ねとらぼの記事について、別の媒体から取材が何件か来ていて、内容を初めて知ったのですが、基本的なところで事実誤認らしきものがあったので念のため記事にしようかと思います。

「漫画村」運営者特定した弁護士に嫌がらせ? 東京地裁が誹謗中傷者への発信者情報開示請求認める https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2204/15/news036.html

 記事にある通り、漫画家のたまきちひろさんの代理人を中島博之先生が担当されたのは事実と思いますが、漫画村への発信者情報開示請求の訴訟で100万の自腹ってのはそもそも何なのでしょうか。

 また、記事中「その人物は、『漫画村運営者をアメリカ連邦地裁のディスカバリーを使って解明したのは●●弁護士、ほぼ同時期に日本の発信者情報開示請求を利用した手続きを進めていたのは●●弁護士です。中島弁護士ではありません』と断言」とありますが、これはおそらく怪文書が示した内容は事実で、中島博之先生の漫画村関連の追跡よりも先に、すでに漫画村運営者情報は突き止められています。

 この怪文書(?)に沿って説明するならば、漫画村運営者をアメリカ連邦地裁のディスカバリーを使って解明したのは山口貴士弁護士、同時期に日本の発信者情報開示請求を利用した手続きを進めていたのは山岡裕明弁護士ということになります。

 事実関係については、法とコンピュータ学会(2018年11月17日)に山口貴士先生ご自身が一部発表をされています。

第43回法とコンピュータ学会総会・研究会
http://www.lawandcomputer.jp/theme043.html

 漫画村運営者の特定にあたっては、私自身も知り得る限りの情報を提供し、山口貴士先生の手配の元ディスカバリー手続きで判明させることができましたし、漫画村運営者に対する刑事事件化に際して警察関係者から依頼を受け情報を提供し、また、彼らの知っている内容と事実関係の突合せにも(それなりの長い時間)付き合いましたが、その中で中島博之先生の実名が含まれた資料を見た記憶がありません。

海賊版サイト「漫画村」の運営者を特定か 法的措置へ https://www.buzzfeed.com/jp/takumiharimaya/manga-mura

 事実関係としては、中島博之先生がクラウドフレア社に対してたまきちひろさんの代理人として提訴し、最終的にクラウドフレア社から発信者情報の開示を得たことは間違いありませんが、そもそも地裁においてはなんと「漫画村運営者が逮捕されており、特定済みだから開示を認めないという理由で棄却」されています。

漫画村の「発信者開示」は請求棄却 「すでに星野ロミが逮捕されているから」|弁護士ドットコムニュース https://www.bengo4.com/c_23/n_10681/

 つまり、外形的には中島博之先生が本件裁判で漫画村運営者を突き止める前に、すでに山口貴士先生の手によって漫画村運営者は解明されていることになります。

 一連の事実を知る者としましては、見ようによっては中島博之先生の漫画村運営者特定のお話は典型的な「アレオレ詐欺」に近しいものではないかという判断に傾くのですが、警察や先行した弁護士も知らなかった何らかの活動がが中島弁護士にあったのであればそれはぜひ情報法制研究会や法とコンピュータ学会などで論文発表などしていただければとも存じます。