どうも自民党総裁選は何事もなく官房長官の菅義偉さんへと移行するようで、安倍晋三さんの総理辞任会見以来すったもんだした件は収まりそうな気配であります。テレビの力は偉大だぞと思うわけでありまして、それまでどの調査でも全国ヒマ人にイタ電をかけて「お前、次の自民党総裁は誰がいいと思うんだよ?」と聞き出した結果が「コミュ障の正論吐き」石破茂さんトップから「苦労人の叩き上げ」菅義偉さんへとあっさり移ってしまいました。

 また、センチメントもあるとは思いますけれども、辞任会見をした安倍晋三さんに対して国民の賭ける声は優しく、どの調査も概ね20%もの内閣支持率アップという結果となり、いままでの支持率低迷はどちらかというと懲罰的なものであって、それ以外は穏やかな景気と雇用の拡大があれば良いという「国民の生活が第一」という路線とほとんど変わりません。たとえそれが国内の富を取り崩して国民に大盤振る舞いしているだけの政策であったとしても、当面は若い人たちが食いつなげるだけの仕事があり、就職氷河期を作らなかった、というのは実に偉大なことだったのだと思います。経済と景気と社会保障、この辺がまあなんとかなれば、モリカケや沖縄、北朝鮮のようなネタがあったとしても国民はまあまあ支持してくれるのだということの裏返しなのかなと思ったりも致します。

 で、海外でも安倍ちゃんの勇退を惜しむ声が一服すると、さっそく「次の総理らしいガースーってどんな人よ?」という質問がいっぱいやって来るわけですけれども、これがまたなかなか説明しづらい。38歳で地方議員をやり、遅咲きの政治産業叩き上げのおっさんです、という説明をしても、海外の人たちはあまり良く理解してくださいません。秋田というカントリーサイドから出てきたおっさんですというと、なぜ彼は秋田が地盤ではないのかというところから説明しなければならない。

 官邸や政党の基盤は引き継ぐ前提なので、政策に継続性がありますという説明をしても「なぜ菅さんでなければならないのか」がなかなか理解してもらえないのです。安倍ちゃんを投手だとすれば、菅さんはキャッチャーのようなもの、官邸を二人三脚でやってきたので政策も人事も事情も良く分かっていて… と解説をすると「それなら麻生太郎さんなどほかの政治家でいいんじゃないか」と海外から言われてしまいます。

 いや、そうじゃないんですよね。菅さんだから、勝負をかけてみんなすんなり乗ったのだ。そういう説明を海外に分かりやすくするにはどうしたらいいんでしょうかねえ。「Somewhat suitである」、というと必ず「何で?」となるし、どうにも摩訶不思議な人事なのだと思われがちでありまして。

 そのガースー新総裁を説明するためには、どうしても党のマネージャーである幹事長(この幹事長というのを説明するのもややこしい。事務局長のようなもの、とでも説明するほかないのですが)である二階俊博さんを開設しなければなりません。




 ところが、その二階俊博さんという人物を説明するのも困難なのです。なぜ彼はパワフルなのか。親中派とされるがそんなのがなぜ日米同盟の枢要なカウンターである自民党のマネージャーなのか。

 で、二階派は党全体を仕切れるほどの大派閥なのか、と言われると、まったくそんなことはありません。ある意味で二階さん以外は党内基盤のそれほど強くない寄せ集め的な部分があり、二階さんが仮に何かの理由で引退したら、なんかこう、バラバラになっちゃうんじゃないかと思うぐらいに希薄な派閥であって、幹事長に二階さんを推し上げるような力技ができるわけでもない。

 なぜ幹事長を最大派閥や多数派が仕切らないのか、と言われると、誰にも説明がつきません。せいぜい言えば、安倍さんが二階さんでどうぞと言ったから。何故? いや、安倍さんに訊いてよ。その安倍さんはなぜ菅さんで良いといったのか? 副総裁の麻生さんじゃないのか? 副大統領みたいなものなんだろ、しかも元大統領の。いや、麻生さんは人気がないから… じゃあなぜ人気のない麻生さんを副総理にしていたの?

 いやまあ、なにひとつ合理的な説明を海外にはできないんじゃないかと思うぐらい、日本人的な組織の阿吽の呼吸みたいなものですべてが決まっています。名状しがたい何か。「岸田文雄さんだと多数派工作が可能だったんじゃないか」とか言われれば「いや、私は岸田さん本人ではありませんので…」みたいな。

 日本は議会が強いのか? いえ、議会は弱いです、官邸が強いです。なぜ官邸が強いのか、それは霞が関の人事権を握っているから。霞ヶ関? 行政機関のことだよね。そうですね。じゃあそれを握ることがなぜ官邸の強さに繋がるの。法律決めてないのになぜ官邸は独自で政策を打ち出して予算をつけることができるの。

 なんかこう、説明しづらいところだらけなのが我が国の政治のむつかしさであり、よくできているところなのかなあ、と。まあ、ちょっとそう思いました。

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