ボク言いましたよね!!

 Youtubeでも語りましたし、有料メルマガでも書きましたけれども、いわゆる「給料ファクタリング」という給料前借り的な二者間ファクタリングは貸金業法の枠内であると金融庁に明確に示されたことになります。

┃人間迷路┃Vol.283--安倍政権の終わりを考察しつつ、二者間ファクタリング問題や閉塞感のあるネット事情、さらには例の大型経営統合事案にまつわる愚痴などを語る回
http://yakan-hiko.com/BN9354
<新たな過払い金訴訟のネタになる?!>クラウド会計ソフトfreeeが仲介? 2社間ファクタリングについて解説します。
https://www.youtube.com/watch?v=kh10vdR9rf4

 報道を見る限り、貸金業法で認められる年利20%の金利を超える手数料が取られる本件「給料前借り」では、実例では20万円の給与を18日に業者に前借した場合、わずか一週間で50%の実質的な金利となる10万円内外しか振り込まれない例もあります。年利で言えば5営業日で50%の金利になりますので、年利3,650%(元金の36.5倍の金利)というべらぼうなことになります。

 どうしようもないので、さすがに闇金状態になった本件については貸金業法の規制の枠内に入れるのは当然のことであって、まあ要するにやりすぎだということであります。

 ところが、これらの二者間ファクタリングの形式を使った給料前借というのは、基本的に手形商売の延長線上であって、最先端でも何でもありません。ましてや、業者の振り出す手形ではない、返済原資が給料の場合もあり、融通手形のように見えて実際には闇金融のほうが実態が近いというところに課題があるわけです。事業者が振り出す二者間ファクタリングは、文字通り融通手形のデジタル版と言えますが、裏書きはありませんので、貸し倒れリスクを織り込むには当然高い金利設定をされるのも仕方がないとも言えます。とても貸金業法で定められた金利以下で貸し出すことは困難です。

 非常に古典的なやくざの商売のやり方だったのですが、これがどういう理由かベンチャー企業が「フィンテック(金融サービスと情報技術を結びつけたビジネス)」を標榜し、次々と参入しているという現状があります。

 例えば、企業の売掛金を二者間ファクタリングで現金化できますよ、という立派な魚手形サービスを会計サービスのFreee社がOLTA社の仕組みを使って提供しています。大きく「資金繰り改善の基礎知識 ファクタリングの基礎知識。仕組みから利用のポイントまで徹底解説」と書かれています。が、個人的には、ファクタリングを標榜する高利貸しに資金繰りを依存するような薄利なビジネスをやるぐらいなら事業を畳んでハローワークに行ったほうがマシなんじゃないかと思うんですよね。

資金繰り改善の基礎知識
https://www.freee.co.jp/kb/kb-finance/factoring-arrangement-point/

 実際、このサービスの裏側を担っているOLTA社のサイトを見てみると、でかでかと「請求書を、必要な時にすぐに資金化」とか訴求しています。売掛金の状態である請求書ベースで現金化・資金化しようというのはまさに融通手形であって、手形をこの手の野良業者が割るというのは確かに古き良き高利貸しと言われてもおかしくはありません。

https://www.olta.co.jp/


 大丈夫なのかなと思うのですが、会社概要を見てみると貸金業者としての登録はされていないように見えます。一方で、堂々と「顧問弁護士 鈴木由里弁護士(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業)」と書かれていて、東京都のフィンテック・ビジネスキャンプにご参加されていることが分かります。

2018年9月14日(金): 鈴木由里弁護士(パートナー)が、東京都アクセラレータプログラムの「フィンテックビジネスキャンプ東京」及び「テックビジネスキャンプ東京」サポーターに就任いたしました。
https://www.aplaw.jp/news/20180914-1/
Invest TOKYO
https://www.senryaku.metro.tokyo.lg.jp/tokku/japanese/
 
 全体的に「何してんすか」という感じの案件ですが、大手でもGMOグループのGMOペイメントゲートウェイ社が堂々と二者間ファクタリングで資金調達しましょうと営業しています。ただ、こちらはもちろん貸金業登録がされているので、3か月限の売掛金を現金化するための手数料が最大10%(年利がどうなるのかは気になりますが)と表記されています。まさか債渡が一か月(翌末払い)の売掛金を現金化するのに手数料が10%って商売流行ってないと思いますね、それだと年利120%になっちゃうからね。しょうがないね。

https://www.gmo-pg.com/column/factoring/

 このように、実質的に闇金そのものであった給料前借や売掛金現金化のための二者間ファクタリングは通常の債権譲渡の扱いとして貸金業法の金利以下で済ませられるようにするという尋常な判断が金融庁から出た、ということで、良かったね、と思います。金融庁や有識者各位もお疲れさまでした。

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