さっき「川上量生さんが与太話をネットに書いている」というので見物に行きました。

 そしたら噂にたがわぬ与太話だったので、原理原則のところだけ読み解き方の記事を書いておきます。

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 まず、一連のアメリカのSNSだけでなくAWSなどのクラウド事業などからもトランプさん関連・陰謀論に与する情報サイトなどが事業者の判断で契約解除や発言削除、防弾ホスティングの無効化など行われ、ネットから駆除されようとしています。

 事業者の立場で見るならば、すでに何度も警告され、実際にアメリカの議会襲撃にまで至り死者まで出してしまった本件について、扇動的な書き込みをしたと判断されるトランプ大統領やその支持者、および陰謀論サイトの主宰者などは、利用規約違反の状態が続いていたため、看過できる状況ではなくなったため事業者の判断で契約解除や削除などが行われた形になっています。

 ただし、これは法律に基づかない執行であるということで、ドイツのメルケル首相が「望ましくない」と発言しましたが、この場合、法律に明記する場合何を中傷や陰謀とし、その流布やデモ・暴動の唆しがどこまで行われたのかを判断する裁判所が緊急避難させる線引きをどう用意するかという議論は置き去りになっています。

 プラットフォーム事業者に契約解除や削除の権限を与えてネットの自由な言論空間にも一定のルールがあると示すことを是とするか、プラットフォーム事業者のような民間企業が実質的な事後検閲を行うことよりも法律による線引きを用意し削除などの緊急避難を司法判断に委ねるかは、おそらくこれからの議論になることでしょう。

 一方、俺たちの川上量生さんは「ついに自分たちが行ってきたブロッキング議論に時代が追いついてきた」などと与太話を飛ばしています。川上量生さんの記事にツッコミどころは多数ありますが、本質的なところで言えばトランプさんや陰謀論サイトの削除や問題SNS事業者の契約解除は、具体的に面白人物たちの議会突入と殺人事件が発生したという具体的な事件も引き金のひとつになっています。アメリカ政治における21世紀の最大の汚点のひとつとまで評される理由は、結果的に、言論の自由もある中で陰謀論が野放しになってしまった結果が信じた面白人物によるテロ・殺人事件に発展したことにもあります。

 まがりなりにも、国民が選出した大統領が、まさかSNSで自ら陰謀論やフェイクニュースを垂れ流すことなど制度上担保されていなくても当然です。

 川上量生さんのいうブロッキング議論は、商品である漫画などの著作物に対して海賊版サイトが登場したことへの対抗策であって、そもそもが著作権、すなわち財産権に関する問題が発端です。

 これが通信の秘密の侵害や電気通信事業法への抵触があってもなお正当とされるのは、人身に危険がもたらされるような重大な事項であるなど緊急避難の対象となるかであって、児童ポルノですら緊急避難とするべきか議論が分かれたところ、単なる財産権である著作権侵害が緊急事態にあたるはずがありません。

 しかしながら、川上量生さんはこれらのアメリカでの陰謀論をきっかけとする政治事変と、彼らの商品である漫画の海賊版サイト対策とを同列扱いとしたうえで、川上量生さん自身が言ってきたブロッキング議論のとおり本件が処理されていると豪語するのは、与太話以外のなにものでもないでしょう。

 ブロッキングと契約解除(BAN)の違いも明確ではないようです。川上量生さんは大丈夫なのでしょうか。

 近ごろ、川上量生さんの発言を正面から取り上げるメディアも少なくなったのか、4Gamer.netから引き抜いてきた平信一さん主宰のメディアで持論を述べていたようです。落ちぶれ方が半端ない印象がありますが、それはアンチがどうとか誰の責任だという話ではなく、話していることが与太話である以上、超大手企業の経営者という肩書でもない限り価値の乏しい与太話を掲載してくれるメディアはないということではないかと思います。

 川上量生さんの長寿と繁栄をお祈り申し上げております。

山本一郎既刊!『ズレずに生き抜く』(文藝春秋・刊)

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