原題『夜奔』(2000年台湾)

監督: 徐立功

主演:黃磊(ホアン・レイ)、尹昭德(イン・シャオトー)

 

 

偶然見つけたシリーズ…笑、ではないのですが。SNSに導かれて辿り着きました。20年も前の作品、埋もれた名作、本当に出会えてよかったです。心に静かな余韻を残す秀作でした。

 

1930年代の中国、天津。

裕福なお坊ちゃまシャオトンと旅芸人リンチョンの身分違いの恋。

まぁ大方の予想通りリンチョンはシャオトンに終始振り回されるのですよ。しかも、シャオトンにはインアーというフィアンセがいて、彼女が彼ら二人を引き合わせたのですから。

彼女もまさか、自分の彼氏がリンチョンにとられちゃうとは思わなかったでしょうね。

 

シャオトンは本当に根っからのお坊ちゃまで、正義感が強く、常に自分の心に忠実です。欲しいものを欲しいと言い、好きなものを好きだと言える。だから後先考えずに行動してしまい、リンチョンを深く傷つけてしまうのです。

 

リンチョンを傷つけてしまったことに傷ついたシャオトンは、無神経にもインアーの元へ行き、リンチョンへの恋心を自覚しながらも、どうしても男同士の恋愛を認めることができず、その気持ちから逃れるように彼女にプロポーズします。

本当はシャオトンに「結婚しよう」と言われて嬉しいはずのインアー。でも、「あなたが本当に愛している人は自分じゃない」と、彼のプロポーズを突っぱねます。リンチョンを思いやってのことです。

 

彼女の聡明さはこういった言動の端々に見えます。常に自分よりもシャオトンとリンチョンの気持ちを大事にするその寛容さがこの物語のキモになっています。

だからでしょうか、恋敵であるはずのリンチョンとインアーとの間には堅い友情が芽生えていくのです。

 

ある事件を起こしてしまい、逃亡せざるを得なくなったリンチョンは、その夜、別れを告げにインアーの部屋に現れ「シャオトンと幸せになってほしい」と自分の笛を託します。

彼女だからこそ、自分の分身である笛と愛する人を任せられる、きっとリンチョンはそう思ったに違いありません。そしてその思いをインアーもしっかりと引き受けます。

 

逃亡の手助けにと、インアーは身の回りにある金品をかき集めそれをリンチョンに持たせます。そしてそれだけじゃなく、恋人同士だった頃にシャオトンからもらったガラスのチェロと彼のアメリカの住所を書いたメモを渡し送り出すのです。

 

こうやってみると、いかにシャオトンがダメな男かがわかります、笑。

まぁダメな人ほどかわいいと思うんでしょうが。。

 

リンチョンの演じる崑劇は中国の伝統芸能です。京劇にとても似ていますが、京劇ほど煌びやかで華やかではないように感じます。もっと、素朴で古典的な感じかなぁ。。

リンチョンが劇中で演じる『夜奔』という演目は、ある事件を引き起こして逃亡しなければならなくなった青年の悲劇を描いた物語です。まさにリンチョンの運命とシンクロしているのです。

 

この辺もソンランに似ているので、ソンランの響きの世界観が好きな人は楽しめるのではないかと思いました。

 

では、シャオトンとリンチョンの二人はどうなるか??

というと、結果的に結ばれます。そしてインアーとも結ばれます…ってなんのこっちゃ!?って話ですが、笑

 

わたし的には、これがハピエン??なのか、どうなのか…とモヤるのですが、こういう終わり方しかないよねーと納得もできます。

気になる方はぜひみていただきたいです。

 

20年前の作品なのでやはりどこか古臭さを感じるところもありますが、途中からそんなことは気にならなくなり、どんどん引き込まれていきました。

 

今なら、こちらのサイトで視聴できます。

Fleeing by night

 

ちなみにレンタルなので課金が必要です。