クソ忙しい状態ですが忙中暇有。取材もあったけどディスインフォメーションについては文春で記事にしました。

ロシアのウクライナ侵攻が、日本にとって「他人事」ではない深刻な理由 #文春オンライン https://bunshun.jp/articles/-/52417

 で、今日になって揉め事勃発で岸田文雄官邸も大変かもしれませんが、報じられる前に懸念される事項があるとするならば、気軽に「有事に備えよ」と言ってももうすでに総力戦になってきつつある、その実態はエネルギー価格の高騰とそれに伴う物価の上昇で、世界的な景気低迷・スタグフレーションに陥るときの社会不安をどう払拭するかなんですよ。

 そして、ディスインフォメーションは英語圏だけでなく、日本語圏でも多く飛び出すようになりました。みんな追いかけてますが、文脈的に共通しているのは実のところ中国中南海が出している露宇紛争での声明の中身です。

Wang Yi Expounds China's Five-Point Position on the Current Ukraine Issue
https://www.fmprc.gov.cn/eng/zxxx_662805/202202/t20220226_10645855.html

[Quote] 1. China maintains that the sovereignty and territorial integrity of all countries should be respected and protected and the purposes and principles of the UN Charter abided by in real earnest. This position of China is consistent and clear-cut, and applies equally to the Ukraine issue.

 中国は、まずロシアがウクライナの主権を踏みにじったことを認めてます。

[Quote] Given NATO's five consecutive rounds of eastward expansion, Russia's legitimate security demands ought to be taken seriously and properly addressed.

 そして、ロシアがウクライナに戦争を吹っ掛けた正当性について、NATOが5度にわたり東方拡大したと認知させていることですね。

 で、ご存じの通りNATOが東方拡大したという話は小泉悠さんが2020年に解説書いてますが、たぶんそういうことだろうと思います。

ロシアの軍事戦略における中・東欧 : NATO東方拡大とウクライナ危機のインパクト
https://researchmap.jp/cccp1917/published_papers/35788853

 おそらくは、露中の電話会談その他でこのあたりの立ち居振る舞いと開戦理由、ウクライナで新設した2共和国に対する独立保障といった(ちょっと安易な)舞台装置については概ね話が出揃っていることになります。

 「こんな話で押すのか?」という話はありますが、押すんだと思いますし、実際押している以上は、それに対処しなければならないのは私たち日本人も、であります。

 そして、この論法で容認されるのであれば、台湾海峡どころか結構どんなところの何であれ押せてしまいます。核兵器云々もそうですが、中国の言う通り「冷戦思考を捨てる」前提でいくならば、本当に何でもできてしまう世界観になるのでしょう。

 日本語圏におけるディスインフォメーションの一部も、見事なまでにこの中国の露宇紛争での立場や5つの主張ポイントに近く、いわば「どっちもどっち」を超えてウクライナの主権は認めるけどNATOの東方拡大というロシアのクレームは正当だとする内容に収斂しています。

 まずいんじゃねえのと思いますが、状況がまずいんだから対処するしかないよなあというのが正直なところです。

 いまみたら、JETROがレターの中で訳文入れてました。ありがとうJETRO。ご関心のある方はこちらもご一読ください。


王外交部長、ウクライナ問題に関する中国の5つの基本的立場を表明(中国、ロシア、ウクライナ)https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/02/507ae7a9937af87f.html



 私の主宰しております経営情報グループ『漆黒と灯火』の会員さん募集(第15期)の最終案内なんですが、まんぼう延期の影響でいろいろ日程が変わりましての再度告知です。

経営情報グループ『漆黒と灯火』
https://yakan-hiko.com/meeting/yamamoto/
【告知】第15期『漆黒と灯火』会員さん募集中です
https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/13298647.html

 月次の例会・対談の日程も一部追加になりました。

2月度例会 茂木健一郎さん(脳科学者)
3月度例会 山田太郎さん(自由民主党・参議院議員)
4月度例会 峯村健司さん(朝日新聞・編集委員)

 本当は、例会終わった後に流れで飯食ったり酒飲んだり人生・経営相談を賜ったり時事放談したりという感じなのですが、おのれオミクロン株め。というか、身の回りでオミクロン株の集団感染などあり、なぜか私だけが無事という殺人事件なら私が犯人を疑われかねない状況ですが強く生きております。

 ご関心のある方は是非お問い合わせください。
 よろしくお願い申し上げます。



 前身のサイバーセキュリティ研究会や調査会も入れると足掛け5年以上携わっております本件、ディスインフォメーション絡みのセミナーを開催することになりまして、しかも本日開催であることをすっかり忘れて告知をしてなかったことに気づきました。残席わずかで、申し訳ございません。

第3回 サイバーセキュリティセミナー2021 外国からのディスインフォメーションに備えを!~サイバー空間の情報操作の脅威~
https://www.spf.org/index.php?prev=1&d=seminar&c=list&p=20220221.html

 Youtubeでライブやるみたいだったので、そのURLはこちらに。

https://www.youtube.com/watch?v=uBu1sCreaeU

 内容としても、各国のディスインフォメーション対策のための制度設計や社会防衛的な枠組みから、実際の各国政府主導に限らない情報工作のオペレーションまで、問題のない範囲内で報告書では網羅してありますが、結局のところ人間は信じたいものを信じる構造がある以上いくら「科学的に正しい」とか「社会的にあるべき内容」があったとしても人は簡単に流されてしまうし騙されてしまうよねという大前提から入る必要があるように思います。

 今回のロシアが仕掛けるウクライナ侵攻に関する話も北京オリンピックが終わった中国の各種国際世論工作も、どれであれ情報そのものの正しさよりもその情報を信じたい少数の人たちの横の結束を加えることで多くの政治的パワーを引き出すための動きであることは言うまでもありません。

 その情報が正しいかはその道の専門家でもある程度割れるものがある以上、人はその情報の正しさを吟味するリテラシーを磨くよりもその情報が持つ意味を与えられたほうが楽であることは自明です。だからこそ、正しい情報を常に流すことだけでなく、その情報が持つ(受け取り側にとっての)意味や価値をうまくセットしなければいけないのです。

 それゆえに、はたから見れば「なんと厚顔無恥な主張をこの国はしているのだろう」とか「事実関係が明らかに間違っているのに、なぜ彼らはふてぶてしく嘘を公言するのか」などの問題も、ある人にとってはそれが価値があり、正義なのだと思ったりすることはある。それを支持する人たちがその社会の中でたとえ少数であっても、社会の価値観を揺さぶることで人間同士の信頼関係が不安定になることを企図して「実施し続ける」ことで、本来正しいはずの情報に対して疑念を抱く人たちも出てくるわけですね。

 さらには、親しみやすい人やテーマ、番組、新聞記事などの媒体を通じて発信されるものは、その親しみやすさを正しさや信頼性と誤認する人たちは数多くおり、これらをうまく媒介しながらディスインフォメーションを流して信じる人と信じない人とを分断していくプロセスは往々にして見られます。

 このような表現に対して人間が持つ固有の権利として認めている民主主義陣営と、社会の分断を促すような発言や発言した人の存在を抹消するような専制主義陣営とでは、同じディスインフォメーションに対する抵抗力を社会が養い制度を作るにも限界があります。同様に、これらの情報は既存メディアとSNSのオルタナティブで成立するものである以上、基本的に民主主義陣営は政府が発表する情報の問題というよりも、民間の新聞社や出版社とSNSなどのプラットフォーム事業者のほうにボールがある状態です。

 みんな結構簡単にフェイクニュース対策と一口にいうけれど、そのかなりの割合は民間の問題であり、そういう民間を使って情報工作を進める国家や集団がいたとするとどのようにして尻尾を捕まえ制裁を加え手口情報から再発を防ぐかを考えなければならないというのが実際なのかもしれません。

 日本も含めて各国政府も担当官庁も馬鹿ではないので起きたことに対して愚直に状況を検証し、メカニズムを炙り出し、対策を打ち始めて、それ相応に効果の出ているものもあるというのが現状です。ケンブリッジ・アナリティカ社がイギリスでBrexitを実現しアメリカでトランプ大統領を誕生させたように、現代のミーム戦にオルグが加わって社会に分断というインパクトを与えることへの警鐘と提言として、本研究会で発表する内容にぜひご注目いただければと存じます。

(追記)

 本参加枠がいきなり埋まりやがった

 提言集についてはこちらをご参照ください。また、youtubeのほうでライブをやる予定ですので、漏れた方はそちらでどうぞ

https://www.spf.org/global-data/user172/cyber_security_2021_abstract_web.pdf

https://www.youtube.com/watch?v=uBu1sCreaeU