まあ、選挙になってしまえば反自民・反安倍晋三政権の批判票を集めることになるので議席数を大幅に減らすぞということもないとは思いますけれども、さすがに政党支持率4.0%に低下というのはびっくりです。本来は、コロナウイルス対策という国難にあたって、政権・与党側も指導力を発揮し、野党側は割を食う人たちの受け皿になり、わっしょいわっしょい対策について白熱した議論を国民の前に提示するべきところ、なぜか安倍官邸VS小池百合子東京都知事&吉村洋文大阪府知事みたいなネタになってしまってどっちも埋没、というのが残念なところです。

 しかも、与党支持率も政権支持率も一緒になって伸び悩んでるんですよね。

各党の支持率 NHK世論調査 | NHKニュース   https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200413/k10012384611000.html

支持率4%……。立憲民主党だからできることって何でしたっけ? 「左翼業界」だけじゃなくて「真ん中の人たち」にも目を向けましょうよ。 https://youtu.be/bGeh-4AM3Z4


 これはどうしたことでしょう。

 選挙ドットコムとJX通信社の数字も含めて各社の調査結果を見ていると(バイアス修正前の単純集計?)、自民党・安倍政権側も支えになってきた若年層の支持が伸び悩んだことを理由として支持率を落とし、立憲民主党は主力となる50代以上の男性も剥落。もちろん支持予備軍はいるのでしょうが、やはりコロナ対策という国難において立憲民主党の存在感がいままで以上に希薄になってしまったから、自分たちの生活や利害のための代弁者であるという立場を失ってしまっているのかもしれません。

自民党・立憲民主党が同時に支持率ダウン!政府の新型コロナ対策に国民の声は…?!2020年4月電話・ネット意識調査 | 日本最大の選挙・政治情報サイトの選挙ドットコム https://go2senkyo.com/articles/2020/04/14/50975.html

 これはあくまで政治を産業として捉え、支持率をマーケティングの具として捉えるタイプの割り切りの議論でしかありませんが、確かにモリカケ問題や桜を見る会といった野党が政権攻撃に使った材料というのは、民主主義の根幹にかかわるものであって、非常に重要なものです。政治業界については。

 やはり、政治に関心のある人にとって、民主主義や官僚制の大事なものは書類を改ざんしない、国民を騙さないというのが大前提であるにもかかわらず、官僚の人事権を持つ時の政権に対する配慮、忖度を行うキャリア官僚が重視され要職に就く限りにおいて、こういうことは大問題だと考えます。これはマスコミも同じ。桜を見る会も、要するにアベ友とされる安倍政権に近い人たちに対する不当な受益、公私混同だという話になるわけで、これも大問題なんですよ。

 しかしながら、国民の大多数は「ああ、また安倍ちゃんがそういうことをやっとるのか」と不満に思っても、一番大事なことはいま目先のお金が回り、就職ができ、事業が順調に推移することであって、経済共同体の利益代表としての自民党を緩やかに支持してしまいます。もちろん、モリカケも桜を見る会も安倍昭恵さんのやんちゃも問題だけれども、仮にこういう問題に腹を立てる有権者がいたとしても、実際の投票行動としては「でもまあ、いまの安倍ちゃんのお陰で喰えてるから」という理由で、現状維持をしたいということで与党に投票することになるのです。

 そして、メディアの側も世論調査や政策別の風向き調査をするとき、そのとき、そのときメディアが問題としている事件についての賛否を並列に並べて調査をします。例えば、国民にマスク2枚を配ることの是非を問う質問が、コロナウイルス全体の政策課題や減税、直接給付などの大きな議題と並列で調査されてしまうのです。

 結果として、極論を言えばモリカケ問題なんてどうでもいいと思っている国民に対しても「モリカケはどう思いますか?」と訊いてしまうことになり、たいして重要と思ってないことでも訊かれれば誰しも意見はあるので「許せません」「政府の説明は不足していると思います」と回答はしますが投票行動や政党支持では自民党支持がたいして減らない、ということになるのです。

 この辺はどこの政党に呼ばれても口を酸っぱくして言ってますが、政党本部が自ら調査をかけるにあたって、自分たちが関心のある政治分野においてのみ調査を置こうとする悪弊があります。東北地方の有権者に対して沖縄の辺野古基地移転問題の是非を聞いても興味がないし、電力需要地である都市部で原発問題を聞いても「どんどん稼働させて安い電力を供給して欲しい」という以上の意見は出てこないのです。

 その都度その都度のモメンタムは、かなりメディアに左右される(議題設定能力仮説)けれども、それはあくまで投票行動において重要な判断を行う政策だったのか、という話になると、やはり出口調査で話を聞かなければなりません。そこで出てくるのはいまや第一に年金・社会保障であって、第二に景気・雇用となって、政治産業が重視するモリカケや桜を見る会は自民党に対して批判的な人たちや、いま失業していたり望ましくない生活を強いられている怒れる有権者ぐらいしか反応をしないのです。

 本来、立憲民主党が狙っていくべきはほっといても反自民・反政権で支持してくれるであろう左翼界隈の皆さまの地固めではなく、もっとマイルドに自民党にも野党にも投票しうる中間層であって、彼らに「あ、こっちのほうが安倍ちゃんよりも良さそうやな」と思ってもらえる打ち出し方何だと思うんですよ。

 感染症対策もクラスター対策を打っていますが、選挙対策や世論調査もいままでの男女、年代、お住いの大まかな地域ぐらいで分けて計測しているようではなかなか厳しいのではないか、と個人的には思います。むしろ外資系ファンドが立ち上げる日本政治調査のプロジェクトのほうが、圧倒的に科学的で再現性のある形で調査設計すのはひとえにマーケティングやモメンタムに対するモデル化の巧拙に尽きると思うんですよね。

 政党にとって、有権者をお客様だとすると、政策が商品、政治家は小売店、政党はブランドであると言い換えることもできます。どこに資源を使い、何を優先順位にしてどういう国づくりを目指していくのかという綱領がしっかりと末端まで行き届き、いま立ち向かうべき国難についてどう考えていくのか、統一的なアクションに結び付けられなければなかなか野党は大変なんじゃないかと思うんですけれども、どうなんでしょうか。

山本一郎(やまもといちろう)YouTube
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山本一郎既刊!『ズレずに生き抜く』(文藝春秋・刊)

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