まず、私の意見を申しますと、本件は法的に何ら問題のない展示物ではあったが、作品が示す政治的主張を受け入れられない人たちからの猛烈な反発があって、電凸などの「ソフトテロ」に見舞われて小展示自体が展示取りやめに追い込まれたものです。そうである以上、私は津田大介さんの展示を行う姿勢そのものには支持をしますし、表現の自由の観点からも、また、検閲の禁止からも、なるだけ作品の展示は続けられるよう各位が努力するべきものだったのだろうなあと思います。

 津田大介さんはダブルスタンダードである以外、擁護されるべき、というのが私の考えです。

 一方、愛知県が組成したあいちトリエンナーレの検証委員会は、その報告書で津田大介さんの美術監督としての責任を問う内容を示したということで、その内容が報道されました。

不自由展の混乱「最大の原因は芸術監督」 検証委が批判:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASM9T528KM9TOIPE023.html

あいちトリエンナーレのあり方検証委員会
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/bunka/aititoriennale-kennsyou.html

[引用]

企画展の展示方法に多くの欠陥があったと指摘した上で、津田(大介)氏の責任に言及し、リスクを回避する仕組みが芸術祭実行委や愛知県庁に用意されていなかったと批判している。

(略)

報告は、不自由展の展示方法を問題視した。慰安婦を表現した少女像や昭和天皇を含む肖像群が燃える映像作品などに抗議が集中したことについて、「作者の制作意図等に照らすと展示すること自体に問題はない作品だ」とするが、「制作の背景や内容の説明不足」を指摘。「政治性を認めた上で偏りのない説明」が必要で、「すなわちキュレーション(企画の実施手法)に失敗」したと批判した。


--ここまで--


 いやー、めっちゃ津田大介さんぶん殴られてますね…。

 つまり、報道の内容を見る限り、私の意見と同様に「展示すること自体に問題はない作品」と総括されています。だけれども、その展示の仕方が不適切だったとして、美術監督である津田大介さんの責任を問うという結論になっているのであれば、「すなわちキュレーション(企画の実施手法)に失敗」として津田大介さんの去就も含めて重大な判断が行われる可能性があるのかもしれません。

 かくして、東京新聞など左派系メディアにも登場し、騒ぎも過ぎて穏便に落ち着くかと思いきや、検証委員会が津田大介さんの眉間からつま先まで真っ二つにしてしまったため、まずは津田大介さんの美術監督としての責任の取り方を、そして津田大介さんを選任した審査員・運営委員会や、任命した愛知県知事・大村秀章さんの責任もどうするんだという話になるんじゃないかと思います。

 実際、今回の検証委員会の座長の山梨俊夫さんは国立国際美術館館長であり、また津田大介さんを芸術監督に選考した際の審査員の建畠哲さんは全国美術館会議の会長でもあります。要は、現代美術でイベント面でも面白いトリエンナーレに仕上げるために、門外漢の津田大介さんを面白がって美術監督に据えてみる、というリスクを担ったのは美術館業界・現代美術の大御所たちであって、そのリスクが不幸にも実現してしまい、焼け野原になった理由を津田大介さんの不始末ということで責任を押し付け、トカゲのしっぽを切りに行っている、とも言えます。

 もちろん、本当に悪いのは妙な抗議を殺到させた名もなきネトウヨの皆さんであって、本来ならば、わざわざ抗議するのではなく、主義主張の違う人たちが面白展示しているのを遠くから眺めているほうが正解だったと思うんですよ。こんな騒ぎにならなければ、たいして話題にもならなかったでしょうから。むしろ、そういう形で言論が封殺されかねない日本の悲しい文化的後進性を知らしめてしまったというのは、別の文脈においてですが残念です。

 また、津田大介さんの度重なるダブルスタンダードには辟易するところはありますし、秘書兼恋人的に見える女性の背中押しもあって未経験極まりない美術監督の就任を決断する津田大介さんのセンスの微妙さは指摘されることもあるでしょうが、津田大介さん的には左派的な党派性もあって「やってみたかったこと」であったのは間違いない。そういう面白そうなことをやってくれる津田大介さんだから、建畠さんも津田大介さんを美術監督に推薦するひとりになったはずじゃないかと思うんですよね。

 そのあいちトリエンナーレで下支えで頑張ったキュレーターさんたちや、現代美術界隈からは、津田大介さんからの根回しがそれほどない状態で「男性女性同数の作品展示にする」という大方針や、別の話でちゃぶ台返しもあったと言っていたのが事実ならば、津田大介さんのお陰で現代美術の相場がボロボロになり、関係者も芸術家からの抗議まで来てしまって頭を抱えているのかもしれません。

 でも、そういうドタバタも含めて津田大介さんの面白さだったんじゃないかと外からは思うんですよ。東浩紀さんもアドバイザーを降りる、あれほど親しく写真に写っていた愛知県知事大村さんも津田さんが悪いと切り捨てる。人間臭すぎて、これこそが芸術なんじゃないかとすら思うほどに。

 だから、表現の自由の大事さや、権力による検閲を認めない姿勢、また、今回改めてネトウヨその他からの電凸で騒ぎが広がるようなソフトテロも含めて、あいちトリエンナーレという大プロジェクトをたった420万の小展示で大混乱に陥れた壮大な時間と人間の織り成す芸術作品を津田大介さんは作ったんじゃないか、と私は思います。

 津田大介さんには私の変なスレを2ちゃんねるで立てられたり、不思議な怪文書が出てきたり、周辺で変なことはたくさん起きるけれど、本件に関しては圧倒的に津田大介さんを応援しています。

 そう思っているので、そろそろ津田大介さんは私へのブロックを解除してください。
 現在進行形で繰り広げられるこの芸術が観られませんので。


game_jikkyou.png