ベビーシッターの仲介大手キッズライン社が、自社サービスに登録をした男性による男児わいせつ事件を受けて、今日キッズライン社に登録している男性シッター全員に対して「利用の一時停止」を含む措置を発表したようです。

シッターが預かり中の「わいせつ容疑で逮捕」の衝撃、キッズラインの説明責任を問う|BUSINESS INSIDER https://www.businessinsider.jp/post-214061
【男児強制わいせつ勃発「キッズライン」で見える、 自宅で子どもを任せられる他人の線引き問題】 | BEST T!MESコラム https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/497703/

 自社でもリリースを出していましたが、この対応しかキッズライン社にできなかった理由は明白で、いままでフリーエントリーに近いシッター登録を希望者に行わせ、シッターの能力や資質について質的補償など一切できない状況のままサービスの拡大にのみ走ってきたことが大きな理由ではないかと思います。

【重要】弊社の取り組みに関して- キッズライン https://kidsline.me/contents/news_detail/605

 つまりは、ちゃんとシッターとして活動できる男性たちも、いままで未経験で仕事の代わりになればととりあえずシッター登録してみた人たちも、一緒くたになってキッズライン社のシッター候補としてマッチング対象になっていたわけです。そして、わいせつ事件が勃発し、それも一件や二件ではなさそうだ、他のシッターにもわいせつ事件があったかもしれない、という話になると、いまさらシッターの質を把握しようにもキッズライン社はそういう情報を持っていなかった、ということに他ならないでしょう。

 もちろん、中野まどかさんの記事にもある通り、仮に登録者に犯罪歴のある人が紛れ込んでいたとしても、これを業者の側が照会して弾くことは困難で、また、性犯罪者になってしまった男性が初犯であったならば犯罪歴がそもそもなくトラックできません。業者側にとってはできないことだらけである一方、そういうサービスを受ける一般家庭とそこに住むお子さんが被害者になり得る以上、そういうリスクがあることを利用者に周知したところで救いにはなりません。結局、業者側がしっかりとシッターの能力や資質をチェックし、手間と費用をきちんとかけてシッターを一人ひとりトレーニングをしなければなりません。

[引用]
利用者同士で起こった紛争には法的責任を負わない(キッズライン利用規約:2020年5月17日確認)としているものの、経沢(香保子)社長は「(キッズラインは)面接と研修をしている」と、匿名掲示板との違いをアピールしており、今回そのような形で一定の質の担保がされているはずのキッズラインで事件が起こったことで、ニュースを知った親たちには衝撃が走った。
--ここまで--

 そして、キッズライン社の利用規約には堂々と「利用者同士で覆った紛争には法的責任を(キッズライン社は)負わない」などと責任逃れをしているものの、具体的な性犯罪を自社サービスで起こしておきながら「マッチングしているだけです」と言えるものなのかはきちんと考えておかなければなりません。常識的には、そういうマッチング業者に登録しているシッターに対して質を担保されている前提で手数料を払うわけで、シッター料金をピンハネしておきながら責任を取らないというのはさすがに通らない理屈だろうとも思います。

 これを機に、真面目に経営してね(ちゃんと手数料に見合うシッターのチェックをやって、サービスの質を担保してね)と思うわけですが、そもそもキッズライン社が上場するぞと平気で言えた理由は、ピンハネ率の高さと、そのピンハネをする割にフリーエントリー状態でコストがかからず事業を拡大できたというだけなんですよ。だから、ちゃんとした業者がそこまで利益を出せないシッター派遣事業を、ただの登録によるマッチング事業としたうえで、上記の通り法的には免責として低コストでやれるので利益が出る。そのリスクは全部、利用者の家庭にくるわけでして、襟をちゃんと正してね、と思うわけであります。

 どうもちゃんと取材にも応じてくれず、なんか困ったもんだなと思うところではございますが、シッター文化をどうかより良いものにしていっていただければと願います。

山本一郎(やまもといちろう)YouTube

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