個人的には社会保障費増大への政策的対処は必要で、国庫負担も重くなっていく中で歳入を増やさなければならないという意見も理解できるので、大いに国会で「増税に賛成だ」「反対だ」と議論してほしいと願っているところです。消費税増税やむなし、と安易に言えないのは、消費税を増税したところで景気が悪くなって思ったような歳入も得られなければ増税の意味はなく国民の重税感、負担だけが募ってしまう怖れがあるからです。政府筋の方が「消費税2%増税で2兆円増収」と簡単に計算しているのを見ると、それは計算のそもそも論からして無理筋なんじゃないのと思うわけですよ。

 ただ、社会保障費が増大しているので、これの削減と併せて、国庫に入るカネを増やしたいという話は分かります。まあ、国際公約ではあるので、一応は守ろうとするのは是だと思います、消費税に限らずいうならば。

 そのうえで、何ですか、あの軽減税率の次第は。政府の要請で財務省が頭をひねった結果だとは思いますが、マスコミ(新聞社など)への軽減税率適用のお陰で本来ならもっとわいわい騒ぐべきマスコミが消費税に関しては静かですし、コンビニにいたってはイートイン話も出てきてしまったので訳が分かりません。コンビニで買って帰るのは軽減税率適用で8%、イートインで喰って買えれば10%とかいう謎の展開になっており、財務省の苦肉の策とはいえ政府の無理筋はどうにかしろと言いたい気分もないでもありません。マスコミが独饅頭喰ったと言われる所以はこの辺じゃないでしょうか、本来は議論喚起の大キャンペーンをやるべきはずなのに。

 それもこれも、公明党と創価学会の「夫婦間の価値観の不一致」みたいなものが原因だと自民党も官僚も口をそろえるわけですが、軽減税率がコスト高の政策であることは間違いないので、公明党ならずとも、もう少しまともな創価学会の上の人が「もっとエレガントに、合理的にやりましょうよ」と一言言えばいいのにと思います。創価学会の中のことが分からないので、何とも言えませんが。でも、安保法制では本来なら「戦争法案だ」といって反対に回りそうな創価学会をどうにか宥め、また今回の沖縄県知事選では公明党もかなり頑張った中での敗戦ですし、大変微妙な情勢ですから公明党も創価学会も「与党にいる意味」を冷静に考え、模索した結果がこれだった、とするならば、もう少しやりようはあったのではないかと思います。

 てなことで、与党の中の良心とも言える公明党ですらこうですから、もはや歯止めをかけられるのは野党しかない… 割に、どうにも野党が静かなのです。いや、騒ごうとしているのかもしれませんが、メディアの論調が低調なこともあって、あんまり声が聞こえない。立憲民主党もモリカケやるぞとは聴こえてますけどそれ以上の話には伝わらず、国民民主党も夏が終わってミンミン言われなくて良くなったはずなのに何かを言おうという雰囲気が感じられません。何故なんだろう。

 ここで国民が理解しやすいように筋道立てて「消費税増税は反対だ」または「その軽減税率は意味が不明だ」などときちんと主張してくれれば、ああ一応は野党も財政や社会保障や増税や景気や軽減税率問題について理解があるのだな、と思う浮動層もいるでしょう。少なくとも、国民の中で政治に関心のない中間層ですら、半分以上が老いも若きも明確に消費税増税反対なのはどの数字を見てもはっきりと分かっているはずなのです。それでも自民党が公明党引き連れて不思議な軽減税率すら「やろう」と言って5年かけて増税に舵を切っているわけですから、野党はそこを突かないと本当は駄目なんだと思います。

 でもなぜ野党がここまで存在感がないのか。それは立憲民主党の支持率が5%切りそうとか、共産党も党勢が衰亡していてワンイシュー立ち上げる気力を振り絞らないと前に進めないとか、そういう内側の事情だけじゃだめだと思うんですよね。中間派・中道の人たちが「おっ、野党の言うことももっともやんけ」と注目するチャンスですよ、いまは。

 なんでこんなに静かなんだろう、どうしてメディアパワー使って攻めていかないんだろう、少なくとも呼び水になるような議論はどんどんシンポジウムやって、デモ打って、マスコミを炊き付けて、ノボリ立てつつ盛大にやればいいんじゃないかと思うんですけどね。何かできない理由があるんでしょうか、新聞社の軽減税率適用でマスコミが腰砕けになっていること以外に。


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