すでに多くの人も指摘しているし、馬鹿馬鹿しいのでいちいち言わないでもいいのかなとも思いつつ、まだ変な記事がたくさん流通しているうえに、「この調査は男女や浪人回数などでの下駄を判定できるような正確なものではない」という但し書きもされておらず、まったく不正確なので一応書いておくわけですが。

全医学部に聞いてみた。男女の医学科合格率、こんなに差が大きかった【独自調査】 https://www.huffingtonpost.jp/2018/08/10/igakubu-data_a_23499881/

 当たり前のことですけど、受験する男性と女性がまったく同じ学力だという証明がない限り、本件がハフィントンポストの独自調査だろうが何だろうが「合格率に男女差があること」自体には何の問題もないわけですよ。

 ハフィントンポストに限らず、単純に男女の受験者数と入学者数とを見比べて記事にしたうえで、男女差があることを批判するようなネタが多いのは、報じる側のリテラシーの問題だと思うんですよね。

 ある程度自由に受験でき、医学部浪人生も多いであろう医学部受験において、受験生が多いことそのものが受験生の点数が高いと証明できるものではなく、また、「女子の合格率に大きな差が生じている」からそれが医学部受験制度は問題だとする根拠も特にありません。

 当たり前のことですけど、浪人生が多数いて、記念受験が多くて、受験日程がどうかによっても変わる話ですから、その辺も考えずに単純な割合だけ並べて高い低いグラフにする馬鹿記事はいい加減辞めたほうがいいと思うんですよ。

 例えば、私が良く知る慶應義塾大学医学部は、最終入塾者数を意味する合格者数は、男性よりも女性の方が多い0.55となっています。体感としてもそんな感じなので事実だと思います。ハフィントンポスト的には女性の合格率が高く出るので「慶應はいいね」と評価されることになるのでしょう。

 しかしながら、実際には慶應義塾大学医学部への受験者は高い偏差値の壁があり低い偏差値の医学部志望者がまず受験を見送り(日程の問題もある)、また、慶應義塾大学医学部を目指す偏差値の高い優秀な男子学生は概ね東京大学理Ⅲや京都大学などを併願しています。

 その東京大学理Ⅲの合格者は男性79%です。

東京大学理科Ⅲ類
http://www.igakubu-yobinavi.com/university/u17.html

 つまり、併願している人とは… もう分かるな? ってことで、実質的な入学者数と、書面上に受験者数とを並べてみたところで、本質的な問題である恣意的な点数の操作云々なんて分かるわけがないだろということになります。

 当たり前のことですけど、この辺の議論は厚生労働省もよく認識していて、医師需給分科会では女性医師は男性医師に比べてどのくらい「戦力」になっているのかも含めて議論しています。

医師需給分科会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_318654.html
新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000160954.html


 この辺の話を全部見ないか知らずに数字だけ見て「下駄を履いている、けしからん」「女性医師の働きやすい環境を」という安易な結論を導き出すべきではなく、その辺の話はすでにいろんな議論を経ていることも踏まえて報じろや、と思う次第です。


iryou_jujisya_jimu.png