特段本件には関心がなかったのですが、解説が必要な段階になってきたので簡潔に述べておきます。私は日本維新の会のシンパではなく、むしろ橋下徹さんはよろしくないと思いますが、一方で松井一郎さんは政治家としてまともなほうだとも感じるので非常に微妙な心境です。

 で、いちいち書きませんが旧大阪維新の会と大阪市での太陽光プロジェクトについて、山口敬之さんが問題提起した内容はそもそも確認できる事実関係と異なります。

 以下整理します。

・もともと海外事業者は入札できるが、海外事業者であると隠すために合同会社を組成し、事実上の海外資本による単独事業が日本国内でエネルギー事業を展開できることのほうが問題

・大阪市のソーラー関連事業については、環境局の事業であって、港湾局ではない。どちらも担当は当時副市長(のち副知事)の田中清剛さんであって、山口さんが疑惑とする村上龍一さんの担当ではない


 本件の発端は、大阪市の湾岸開発でソーラープロジェクトが立ち上がるに際し、山口敬之さんは「前市長である平松邦夫さんが薦めていた咲洲ソーラー事業は無理やり新市長の橋下徹さんが賃貸借にして上海電力日本にプロジェクト落札させた」という趣旨の告発をしたことです。

 しかしながら、大阪市の各審議会、検討会での議事録も取り寄せて見てみると、そもそもそのようなプロジェクトが大阪市で検討されていることを橋下徹さんが具体的に知るのは入札手続きがかなり済んでから市長説明(橋下徹さんへの進捗レク)を行ったということで、橋下徹さんから指示があったと現認できる資料もなく、大阪市環境局に制度変更を行うことを求めたという根拠は見当たりません。

 また、先にも述べた通り、主要な審議は「コスモスクエア海浜緑地計画地における民間太陽光発電事業の活用について(平成24年10月10日)」に見られる通りコスモスクエア海浜緑地計画地(=咲洲メガソーラー)の意志決定は普通に順調に副市長の田中さんが入って仕切っていて、橋下徹さんは入っていません。

https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/8200947/www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000192121.html

 で、山口敬之さんはここの意志決定において橋下徹さんの主張で平松市政で進めていた事業者選定方式がプロポーザル方式から一般入札方式に変わった、だからおかしいのだと言っていますが、そのような議論がなされた形跡が特に見当たりません。もしも、山口敬之さんが例えば「橋下徹さんが市長権限で副市長に対して時間のかかるプロポーザル形式から入札による市有地賃借に切り替えて、さらに上海電力日本を入札に応じるように働きかけさせた資料」のような決定的な代物があるのであれば、ぜひそれは見たいと思います。

 懸念や疑惑が具体的にあるのであれば、公的な資料として大阪市が残しているものであろうし、大阪市自民党が本件懸念で百条委員会を設置しようにも無理筋なのではないかとも思います。少なくともサイトで見られる議事録や情報公開で得られる資料などから見るに「そもそも橋下徹さんの関与がなく、大阪市職員は本件で誰も橋下徹さんから指示を受けていないばかりか配慮をしていない」ように見えます。すでに進んでいた話でしたし、特段大阪市が揉めるべき事業でもなかったため、橋下徹さんもたいして興味がなかったんじゃないかと思います。

 必要なのは、疑惑を提起することよりもその疑惑を裏付ける物証になってきたので、もしも本件上海電力日本社の件で具体的な嫌疑が出るような資料があるなら是非見たいと思います。

 むしろ、冒頭に書きましたようにそもそも日本では入札においては海外事業者も解放されており、特に制限はなく、また、実質的なプロジェクトの運営において本当の資本元を隠すために組成した合同会社を使うケースが多く見られます。以前書きました重要土地取引規制法関連の記事でも、いまもって資本元を割り出すのに手間暇のかかる合同会社が関与してふたを開けたら海外資本だったというネタは後を絶ちません。

外国人の「重要土地」買い漁り、もう足許まで来ているやばい事態やばい人たち @gendai_biz https://gendai.ismedia.jp/articles/-/84445

 また、最近では山梨県や三重県、長野県などで、海外事業者によるあまり適切ではないメガソーラー開発が事件になっているようで、もしも問題視をされるのであればこっちをやってよねっていう気がします。