というわけで、しばらく頑張っていた信長の野望のリプレイ(After Action Report)を寄稿しました。前編後編に分けてみたんですが、前編も2分割したほうが良かったかと思い、後悔しています。

 【山本一郎】「信長の野望・大志」アフター・アクション・レポート。義清物語(前編) 立身興国! 本人以外無能軍団村上家の逆襲
https://www.4gamer.net/games/378/G037862/20180724016/
『信長の野望 大志』公式サイト
https://www.gamecity.ne.jp/taishi/

 『信長の野望 大志』のゲーム性については、かねてから酷評されておりました。私も、先日の大型アップデートまでは、とてもやる気になれませんでした。一番大きな要素は「理不尽で面白くない合戦がスキップできない」ことで、特技によるコマンドが意味不明ですしフィールド戦なのにターン制でテンポが悪く、何より索敵がゴミなのでゲームになっていませんでした。

 その後、アップデートによって合戦がスキップできるようになったため、ようやく戦略ゲームの最低限のところがクリアになったということで取り組んでみました。200時間ほどプレイした限りでは、どうしようもない要素がてんこ盛りになっているため、そういう地雷もまたゲーム性に裏付けられた世界観のひとつと割り切ってプレイすることにしました。

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 正直、世界観を受け入れて「なりきりプレイ」する以外に、この『信長の野望 大志』は残念ながらプレイする意味が持てません。もちろん、上級でも千葉家や木曾家、蠣崎家でギリギリの生き残りをし幕府を開くことはできると思いますが、浪岡家、若狭武田家、秋月家は私の技量ではどうひっくり返っても序盤を生き抜くことができませんでした。

 その点、村上家は村上義清が強く、序盤に喰える小笠原家、木曾家、三木家、次いで山内上杉家、そして序盤に特殊商圏を押さえられて北条家との婚姻が成立すれば、長尾家(上杉家)&椎名家、神保家、畠山家、本願寺、朝倉家を経由して東北の雄南部家を押さえられますので、比較的安定して幕府を開くことができます。

 問題は村上義清以外に一門衆がおらず、北条家から嫁を引き取ると婚姻できる武将がいなくなるという点です。そして、この『信長の野望 大志』で村上家が難易度低く生き残るには北条家と婚姻を結びつつ、関東管領を目指す北条家が落とす前に国峯城、箕輪城あたりは陥落させておく必要があります。

 北条家と婚姻ができ、周辺弱小大名を併合できてさえいれば、長尾家の攻略は問題なく、後はきちんと東北に伸び、新たな城を建築し、上杉謙信(長尾景虎)と南部晴政、蘆名盛氏を先陣に丸森伊達家を併合し進むだけです。武田家に宣戦布告すると、なぜか北条家が婚姻関係切ってまで武田家に義理立てする割には戦争にならないので、武田家を攻略してから北条家を駆逐すれば問題ありません。

 北条家を併合できれば、北条家の有能な面々がごっそり村上家の一門衆になるため、お市でも他家架空姫でも順次娶りながら京都(山城)二条御所まで攻め上がれば幕府は開けます。

 残念なことに、北条家、今川家、武田家以外の東日本大名はほぼ同じ経路を踏めば幕府が開け、戦略に幅が全くないことに難点があります。北条家が関東管領を目指す対象地域の大名は北条家と同盟を結べないので、北条家が里見家を喰って太る前に、北関東零細大名を全部喰って北条家よりも速いスピードで太る以外に方法はないかもしれません。

 残念なことに、商圏も外交も農業も施設も仕様として納得しがたいものがあります。農業にいたっては、一度災害を受けてから評定で得られる災害対策の施策にポイントぶち込めば全国全城災害対策万全になるとかシステムが根底から崩壊しています。外交も隣接していない同盟国の戦争に加勢できず、システム的に加勢できなかったにもかかわらず加勢しなかったことで外交ペナルティがつくとか、理不尽にも程があります。

 ゲームデザイン的に、大名同士の総力戦、合戦を花形にクリエイティブを頑張ったんだと思いますが、スパム部隊に釣られて大規模反攻をしようとするAI大名が兵糧切れになって部隊解体に追い込まれるさまを見るにつけ「せっかくここまで綺麗に作ったんだから、もうちょっと抽象化の方法を考えて実装しろよ」としか思えないシステムになっているのが残念です。

 合戦と並んで、ゲームのメインに入っている「志」は、おそらくCivシリーズの各文明特徴にインスパイアされて作ったものだと思うのですが、自由に地形が組み変わるシド星ですら文明ラッシュの時期が決まり過ぎて不評なのに、土地と大名が日本地図に固定されている信長の野望全国版でこれをやられると面白くなるはずがありません。

 加えて、HoI2シリーズからインスパイアされたのか、大雑把なプロヴィンス制を敷いているのですが、待ち構えて塹壕を掘ることもできなければ包囲もない、生産地への妨害もできず、戦術的奇襲もなし、補給路遮断なし、それでいて隣のプロヴィンスまで影響のある防塁柵が築けるという謎仕様で、しかも城ごとに影響を与えられるプロヴィンスが固定のために経済的にも文化的にも領土を「押す」ことができない仕様になっています。

 それでいて、マンパワーという概念がなぜか流民となり(農民と農兵の仕組みは良くできている)、それも城に隣接したプロヴィンスに宿屋を建てると流民がどこかから湧いて増えるわけです。そうなると、越後や加賀などの穀倉地帯も、飛騨や北信濃などの山ばっかの地域も、宿屋レベルアップさせれば大量の流民がやってきて、人口爆発して農民の数倍の流民が城下でニートのようにウロウロしている、そして地域にコストはかかりません。残念ながら、ゲームのシステムとしても戦国シミュとしても戦略シミュとしても完全に崩壊しています。

 思い返せば、巷では佳作とされている『信長の野望 創造 with パワーアップキット』も、計略が事実上存在せず武将忠誠度も物資バランスも崩壊していましたが、日本地図という細長い地形でゲームとしてはなかなか面白くするのはむつかしい地形固定の状況で「道を太くすること」と「箱庭的な城育成の面白さ」でどうにかなった、というのが実際ではないかと思います。

 しかしながら、今作の『信長の野望 大志』では、河越夜戦の序盤900人ぐらいしか農兵を抱えていなかった城下が、幕府を開くころには各城で30,000人以上の農兵足軽を擁し、流民も相当数抱えて、生産人口は各城30万人近く必要になるという大インフレ構造になっている割に大合戦になっても幸い戦死者は少ないのでどんどん日本全国で人口が溢れていきます。せめて各国で天井の石高を用意してそれ以上の人口にはならない、少ない人口でどうやって生き残るか? をプレイヤーに考えさせるゲームにしてほしかったと思うわけであります。

 それを乗り越えられるのは、プレイヤーの信長の野望に対する愛とか、縛りプレイとか、なりきりプレイの楽しさとか、理不尽を受け入れられる広い心とか、そういうのだと思います。自分ですら「わたし、こんなクソゲにこんな時間使って何してんだろ?」と感じましたもん。

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 というわけなので、少なくとも現段階の『信長の野望 大志』はまったくお薦めしません。買ったらいろんな意味で損しますよ。損した私が言うのだから間違いありません。後編も書くので、もうしばらくお待ちください。

(この画像は張飛です)


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