官邸自体が緩んでるんだろうなあ、と思うわけでして。

 これ、戦争で負けてるときに大本営が戦況を甘く見て勝った気分でいるような体たらくにも見えるので、もちろん日本のコロナウイルス禍がこれ以上悪くならないように祈りつつも雲の上のお気楽加減はどうにかならないものなのかなと思う次第です。

 その点で言えば、よく「医療か、経済か」みたいな二束背反のジレンマを持ち出す人は少なくないんですけれども、実際には医療も経済も一体となってどう対応するのかが問われている局面であろうと思います。


 これ以上コロナウイルスが蔓延されては人も沢山亡くなるし、経済が過剰な自粛・休業要請によって根元から折れてしまうと国民生活は大変なことになる。貧困も酷くなるし、人命も失われる。そのうえで、一番恐ろしいのは仮に6週間、本当に外出自粛したとして、その後全面解禁となってまた感染が増えない保証もない、ということなんですよ。窒息しないぐらいの休業で、西浦博さんのいう「8割の人的接触の制限を」という話がなし崩しに6割になって、感染の終息がしばらく先のことになるぞ、となれば、先にコロナウイルスを根絶した国は日本と人や物資のやり取りを再開することに億劫になるでしょう。


 また、コロナウイルス禍において官邸に近い文化人の側も「インフルエンザに毛の生えたようなもの」なのに「感染拡大を怖れすぎて過剰な自粛をするのは望ましくない」という世論誘導を進めている節もあります。もちろん、死んだ人の人数だけで見れば、インフルエンザウイルスが何千人か日本でも毎年亡くなるのに対し、コロナウイルスはまだ100人に満たない(4月12日現在、報道では98人)のだから、定常的なインフルエンザより新型コロナウイルスは「少し重い風邪か、インフルエンザ程度の脅威だ」と言いたいのかもしれません。


 しかしながら、ご覧の通り東京でのインフルエンザの流行状況で言えば、この新型コロナウイルス対策が徹底されたおかげで、現在インフルエンザと診断される人は東京で「ほぼゼロ」になっとるわけですよ。無症状でも感染し、潜伏期が2週間あるとされる新型コロナウイルスのお陰でインフルエンザが一時的に撲滅できそうな勢いです。これだけの自粛を行ってもなお、コロナウイルスはこれからアウトブレイクしかねないという爆発前夜、あるいは爆発初期にいると考えるのが妥当です。

 これだけでも、死亡率や重症化率の問題とは別に、如何に新型コロナウイルスがまずいかは理解できるでしょう。

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 年間数千人が死ぬこともあるインフルエンザはおそらくゼロにできるけど、コロナウイルスの感染拡大は防げない状態にある、ということを、おそらく官邸も周辺の有識者も経済優先で考える支持者も忘れているのだろうと思います。西浦博さんや渋谷健司さんなど感染症対策の専門家が打ち出す政策には差はあれ、この新型コロナウイルスの対処に失敗すると、本当にとんでもないことになってもおかしくないのだ、だから多少過剰でも社会全体で感染症対策を進める必要があるのだ、ということを理解して欲しいのです。


 「専門家が『早期に徹底した外出自粛の要請を』という献策を行っても、西村康稔コロナ担当相が取り合わなかった」という逸話は、4月1日の幻の緊急事態宣言を先送りにしてなお政府・官邸に充分な危機感がないのかなあという残念な気持ちにさせますし、一部は野党に足を引っ張られた側面があるとはいえ危機対応のための有事法制という備えの無さが日本を本当に駄目にしているなあという風にも思います。


 これで本当の意味で死ぬのは日本国民であるだけでなく、殺人的な現場を受け持つ医療関係者であり、対策に追われる国家公務員や地方公務員の皆さんであり、一番最初に干上がるのは飲食店などサービス業の面々です。そこから徐々に衝撃的な不況の時代がやってきて、しばらく低迷の時代に入るのでしょう。


 そもそも「業務停止と休業補償のセットなんてどこの法律にも書いてない。むしろ、失業保険や生活保護などのセーフティネットの活用の門戸をもっと広げるべき」という問題もあまり指摘されませんし、なし崩し的に利活用が進む国民の位置情報を、どうせならきちんとマイナンバーに対応させ、あるいは納税者の口座ともリンクさせて「いつでも、必要なときに、明日にでも現金を政府が給付できる仕組みを作る」ことが大事ではないかと思います。個人情報を利活用することは、あくまでエストニアやドイツのように「政府は持っている」けど「個人情報を使うときにきちんと仕組みや使われ方をチェックできる」方法に変えていかなければ、日本人の健康と安全を守ることはできなくなります。


 今回は感染症への危機対応ですが、それ以外でも、サイバー攻撃や具体的な安全保障の問題もありますし、これからもっと増えていくかもしれない外国人を日本がどう受け入れてみんなが安心して暮らせるのかという方法論も踏まえて対応していかなければなりません。単に新型コロナウイルスが蔓延しているからとそのためだけにダボハゼ的に対策を打つのではなく、日本のあるべき姿、将来の情報国家として何をするべきかを踏まえた政策議論がきちんと展開されないといけないのではないかと思います。

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