歌う姿、スベる姿にspeechless。 | デュアンの夜更かし

デュアンの夜更かし

日記のようなことはあまり書かないつもり。

 1月17日(日)

 昨日、16日は大阪城ホールへ、KREVAのライブに馳せ参じた。これが二度目。前回は昨年の4月で、会場は同じだった。

▽▽▽

 前回と今回では座席がまるでちがった。大阪城ホールは一階席と二階席があり、演者から見れば客席は扇形に広がっている。前回は二階席、そして扇形のいちばん外側だったのだ。言いようによっては、ステージに近い。けれどほとんど演者の横顔しか見えないと言っても過言ではなく、途中ステージの後方に用意された大型モニターで映像(DVDJ=DVD+DJ)を駆使した行われたパフォーマンスなどは、完全に死角となっておりまるで何も見えなくて苦笑いの一幕だったものだ(それ以外は二階席に用意されたモニターでナイスアングルのライブをたのしむこともできたけれど)。

▽▽▽

 それが今回は、一階席の前から3列目。それも、そこそこ真ん中の方であった。今や自分もすっかりKREVAを愛するひとりであるとの自負があるが、それは一緒に参加した友だちの影響なくしてありえないものである(チケットも彼が取ってくれた)。浮気性な自分、後ろの方の席には一途にKREVAだけにあらゆるものを捧げる覚悟の熱心なファンもいるだろうにと思うとほんの少し申し訳なく思ったが、そんなことを考えても仕方がない。指定された席が3列目である以上は、その特権を最大に活かし、自分なりに目いっぱいたのしもう、と思うと鎖が外れたような気になり、もうワクワクが止まらなかった。自分もKREVAが好きになるまでの間、サブリミナル効果のように事あるごとに「KREVA節」を吹き込んでくれた友人たちに感謝、感謝である。

▽▽▽

 前日にKREVAのブログを見てみると、数日前の「風邪をひいて体調を崩した」という記事以来、更新がされていなかった。物販あたりで撮影されたのだろうか、ファンたちによる一言メッセージビデオが開演まで延々モニターで流されており、そこでも体調を気づかう声が散見された。中止にならずこうして行われているのだから、少なくともまったく動けないわけではないのだろうが、よくても病み上がりである。嫌でも熱演の期待よりも心配の方が勝って、開演を待つ。

▽▽▽

 そうしているうちに暗転し、もはや音楽ライブの域を超えた演出でDJふたりとMPCが登場し、一際派手な演出で主役が現れる。黄色い声援が多いことから、その瞬間がかっこいいものであることは間違いないのだろうが、ボクは笑ってしまう。その懐の深さが、KREVAの最大の魅力だと自分は思うのだ。

▽▽▽

 「心臓」という最新アルバムを引っさげたツアーである。序盤はそのアルバムからの曲をとにかく飛ばして披露していた。デジタルな音楽ゆえに可能にするアレンジで、とにかく飛ばす、飛ばす。すっかり体調は万全なんだな、と曲の合間に思う。

▽▽▽

 だけど、実はそうではない、と途中でもらしていた。直前まで入院していて、練習などにもほとんど参加できずに今日の本番なのだそう。言われてみれば、というより、曲を追うごとに一瞬の辛さが垣間見えたように思えていたのだ。

▽▽▽

 ライブの後半で、ボコーダーという不思議な楽器(機械?)を用いた曲を歌った。それは簡単に言えば鍵盤の弾き語りで、自身は楽譜が読めないし楽器は何も演奏できない、と言っていた。だけどこれをやりたくて、だから失敗するかもしれないけれど、自分の子どものはじめての演奏会を見守る親の気持ちで温かく見守ってくれたらうれしい、と前置きし歌いはじめた。それは見事だった。前置きなどすべて嘘ではないかと思うほど、見事だった。後に本人は「リハーサルでも成功しなかったのに……」と自分でも驚いていた。そして、観客にていねいにお礼を言った。「そりゃ無理もない」、と斜め前の女の子がぼろぼろ泣いているのを見て思った。

▽▽▽

 2時間と少しが、ほんとうにあっというまだった。今回もまたほんとうにたのしかった。体調が万全ではないと自白したこと。鍵盤をミスなく押さえられるかわからないと言ったこと。それらはほとんどの場合、同情を買うことや、うまくいかなかったときの保険である。だけど、それがつまらない打算ではなく、純粋な誠実さであることを、KREVAはきちんとステージで証明した。自分の不利を伝えることは、「だけど許して」ではなく「だからがんばる」という意であり、きちんとその姿を見せた。例え演奏を失敗したとしても、その姿勢で十分に大成功であり、演奏も成功したことは当然のご褒美なのかもしれない。プロだなぁ、とため息が出、ちょっとだけ切なくなった。ぜんぜんだめな自分に、である。

▽▽▽

 いわゆる「プロ」を見ると、名前や噂といった先入観からではなく、正しくパフォーマンスからその人の「プロ」の部分が見えるようになったと思う。すごいなぁ、とその度ごとに感動し、そして決まってやきもちを焼く。いつまでもやきもちを焼いているようではいけない、と強く思う。思わせてくれた。



BGM

『Toight』 KREVA