これは少し前の、サラが騎士団に入り、護る力を学び始めた時のお話し…
あたりは暗く、シン…と静まり返っている。
胸元のポケットから時計を取り出して見ると
針は23時を回っている…。
「…はぁ。」
このところ毎日静かに湧き上がるこの気持ちを、
吐き出したくて仕方がない。
そう思えば思うほど、歩く足は早くなる。
ヴゥンッ…
一階に降りて食堂へと向かい扉を開ける。
食堂は、必要最低限の灯りをつけているからか薄暗い。
子どもが見たら怯えて泣くぐらいの、大きな後ろ姿がテーブルに向かっている。
その後ろ姿に吐き出したくて仕方がない気持ちを、どこかにぶつけたくて仕方がない思いを一旦堪えて声を掛ける。
「お疲れ様です。」
「…よぉ⁉︎お前、大丈夫か⁉︎」
彼…アルディはその見た目通りの大きな声で、反応が返ってくる。
もう少し声を小さくしてもらいたいとたまに思う。
「ええ…。と、言いたい所ですが、少々吐き出したくて仕方がないですね」
そう話しながら、彼の前に座る。
「おぅおぅ!何でも聞くぞー⁉︎」
飲め…と言って既にテーブルにグラスが二つあり空いているグラスにお酒を入れてくれた。僕が来る事分かっていたのか?
「…ふぅ。もぅ…正直言って嫌になりますよ、自分が。」
飲み干して呟く…。ああ、本当に嫌になる。
「お嬢様の事か?何があった…?」
「お嬢様の事もありますし自分の事もありますし、新人の事も…。」
「…おぅ、はけはけ。」
「お嬢様の能力を疑う訳ではありませんが…。魔法の能力が分からず、ましてや護り方も分からない素人に、たったの3ヵ月で教えろと⁉︎…まぁ、油断して怪我をした僕がいけないのでしょうが。…んくっ、…はぁ〜。お嬢様は気に入ってワガママ言って連れ回すし、新人は新人で仕方ないんだろうけど。…ああああっ‼︎」
吐き出したくて仕方がない気持ちが溢れて止まらない。
アルディは何も言わずに聞きながら、僕の空いたグラスに酒を注いでくれている。
こうしてたまに歳の離れた同期と飲み交わす、この時間が癒しだ…。
「そもそも時間が足りない‼︎…騎士の誰かだったらまだ安心出来たのにっ‼︎それに…、あいつに…僕の全部を奪われそうな気がして…。」
「レファンが初めて託された事だもんな、お嬢様の世話は。…そりゃ、心配になるわな。」
「ロチュス様は、生まれた頃からずっと見て来て世話して喧嘩してきたから…。なおさらだよ…。」
「…足の状態はどうなんだよ?」
「足は…たまに薬が切れる。それをあいつに見られた。…はぁ、屈辱。」
「…厄介な魔法に掛かっちまったな。何でったって回復不可の魔法を使うんだ?」
「向こうも必死みたいだな。『仕方ない、勿体ないが…』って言ってたから、奥の手なんじゃない?…今はそんな事より、どうやって鍛えるかだよな…。」
「いい子だと思うぞ?なんとかなるんじゃないか?」
「なんとかなる気がしない。…辞めるならさっさと辞めて欲しいね。…今からでも王に懇願してみようかな?素人よりも騎士に…って」
「…おお。…ま、その新人の行動次第じゃないか?お嬢様がいいと言ったんなら、何か能力あるんじゃないのか?」
「はぁ〜…なぁんで怪我しちゃうんだよ〜。姫の気品とかもっと色々教えたかったのに…。」
「…お〜い、聞いてるか?」
「はぁ〜…。」
「…ったく、忙しいやつだな。たまにはきちんと休め。」
いつの間にかアルディの話しがぼんやりと聞こえるだけになり、ポツリポツリとなにやら言っているが頭に入って来ない。
だが、今は同期の声が心地よくそのまま身を委ねる。
あ〜…今日は酔いが回るのが早いなぁ。
続く…?