてしまったのかも。

 

花は風水的にも、とても素晴らしい力を持つもの。

花の「生」のパワーが良い気を

運んでくれる、というのはもちろん、

まず、花を置くに相応しい部屋にする為に

 

自然と掃除がしたくなる

掃除をすると気が清められる

清められた気にお花のエネルギーが満ち

どんどん好循環を生む

 

旬の花こそ、そのエネルギーが強い。

ガーベラは5月頃までがシーズン。

しばらくガーベラの力を借りて

運気を上げたいところ。

 

「またブログ止まってるよー」

何人もの方からご指摘を受けつつ、

更新が気になりながら、2ヵ月近く。

 

気付けば、春。

一昨日が娘の大学の入学式。

帰りに立ち寄った井の頭公園。

 

長い長い冬を乗り越えて咲く花は

清々しく美しい。

 

いやしかし、今年の冬は本当に長かった!

公私ともに色々なことが重なり、

ゆっくりブログ、という心の余裕もなく。

 

大学受験なんて親はすること何もない、

(お金を出すのみ。。。)

と思い、全て本人任せにしていた我が家。

塾には行っていなかったので、

出願、併願・スケジューリング等々、

全部自分でやった娘。

しかしながら、涙涙涙の重苦しい日々が続き

どうなることやら、と

こちらまで胃が痛くなってしまったけれど、

でも、最終的には一番本人に合った

ベストな学校へ決まったんじゃないかと思う。

 

本当に…ちょっと前まで赤ちゃんだったのに…

寝返りした、つかまり立ちした、喋った、歩いた、

そんな成長ひとつひとつに拍手を送っていた頃。

こんな春の日が来るのは、ずっとずっと、

気が遠くなるくらい

先のことだと思っていたけれど。

 

高校卒業式の夜、

娘と二人で雑談をしていたら

 

「無事卒業できました。

いままでありがとうございました。」

 

驚いた私は涙をこらえながら

 

「こちらこそ、おかげでいろんな経験

させてもらいました。ありがとう」

 

と、言ったのがせいいっぱい。

 

巣立ちは急に、訪れる。

 

 

巣立ちは子どもばかりではない。

大人も。

ここ数ヶ月の私の仕事…

イロイロ感じることがあり、

仕事の方法と方向をそろそろ定めることに。

 

ここのところキツくて凹むことの多い仕事が続き、

自信を失うことばかりだったけれど、

だからこそ自分の向き不向きが明確になった

重要な期間でもあったと思う。

 

フリーランスの仕事のバランスというのは

なかなか難しく、ひとつのところから

度々依頼をいただいているうち

いつの間にか

依存的になってしまっていることにも

気付いた。これではいかん!

自分の足で、歩かないとね!

 

…あれ?

久しぶりのブログはなんかちょっとマジメ。

占いイベントのこととか、

伊集院静さんに惚れちゃった話とか、

根岸くんその後、とか

書きたいことはあったのだけど、また次回。

 

 

中学生になってから
根岸くんは信じられないくらい、
遠くに行ってしまった。
 
私は1年F組。根岸くんは1年J組。
H組までの教室は校舎内にあり、
I組とJ組は校庭内のプレハブ校舎。
4年間、同じクラスでずっと近くにいたのに、
突如として出来た距離。
それに 中学生になった根岸くんは、
別人みたいな変貌を遂げてしまったから。
 
野球部に入った根岸くんは、
ぐんぐん身長が伸び、骨格もひと回り大きく
逞しく日焼けして、
声は誰だかわからないくらい、
低く深く響くようになっていた。
 
物理的な接点がない上に、
そんな根岸くんの変化に
戸惑ってしまった私は、
一言も話しかけられないまま、
しかし、好きな思いは
どんどん募ったまま、月日が過ぎ
再びバレンタインの季節がやってきた。
 
小学校までのそれとは違い、
中学生のバレンタインは
さらに盛り上がりを見せる。
「中学生なんだから、
チョコくらい渡せないでどーする」
私も俄然、気合が入っていた。
 
気合が入ったもう一つの理由に
「好きな人に一緒にチョコをあげよう!」
と誘ってくれた
仲間が出来たこともあげられる。
 
「みっちゃん」の存在だった。
 
みっちゃんの好きな人は
根岸くんと同じクラスの樋口くん(仮名)
だったので、放課後、
部活後に教室に戻ってくる二人を
J組の前のテラスで待ち伏せしよう、
という計画を立てたのだった。
 
仲間がいれば、勇気倍増!
みっちゃんと一緒に
近くのショッピングモールで
チョコを買い、14日に備えた。
 
チョコはハート型とか、そんな重いのはNG。
なるべくシンプルで
サラッとした方がいいよね。
と、みっちゃんと話し合い、
私は緑の箱に入った小さなトリュフを用意。
 
(ちなみに…今は本命チョコといえば
手作りが主流かもしれないけれど、
昭和60年代はまだ市版がメイン。
「トリュフ」というのも、この頃やっと、
市場に出てきたと思う。)
 
そしてやって来た14日の放課後。
 
部活終了までの2時間弱の時間を
みっちゃんとふたり、固唾を飲んで待つ。
 
先にJ組の教室に戻って来たのは、
陸上部の樋口くんだった。
 
みっちゃんはそれまで
身体をクネクネさせながら、
「どーしよ、どーしよ、あ~ドキドキする、
渡せないかも~」
と、弱々しくため息をついていたのに、
樋口くんの姿を見た途端、豹変した。
 
みっちゃんは、J組の教室に入っていく
樋口くんめがけて、ドドドド、と、
イノシシのように突進したのだった。
ものすごい、瞬発力。
何が起こったのか分からないような
猛スピード。
 
J組の教室内には、
7~8名の男子と2~3名の女子がいた。
 
みっちゃんはその中で「樋口くん!」
と叫ぶ。
 
2月14日の放課後に、違うクラスの女子が
教室に小さな紙袋を下げ入ってきて、
男子の名前を呼ぶ。
 
このベタな展開に外野は
瞬時にして、みっちゃんと樋口くんのための
花道を作った。
 
「樋口くん、これ、受け取って」
 
「あ、はい、、、」
 
「オー!!」という、
どよめきとともに、嵐のような拍手喝采。
「すげー!すげー!やるなぁ、樋口」
「カップル誕生!」
「キッス、キッス」
などと一斉にはやし立てる声が上がる。
 
茫然としながらも、
なんとも嬉しそうな、恥ずかしそうな、
樋口くん。
 
そして、頬を赤らめ、うつむきつつ、
得も言われぬ充実感に満たされた
表情の、みっちゃん。
 
これがいつもの、みっちゃん?!
 
こんなみっちゃん、見たことない。
みっちゃんの身体からは、
ピンクとゴールドの粒子が放出され、
教室中に舞っているように見えた。
 
…む、む、ムリムリムリムリ!!
 
私にはとても出来ない。
 
渡せない。絶対に、無理。
 
思いがけぬスポットライト全開の
華々しいチョコ贈呈ステージに
完全に怖気づいてしまった私は、
そのままみっちゃんを置いて
J組の教室を飛び出してしまった。
 
その時前方から、根岸くんが歩いてきた。
野球部の練習着姿で、戻ってきた、根岸くん。
 
「なんでここにヌボボン?」
驚いた顔で私を見る、根岸くん。
 
私は「アワワ…あうあう」
完全パニックに陥り、
うなり声のようなうめき声のような、
へんな声を出して、
踵を返し、速足で逃げた。
 
校庭を出ると、走って逃げた。
そのまま家まで、走って逃げた。
 
道中、リュックの中に入れていた
チョコの箱がカタカタ、
ずっと虚しい音を立てていた。
 
その夜 私は泣きながら、
緑の小さな箱を開け
人生初めての「トリュフ」を食べた。
 
…それが、中学校時代の
「根岸くんとバレンタイン」。
 
 
 
「根岸くんとバレンタイン」終わり