ザッザッ…
お日様が高く照っていて心地よい風が吹く。
レファンさんが裏庭の奥で準備してくれているはずだけど…。
裏庭といっても、広いだろうしどこだろう。
ロチュス様はレファンさんのお手伝いをしにいくと、料理が完成して少し休憩した後出て行かれたし…。裏庭のどこなのか聞けばよか…あっ!”イヤリング”使えばいいんでは!?
使えるか分からないけど。
«…レファンさん…»
«…ん?サラ?…何故小声なのです?どうなさいました?ロチュス様はこちらにおりますよ»
«すみません、これが使えるか分らなかったので恐る恐るになってました。えっと、裏庭に着いたのですが、どちらにいらっしゃるのでしょうか?»
«えっとそうですねぇ。裏庭のどこに今いらっしゃいます?»
«今は城内からまっすぐ…「サラ!こっちよ~!!」
«お嬢様!?「ロチュス様!?」»
一気にレファンさんとロチュス様の声と自分の声とで混乱する。
目の前にはロチュス様がこっちに駆け寄ってきた。
思念の方では、レファンさんがハァ…とため息をついている。
«…全く、急に飛び出すなよ。心臓がいくつあっても足りねぇ…。
…あっ、”繋がっている”んでしたっけ…?くれぐれも今のは何も聞かなかったことにしてくださいね。»
«はっはい!もちろんでございます!!»
誰かに話したら殴られそう…
«女性を殴るなんてとんでもない!…ただ、お話したら”特別メニュー”をしていただくだけですよ»
とレファンさんが筋トレやら何やらしようとしているのが伝わってくる。
«う、絶対キツいやつ。絶対話しませんのでご安心ください!では、ロチュス様とそちらに向かいますね、失礼します»
シン…
「サラ、早く行きましょう?」
思念でレファンさんとヒヤヒヤしている間、ロチュス様にいつの間にか右腕を抱きしめられていた。
うう…思念を使う時は心の声も届いてしまうんだっけ?気をつけないと…。
”アレ”がレファンさんにバレてしまう…!!
ロチュス様に引っ張られる形で奥へと進んでいく…
木々を抜けしばらくすると、上手くぽっかりと開いたように空間があった。
木々が避けて生えているかと思うその光景は、日が中に差し込み幻想的な空間になっている…。
こんなところあるんだ…。凄いなぁ。
「さぁ、着いたわ!ここよ」
そういって私の右手をロチュス様が両手で包みながら話す。
目線の少し奥には、レファンさんがやれやれと言いたげな表情で佇んでいた。
「素敵な場所ですね…。読書でもしていたくなります。」
「でしょう?私もレファンもお気に入りなの!!多分ここを知っているのは私たちだけ、他の人には内緒よ?」
木々の隙間からの木漏れ日と、時々サァッと風が通るこの場所は本当にとても素敵だ…。
この国に夏は訪れないだろうけれど、夏があったらきっと過ごしやすいのではと思う。
「サラ、早速始めましょう。」
レファンさんの声で我に返る。そうだった、あまりにも素敵な場所でボーッとしてた。
レジャーシートのように敷かれている上にレファンさんは軽いお皿を並べてくれる。
その上にそれぞれサンドイッチを置き、その隣にカップにスープを注いで置く。
簡単だけど、これで完成。あとは”アレ”だけど、それはもう少し後で。
「ねえレファン、あのね」
ロチュス様が話し始める…。
「はい、なんでございましょう。」
「レファン、私が小さい頃からずっとお世話をしてくれてその…今回も私のワガママになってしまったのだけども、レファンにお礼がしたくて今回、サラに料理を教えてもらいながら一緒に作ったの!お口に合えばいいのだけど…。」
「お嬢様…、身に余る光栄です。お嬢様の傍にお仕えすることは私めの本望でございます。お礼はこちらの方ですよ。ありがとうございます、ロチュス様。」
レファンさんは片膝を立てて跪く。従者冥利につくとはこの事だな…。
「では、いただきましょう」
ロチュス様が言い、食べ始める。
「…っ!どちらもとても美味しいです、ロチュス様。」
レファンさんが少し嬉しそうに声をかけた。
「本当!?嬉しいわ」
ロチュス様はサンドイッチを両手に持ちながら微笑む。
そして、私の方をみてやったぁ!と片手で拳を作った。
私もとても嬉しい。
「サラもありがとうございます。」
「いえいえ、ほとんどロチュス様が作ったのですよ!初めてとはいえ凄いです」
「サラが手伝ってくれたからよ!」
ーー
お昼ご飯を堪能してしばらく…。
片付けも終わり、シートの上に座りながら満腹になった余韻を感じていると…
「サラ」
とロチュス様が何かを後ろに隠しながら話しかけてきた。
「どういたしました?」
「目をつむって頂戴」
と唐突に言われた。
何だろう…?と思いながら目をつむる。
良いわよ、といわれて目を開けるが目の前には何も変わった様子はない。だが、頭の上に違和感が。
「これ、サラにもお礼というかこれからもよろしくお願いしますの意味も込めて!」
とロチュス様は恥ずかしそうに言った。
折角乗せてくれたけど、失礼して…。と慎重に頭に乗せられた物を前に持って行くと…
白と黄色と青の花冠だった。
ところどころ幹が乱雑になっていたり、不安定になっていたりするのを見ると、ロチュス様が一生懸命誰かに教えてもらいながら頑張っていた様子が浮かぶ。
「…とても素敵ですね!ありがとうございます、ロチュス様。大切にしますね。こちらこそ今後ともよろしくお願いいたします」
「喜んでくれて良かったわ!」
とロチュス様も満悦の笑み。
「サラ、後ほど花冠をジャルディさんへお渡しするとそのままドライフラワーにしてくださいますので、おすすめします」
とレファンさんが話してくれた。
ジャルディさん、庭師の方だったっけ?人の名前覚えられてないなぁ~。
「ありがとうございます!」
「さてと、あとは”アレ”!そろそろ良いかしら?サラ」
「そうですねぇ、お腹も落ち着いてきましたし。」
と持ってきたバスケットの中から”アレ”を取り出す。
実は、スープとサンドイッチに入れるハンバーグを作ったあと、デザートも作っていたのだ。
時間はそんなになかったから、ゼリーになってしまったのだけども…。
レファンさんはブルーベリーが好きなのだそう…。
なので、ブルーベリームースの上にブルーベリーのジャムと実をふんだんに使ったゼリー!
「はい、レファン!スィーツも作っていたのよ~、ブルーベリー好きだったでしょう?」
とロチュス様は小さなスプーンとゼリーをレファンさんに渡す。
「…こんなにお嬢様に至れり尽くせりとは。明日は雪でも降るのでしょうか?」
とレファンさんは嬉しそうに、少し照れくさそうにしている。
こうしてデザートも堪能し、午後からは日常に戻っていく…。
「ハァ…、お昼まではあんなに楽しかったのに、明日はテストなんてぇ~」
とロチュス様がベッドの上で紅茶を入れたカップを口元に近づけながら呟いた。
時刻は20時30分。
就寝時間を少し過ぎているのだが、ロチュス様が明日はテストがあるためもう少し勉強したいと言ってこの時間になったのだ。
「はは、楽しかったですね!またいつか一緒に料理しましょう。楽しいことはたまに行うから楽しいのですよ~」
気持ちは凄くわかる…。あんなに忙しかった平日を過ぎて、楽しい休日はいつだってあっという間だ。
それは子どもの時でも、大人になった今でも変わらない…。
「そうね…。また一緒に料理を手伝って頂戴ね!今日のピクニックは大成功だったわ!!」
「はい、もちろんでございます!大成功でしたね」
横になったロチュス様は、相当疲れていたのか5分足らずに寝入ってしまった。
明かりを落としそっとロチュス様の頭を撫でる。
なんとなく撫でたくなったのだ。
一生懸命頑張っていた様子をみてなんとなく…。
モヤモヤとした焦りと不安がフツフツと沸いてくる。
守るために、護るために…。
もっと力を付けたい…
続く
