1月28日(木)
上演期間も佳境を迎え、客入りの少なくなった映画館における各客の指定席遵守の姿勢については、12月1日ぶんの記事で書いた。とどのつまり、「融通をきかせようよ」である。あれからおよそ2か月、その間にも劇場で映画を何本か観た上で改めて考察した結果、キーワードは融通推奨に変わりはないけれど、少し神経質にならなくてはいけない、という案に落着した。
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昨夜、巷で話題の「オーシャンズ」を観に行った。昨日、水曜日と言えばレディースデー。そういうわけでチケット窓口は大盛況で、結局スクリーンに入ったのが上映5分前。客入りは4割ほどで、やはりそれは中央少し上あたりに固められていた。
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指定席、ボクの座席は上の方の端っこ。どうせならば真ん中で観たいと思う性分だ。明確な考あるボクは、上映3分前、ざっと館内を見回しおおよその客入りの見当をつけ、さささと人が成す段の最前列中央に移動した(全座席のちょうど真ん中あたり)。
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開始時間を迎える。しかし、いつまでたっても学習しないことは、「すぐに本編に入るわけではない」ということ。ほとんどの映画にはまず約10分間、CMや予告が流される。その建前の「上映時間」から「本編開始時間」のグレーな時間にもちょろちょろと客は入ってくる。やや暗くなった館内でも飄々とした立ち居振る舞いならば、彼らは映画の仕組みに精通した人である。そして焦りが見られるならば、彼らは単に遅れた一般的な人である。
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ある海千山千の精通人物の指定席も端っこだった。彼は指定の席に座り、そして、最後の予告が終わってから本編までのほんの数秒の間に影のようになって前の方真ん中へ移動した。なんという老練さ! なるほどそれならば「あの、そこ私の席なのですが」「アごめんなさい」という気まずさをやり取りする危険度はぐっと減る。実際、「グレー」な時間内に本来の座席保有者が現れそうな予感がびしびし働いたので、結局ボクはそのブロックの端寄りへ少しずつ移動したのだった。
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「オーシャンズ」はご存知、海洋ドキュメントである。例によって内容には触れないがひとつだけ。映画の序盤の一幕に、シャチの有名なシーンがある。波打ち際にあそぶオタリアの親子を、シャチが半分座礁しながら命がけの狩りを敢行する場面である。その迫力たるや毎回息を飲むほどで、まさに自然界の弱肉強食を目撃したという気になる。まさにそんなときだった……。
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突然、ボクの隣に人影が現れた。そして、しゃがれた声が耳もとで「そこワシの席やけど」。見ればひとりのおじさん、は少々不機嫌だった。やばい、と思いボクは声に出さない声でスミマセンと言って体を縮めてさささとずれた。人の座席に勝手に座っていたのだ。この場合の強弱関係は明確で、ここでもまっとうな弱肉強食がくり広げられる格好となってしまった。
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反省はふたつある。まずは何よりも、そのおじさん、及び他のすべての観客の方々の邪魔をしてしまったこと。ほんとうに迷惑をかけてしまったと猛省に尽きる。そしてもうひとつは、「融通をやらせてもらう」ならば、余裕をもったそれをしなかったことだ。
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もしもそのように観やすい席に勝手に移動するならば、より誰も来ないであろう席(列)を選ぶべきなのだ。この場合ならはじめの時点での人々の最前列、そこから2、3列空けた列に座らなくてはならなかった――あの精通人物のように。勝手なことをやらせてもらうのなら、最低それを上回る配慮をする必要がある。それができないのならば、今後は小心者のボクのようにすればいい。すなわち、いかなる場合でも指定に従う。
夕べの2番スクリーンのすべての方々、ほんとうにすみませんでした。