前身のサイバーセキュリティ研究会や調査会も入れると足掛け5年以上携わっております本件、ディスインフォメーション絡みのセミナーを開催することになりまして、しかも本日開催であることをすっかり忘れて告知をしてなかったことに気づきました。残席わずかで、申し訳ございません。

第3回 サイバーセキュリティセミナー2021 外国からのディスインフォメーションに備えを!~サイバー空間の情報操作の脅威~
https://www.spf.org/index.php?prev=1&d=seminar&c=list&p=20220221.html

 Youtubeでライブやるみたいだったので、そのURLはこちらに。

https://www.youtube.com/watch?v=uBu1sCreaeU

 内容としても、各国のディスインフォメーション対策のための制度設計や社会防衛的な枠組みから、実際の各国政府主導に限らない情報工作のオペレーションまで、問題のない範囲内で報告書では網羅してありますが、結局のところ人間は信じたいものを信じる構造がある以上いくら「科学的に正しい」とか「社会的にあるべき内容」があったとしても人は簡単に流されてしまうし騙されてしまうよねという大前提から入る必要があるように思います。

 今回のロシアが仕掛けるウクライナ侵攻に関する話も北京オリンピックが終わった中国の各種国際世論工作も、どれであれ情報そのものの正しさよりもその情報を信じたい少数の人たちの横の結束を加えることで多くの政治的パワーを引き出すための動きであることは言うまでもありません。

 その情報が正しいかはその道の専門家でもある程度割れるものがある以上、人はその情報の正しさを吟味するリテラシーを磨くよりもその情報が持つ意味を与えられたほうが楽であることは自明です。だからこそ、正しい情報を常に流すことだけでなく、その情報が持つ(受け取り側にとっての)意味や価値をうまくセットしなければいけないのです。

 それゆえに、はたから見れば「なんと厚顔無恥な主張をこの国はしているのだろう」とか「事実関係が明らかに間違っているのに、なぜ彼らはふてぶてしく嘘を公言するのか」などの問題も、ある人にとってはそれが価値があり、正義なのだと思ったりすることはある。それを支持する人たちがその社会の中でたとえ少数であっても、社会の価値観を揺さぶることで人間同士の信頼関係が不安定になることを企図して「実施し続ける」ことで、本来正しいはずの情報に対して疑念を抱く人たちも出てくるわけですね。

 さらには、親しみやすい人やテーマ、番組、新聞記事などの媒体を通じて発信されるものは、その親しみやすさを正しさや信頼性と誤認する人たちは数多くおり、これらをうまく媒介しながらディスインフォメーションを流して信じる人と信じない人とを分断していくプロセスは往々にして見られます。

 このような表現に対して人間が持つ固有の権利として認めている民主主義陣営と、社会の分断を促すような発言や発言した人の存在を抹消するような専制主義陣営とでは、同じディスインフォメーションに対する抵抗力を社会が養い制度を作るにも限界があります。同様に、これらの情報は既存メディアとSNSのオルタナティブで成立するものである以上、基本的に民主主義陣営は政府が発表する情報の問題というよりも、民間の新聞社や出版社とSNSなどのプラットフォーム事業者のほうにボールがある状態です。

 みんな結構簡単にフェイクニュース対策と一口にいうけれど、そのかなりの割合は民間の問題であり、そういう民間を使って情報工作を進める国家や集団がいたとするとどのようにして尻尾を捕まえ制裁を加え手口情報から再発を防ぐかを考えなければならないというのが実際なのかもしれません。

 日本も含めて各国政府も担当官庁も馬鹿ではないので起きたことに対して愚直に状況を検証し、メカニズムを炙り出し、対策を打ち始めて、それ相応に効果の出ているものもあるというのが現状です。ケンブリッジ・アナリティカ社がイギリスでBrexitを実現しアメリカでトランプ大統領を誕生させたように、現代のミーム戦にオルグが加わって社会に分断というインパクトを与えることへの警鐘と提言として、本研究会で発表する内容にぜひご注目いただければと存じます。

(追記)

 本参加枠がいきなり埋まりやがった

 提言集についてはこちらをご参照ください。また、youtubeのほうでライブをやる予定ですので、漏れた方はそちらでどうぞ

https://www.spf.org/global-data/user172/cyber_security_2021_abstract_web.pdf

https://www.youtube.com/watch?v=uBu1sCreaeU