取材を戴いているものの公私ともに多忙を極めておりなかなか対応できずに申し訳ございません。

 本件統合は日本国内のみならずアメリカや欧州などの情報系コミュニティでも議論百出の状況ではありますが、現在話題になっている安全保障上の問題になってきている概要については有料メルマガのほうで概要の解説は書いておきました。

人間迷路 Vol.281 「Yahoo! JAPANとLINEの経営統合」にまつわる諸事を深掘りしつつ、人工知能に向ける世間の期待への懸念にも触れてみる回』―夜間飛行 http://yakan-hiko.com/BN9270

 申し訳ないんですが有料部分での記事なので、買ってお読みいただくしか(私の立場上は)ありません。フレームアップしそうならどこか適切な場所で記事にしたいとは思います。

 で、このような話がありました。

https://twitter.com/tadaben/status/1201668984120070144

[引用] (続き)YahooとZOZOやライン等のサービスの統合があるとニュースになっているが、ZOZOの個人データやラインの個人データも同様に同意なく統合する事も出来るのか?と質問したら。「現在の法律上可能」と回答されてしまいました。誰を守っている法律なんでしょうかね?

--ここまで--


 重要な指摘だと思うんですよね。何しろ実際に(現行法上は)可能なので、みんな困っているわけですが、中でも困る(だろうと思われている)のは実質的に掛け売りでありファクタリングになっているGMOペイメントサービスの「ZOZOツケ払い」やLINEが持っているユーザーの対話ログ、位置情報などの統合あたりじゃないかと思います。

 これらは「Y!JとLINEが完全に統合される」「ZOZOが吸収される(た)」場合に、個人データも同意なく統合されることになり、利用目的だけが引き継がれます。その点では、本件を指摘されたtadabenさんの問題意識はとても鋭いんじゃないかと感じます。そこへ、今回の個人情報保護法の改正大綱の骨子が被さってくるのですが、この骨子通りに概ねの改正が行われたとしても、完全に統合された場合に同意なく個人に関する情報が統合されて問題なし、となりそうです。

個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直し制度改正大綱(骨子)
https://www.ppc.go.jp/files/pdf/191129_houdou_koshi.pdf 

 そうなると、むしろこっちが問題になります。「そんなの分かってるわ!!」とか野次が飛びそうですが。

パブリックコメント:意見募集終了案件詳細
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=110200047&Mode=1
「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」の改定案及び「企業結合審査の手続に関する対応方針」の改定案の概要
https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000193024

 しかし、こんなものを発射実験もしないままいきなり実践投入するか足がないのにパイロット付きで戦地にジオングを送り込んだジオン軍みたいな状態になるので、これ、いきなり止まらないんじゃねえのという話になりかねません。公正取引委員会には諸事ご検討を戴きたいとは思っています。

 なもんで、今回のY!JとLINEの統合の前から、日本にもCFIUSのような対国内の外国投資委員会を三条委員会として必要としているんじゃないのという議論があったり、重要インフラとして指定する場合にNISCの役割が重要になるよねといった話はかねてあったんですけれども、全部が間に合わなかったですね。

いまさら聞けない「対米外国投資委員会(CFIUS)」とは?  |  TechCrunch Japan https://jp.techcrunch.com/2018/03/09/2018-03-04-wtf-is-cfius/

 敵陣がはっきりしていて、槍を持って突入してどうにかなる算段はついていても、肝心の槍が無くて丸腰の皆さんが途方に暮れているのが現状だと致しますと、このあたりでデータ資本主義だプラットフォーム事業者への対策だと声高に叫んでも叫ぶだけであって具体的には何もできずにただデータやデータにくっついたお金が海外に流れ出ていくのをワーワー叫びながら眺めているだけの日本人の皆さんという結論になりかねませんので、そろそろどうにかしないといけないのではないかと思います。

 同様の問題は、電子カルテ事業などを営んでいた旧三洋ヘルスケアがパナソニックに三洋電機が吸収されたために旧パナソニックヘルスケアになり、これがパナソニックのコア事業ではないということで売却の対象となって2013年に米ファンドKKRに買収される話が出た際に、第三国転売、つまりは中国資本に売られるのではないかと騒ぎになった問題と被ります。もちろん、いろんな話があった後で、いまだKKR資本として三井物産も資本参加して事なきを得た経緯はあったように耳にしています。良かったですね。

 一番の目的は、個情保護法界隈であれ競争法界隈であれ、情報が国家や社会を安全で豊かに回す基本であることに立ち返って、将来日本がどういう情報をどのように守り、そして活用していくのかという青写真をしっかり作り、それを目指して各種対応をすることにあります。ちょっとマジでそろそろどうにかしようよ、と思わずにはいられません。


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