私にもいっちょ前に人間関係というものがあり、なんとなく断り切れなくて関係先名義で加入しているサービスのひとつに、幻冬舎がやっている富裕層向けサービスである「カメハメハ倶楽部」なるものがあります。

 先日、私の実家近所にある息を長く吐けば健康という謎仕様のサービスをやってるビルから我が国最大のスパム屋さんグループの社長さんが女連れで出てきたのを見て以来、いつかは私もああいう恵まれた立場になるために「カメハメハ倶楽部」の一員になったのだと自分に言い聞かせておるわけですね。

 で、そこでお薦めされている投資商品には、おおなるほどと思える割と良いものから、なんだこれはと嘆くしかないインチキ商品まで各種垂れ流されてきます。大変なことです。大半は、まだ営業が上手くいっていない投資顧問が幻冬舎というステキなイケスから活きのいい(または悪い)魚を釣り上げようと頑張って営業していて微笑ましかったり、いまさらGAFA対策とか不動産投資のあれこれとかセミナーやったりしとるんですよ。商売っていろいろ大変なんだなって思います。

 そんな中、PRで流れてきたこの辺とか、すげーことが書いてあるわけです。
 太陽光に出る補助金と仮想通貨(暗号資産)のマイニングを組み合わせて表面利回り39%とか書いてあるんですよ。

【オンライン開催(LIVE配信)】高いリターンと一括償却の節税が可能に経営者、投資家向けの新しい投資商品「国の補助金(4500万円)×太陽光発電×マイニング事業」緊急セミナー【法人様限定】
https://web.archive.org/web/20220502110653/https://gentosha-go.com/ud/seminar/id/625922297765613f3e000000

 …何言ってるんだこいつ。

 この手の事業性金融商品でよくある話ですが、そんな利回りが高くて専門性のあるお前らが提案してくるんなら「お前らがやれよ」で終わってしまう案件なんですよね。表面利回り年4割とか夢のような商品なら、他人に薦めず自分でやるよな。




 これの元締めやってるエネルギーパワー株式会社さん、見覚えあるなと思ったら、先日新電力事業がエネルギー価格の高騰で大変なことになって、東証プロマケへの上場を寸前で見送らされるというファインプレーをやらかしたところじゃないですか。あぶねー。もう4か月ズレてたら、この人たち株式上場していたんだよね。

東京証券取引所 TOKYO PRO Market への上場承認取り消しについて
https://kenep.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/03/listingapp_notice210326.pdf

 目の前の太陽光ネタで事業の先行きが分からなくなったので、それならばと出してきたのがこの太陽光と仮想通貨マイニングおよび太陽光助成金を組み合わせた法人向けパッケージなんだよということならば、マイニングされた仮想通貨の買い取り保証でもしてくれるのだろうなと思ったらそういうのもなし。お膳立ては俺たちが(手数料ももらって)やるけど、事業リスクは全面的に客の負担というタイプの金融商品です。しかも、国から補助金・助成金をもらってしまったら、自分から勝手に辞められないというステキパターン。この辺のリスク、ちゃんと説明しているんでしょうか。

 まあ仮想通貨マイニングして得られた収益は普通に法人税の課税所得になりますので、これ太陽光で全力でサーバーぶん回したところでどんだけ掘らないといかんのかという話です。私の手持ちの数字でざっくり計算すると当初設備投資が9,000万で運用コストが年間1,400万程度とすると発電量にもよりますが一般的にマイニング収益はBTCで好条件なら500万円から900万円の間のように見受けられますので、毎年順調に1,000万ちょっとの赤字を作ってくれます。法人も導入にあたり定款を書き換えることになるでしょうから、程よい赤字を出してちょっとしたタックスシールドとしての利活用をしろということなんでしょうか。

 文字通り、かぼちゃの馬車でスルガ銀行がやらかした投資詐欺スキームとやや類似した物件ですし、よくこんなものを真顔で薦めてくるなあ大丈夫なのかなという感想しか持てません。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq.pdf

 たぶん、ここで出てくる国からの4,500万の補助金というのは一発ネタではなく複数組み合わせるものなのかもしれませんが、例えばオンサイトPPAへの助成金を出している環境省や資源エネルギー庁が出してる補助金で再エネ投資絡みで使われるのはこれです。

令和 3 年度補正予算 ストレージパリティの達成に 向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業(二酸化 炭素排出抑制対策事業費等補助金) 公募要領
https://www.eic.or.jp/eic/topics/2022/st_r03c/001/files/yoryo.pdf
令和4年度予算「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」に係る補助事業者募集要領
https://www.enecho.meti.go.jp/appli/public_offer/2021/data/20220325_001_01.pdf

 ただし、当然のようにオンサイトPPA関連の太陽光プロジェクトの助成ということは、敷地内での自家消費をする前提である以上、この事業のように自分とこで電力を消費する事業であって、売電であってはならないという縛りが付きます。悪く言えば、太陽光で行った発電量はきれいに使い切らなければいけないし、ここのカモ顧客が敷地を用意しそこの中で日中発電する太陽光電力を都合よく利用してくれる事業者ばかりではないからこそ、金融商品にするために仮想通貨マイニングをくっつけたんでしょう。

 その仮想通貨マイニング事業も激戦区であり、BTCマイニングとは限らないし相場もまた急上昇する可能性はゼロとは言えませんので断定はむつかしいけどいまさらマイニング事業に太陽光つけてもなあと思わないでもありません。それって客の金で博打を打つ話だよね。

ゴールドラッシュは終了か──ビットコインマイニングの収益性低下(CoinDesk Japan) #Yahooニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/697bb29aeaeb4894acc6b5f7ef6f77421864c493

 そんなわけで、たぶんこの辺の相場観を分かってねえやつが商品設計しているからこの手の仕方なく組み合わせてみました的な投資商品が出てきてしまうんでしょう。太陽光だけ知ってるエネルギー屋さんはマイニング界隈を知らないし、暗号資産万歳でバリバリ金を突っ込んでるやつは再生エネルギー業界が分からないので、組み合わせて適当な利回りで商品設計してもバレないんじゃないか風の。

 「そんなことない! これからは仮想通貨はドーンと上がる! いけるんや!!」と思ってるシャチョーさんがいるなら止めはしないからやってみたらいいんじゃないかと感じますが、それなら素直にその金でBTCでもETHでも直接仕込んでおけばそれでいいんじゃないかって思うんですけどね。

 太陽光バブルの現実ってこういうところにあるんだろうし、国が出す補助金や事業助成金がどのような扱われ方なのかも含めて「再エネシフト」の実態も理解できようものだと感じます。

太陽光発電普及のウラで見えてきた「環境規制」の盲点 @gendai_biz https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57463

 ほんと世の中いろんなことを考えるやつがいるなって思いました。