いろいろとアカンことになっている米中対立ですが、ここにきてアメリカ側がかなり具体的に企業名指しで中華サービスやアプリをアメリカ市場からBANする動きが出てきました。

 気を付けるべきなのは、11月3日に行われる大統領選挙に向けて、俺たちのトランプが人気取りのために政権ごと対中強硬策に前のめりになっている、のではなく、むしろ共和党・民主党の超党派で対中国政策を固めるなかで国務長官ポンペオさんを中心に政策をどんどん進めているという点です。

米トランプ政権、中国を5つの分野で締め出す「Clean Network」立ち上げ - ITmedia NEWS https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2008/07/news060.html

 中国側としては、一連の問題について「いかなる法律的な根拠でそんな名指しで中国企業をエンバーゴーの対象にするのか」と声明を出しているのですが、一方で、米中貿易体制については一定の交渉進展もある中での話ですのでこれはこれでプロレスなんじゃないかとも思うわけですよ。

 一方で、アメリカ議会で検討されている「アメリカのデータを中国企業のクラウドに存在させない」という方針が共和党・民主党ともにGOとなった場合、単純にアリババやテンセントが困ることになるだけでなく、テンセントが少数出資しているEpic Games(40%)が展開している「Fornite」だけでなくゲームエンジンである「Unreal Engine」も影響を受けることになります。

 いままでのブロック圏経済は、言うまでもなく米ソ対立で冷戦下は特にドル決済圏とルーブルその他決済圏とで分かれておったわけですけれども、新しい米中対立はさらに「データをどこに置くか」で対立軸が決まるという点が新たな論点になるんだと思います。日本の場合はいうまでもなくアメリカ側につかざるを得ない前提ですので、アメリカの「クリーンネットワーク」陣営に入れてもらうために法律を作り中華資本をICT関連からパージしましょうという流れは加速することになります。

 とはいえ、日本も無批判にアメリカの方針に乗っかって前のめりになったところで、我が国最大の貿易相手国である中国と決定的に決別することのリスクもまたあります。コロナウイルスが流行して対策を進める中で終わりなき経済対策をやらなければならない日本の選択肢が随分少なくなっているところへ今回の事態というのは実に厳しい踏み絵だなと思いながらも、立ち止まっていても仕方がないので涙を拭いて歩き続けるしかないのかなと思います。はい。

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