著者:ベッキー・スメサースト
翻訳:梶山あゆみ
発行:山と渓谷社 2025年
本書は、星はなぜ光るのかから始まり、ブラックホールに関する最近の知見までわかりやすく書かれた本である。中学生のころ覚えた O-B-A-F-G-K-M という恒星のスペクトル型は、恒星の色との関係でのみとらえていたが、色と温度の関係やその温度を生じさせる核融合のスピードから星の質量、年齢などが説明される。
続いてアインシュタインの一般相対性理論の解として生じてきたブラックホールが、そんなものがあるはずがないという鬼っ子的な扱いから徐々に広く認知されていく様子が、可視光の観測から波長の長い電波観測と逆に波長の短いX線での観測や重力波の観測など、物理学の理論と観測技術とともに語られる。
最後のあたりでは、銀河の中心核にある巨大ブラックホールの話が、われわれの住む宇宙の将来に絡んでくる。2011年のノーベル物理学賞に輝いた宇宙の加速膨張という発見があるので、私は宇宙はこのまま膨張を続けていって最後はまばらに散らばっていくだけと考えていたが、本書によると膨張が止まり収縮を始めるというシナリオもあるらしい。宇宙に関する話はスケールが大きすぎて、観測で何かの理論を実証するということがなかなか困難になりつつあると思うが、少しづつでも新たな発見が得られるのが楽しみである。
以上は本書に書かれていることをほとんどカバーしていないと思うが、読みやすい本なので気楽に読むことができた。最後の方の事象の地平面に近づいていくと本人からはどう見えるか、遠方の他人からはどう見えるかの話は面白かった。近づいていくと、ブラックホールの巨大質量のため光が大きく捻じ曲げられ、視界一面にブラックホールが広がり、それ以外の光景は背後の小さな円にギュッと押し詰められてしまうそうだ。狭所恐怖症の人にはちょっと耐えられない光景だなと思う。