ひところベンチャー投資界隈で話題になっていたペジーコンピューティングが詐欺容疑で摘発されてしまいました。
ベンチャー幹部に数億円詐欺疑い https://reut.rs/2ikYmbM
スパコン企業社長 詐欺容疑逮捕|NHK 首都圏のニュース http://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20171205/0004515.html
[引用]
ことし世界トップクラスの省エネ性能を誇るスーパーコンピューターの開発に成功して注目を集めた、東京のベンチャー企業「PEZY Computing」の社長の齊藤元章容疑者(49)ら2人が、経済産業省が所管するNEDO=新エネルギー・産業技術総合開発機構から助成金4億3000万円あまりをだまし取ったとして、詐欺の疑いで東京地検特捜部に逮捕されました。
--
ひところ、最高速で省電力なスーパーコンピューターをこの「天才」斎藤元章さん率いるベンチャー企業が開発したということで盛り上がったわけなんですが、これはこれとして、NEDOから研究費の水増しを行い研究助成金を詐取したという一発目の嫌疑になっているのは興味深いところです。
何しろ、日本のベンチャーシーンで「これはすごい企業が出てきた」と盛り上がっていましたし、日経ビジネスがやっている日本イノベーター大賞では思い切り大賞を授与してしまってあららこららという話であります。大丈夫か日本イノベーター大賞と言いたいところですが、同年に受賞されているのは「あのZMP社の」谷口恒さんですので大勢に影響はないものと思料致します。
もちろん、Pezy Computing社(Exascaler)の持っている技術は偽りのものではないにせよ、表に出ている斎藤元章さんの天才性は必ずしもアレであるという話はこの界隈で暮らしている人であれば2014年以降ずっと燻ってきていたことですから、おそらくはこの助成金詐取話から先にいろんな枝葉がついて別の嫌疑が取り沙汰されたり、ネトウヨ方面が騒然とするような話もいろいろと出てくることでしょう。
“日本の頭脳”が予測 生活費無料の未来 | KEY PERSON|WEB GOETHE|ウェブゲーテ
https://goethe.nikkei.co.jp/article/128652019.html
第14回 日本イノベーター大賞 受賞者決定 大賞は、純国産のスパコンを開発するPEZY Computing社長の齊藤元章氏
http://corporate.nikkeibp.co.jp/information/newsrelease/20151022.shtml
なお、このPezy Computing、グループ会社内にはとても優れた技術者の方がいらっしゃいまして、そこは大変に惜しいところなのですが、さほどベンチャー投資のマーケットには名前が出ることが少ない企業でもありました。確かに天才かもしれないが… と言ったところでしょうか。
そこで、ご一緒していたのは日本アジア投資さん(JAIC)や、みんな大好きサイバーダイン(筑波大学)です。念のため、どこかで書かれていた話を置いておきますが、現在はすでにどこぞに売却済みになっている模様です。なぜ売り抜けられたのか、誰がババを引かされたのかは不明であります。
投資先PEZY Computing、ExaScalerがCYBERDYNEと業務・資本提携
https://minkabu.jp/news/945997
売上4億円だけど410億円おかわりファイナンス、CYBERDYNEがサイボーグ型ロボットより一足早くノーリスク型株券印刷ロボットの開発に成功 - 市況かぶ全力2階建
http://kabumatome.doorblog.jp/archives/65812054.html
CYBERDYNEの上場すごくよかった。とくに親指立てながら溶鉱炉に沈みかけた株価が生還したシーンは涙無しには見られなかった。 - 市況かぶ全力2階建
http://kabumatome.doorblog.jp/archives/65785066.html
とはいえ、起訴されたわけでも有罪判決がでたわけでもないので、現段階ではあくまで疑いであるという前提です。不起訴に終わる公算もおおいにあります。ただ、おそらくはこのPezy Computingのネタは単なる「NEDOから助成してもらった資金を目的外に利用した詐欺容疑」だけではなく、その「目的外に利用した」資金が何の目的でどこに流れていったのか、KEKや理化学研で彼らが何をしようとしていたのかなど、気になるポイントはたくさんあります。
いろんな意味で斎藤元章さんや、かの会社にいる研究者、技術者には優れた人がたくさんいるので、正すべき襟は正して、上手く乗り切っていただきたいと願っております。
なお、蛇足ですがPezyグループと同様にNEDOの事業採択から助成金が拠出され、筑波大学と連動する形で落合陽一さんが素晴らしいベンチャーを建立されました。新しい時代を切り拓くのに相応しい、良い仕事をして欲しいと思っています。
落合陽一率いるピクシーダストテクノロジーズ株式会社、第三者割当増資およびNEDOのSTS事業採択を通じ、総額6.45億円の資金調達を実施し、新体制を構築。
http://pixiedusttech.com/003/
せっかくの良い話なので、危ない橋を渡らないように切に願う次第です。
(追記 14:05)
経費の水増しについては、日経が少し踏み込んだ表現をしていました。
「スパコン」ベンチャー社長逮捕 助成金詐取容疑:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24265320V01C17A2CC0000/
[引用]
捜査関係者によると、逮捕容疑につながったメモリーデバイスはこれらのスパコンには使用されていなかったとみられる。
--
まあ、誤解を恐れず単純に言えば「省電力スパコン開発のための高機能メモリーデバイス開発するわ」「ええで」「できた。4億6,000万ハラディ」「おう」「サンガツ」「待てや。そのスパコンの中、高機能メモリーデバイス入っとらんやんけ」「ほげええええ」という流れなのかなと思っております。
さて、水増しされた4億6,000万円はどこへ。
(追記 6日 9:54)
異論のようなものが出ていたので、併せて掲載しておきます。
PEZYの社長逮捕について、勘違いしている人が多いのでメモ https://anond.hatelabo.jp/20171206010544
ただ、この内容は当たり前の話で、本来目的とされていた助成内容とは違う開発に流用され、それが他のスパコン受注やソフトウェアの納品に使われたために地検が取引先である各社や研究機関に対面調査をやり、内偵までしていたのです。おそらく途中で返金その他警告もあったんじゃないかと思います。
NEDOへの報告書において水増しがなされていたであろうことは(その悪意の有無はともかく)事実であろうと思われるので、今回の摘発劇の前にPEZY周辺から出ていた話と見比べても相応の事件性があると判断されたのは間違いのないところでしょう。
私が言うのも何ですが、検察は暇なんじゃなくて単に真面目にやってるだけだと思いますよ。もちろん、PEZYの斎藤元章さん以下の嫌疑が充分に晴れ、無罪になることを祈っております。
ベンチャー幹部に数億円詐欺疑い https://reut.rs/2ikYmbM
スパコン企業社長 詐欺容疑逮捕|NHK 首都圏のニュース http://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20171205/0004515.html
[引用]
ことし世界トップクラスの省エネ性能を誇るスーパーコンピューターの開発に成功して注目を集めた、東京のベンチャー企業「PEZY Computing」の社長の齊藤元章容疑者(49)ら2人が、経済産業省が所管するNEDO=新エネルギー・産業技術総合開発機構から助成金4億3000万円あまりをだまし取ったとして、詐欺の疑いで東京地検特捜部に逮捕されました。
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ひところ、最高速で省電力なスーパーコンピューターをこの「天才」斎藤元章さん率いるベンチャー企業が開発したということで盛り上がったわけなんですが、これはこれとして、NEDOから研究費の水増しを行い研究助成金を詐取したという一発目の嫌疑になっているのは興味深いところです。
何しろ、日本のベンチャーシーンで「これはすごい企業が出てきた」と盛り上がっていましたし、日経ビジネスがやっている日本イノベーター大賞では思い切り大賞を授与してしまってあららこららという話であります。大丈夫か日本イノベーター大賞と言いたいところですが、同年に受賞されているのは「あのZMP社の」谷口恒さんですので大勢に影響はないものと思料致します。
もちろん、Pezy Computing社(Exascaler)の持っている技術は偽りのものではないにせよ、表に出ている斎藤元章さんの天才性は必ずしもアレであるという話はこの界隈で暮らしている人であれば2014年以降ずっと燻ってきていたことですから、おそらくはこの助成金詐取話から先にいろんな枝葉がついて別の嫌疑が取り沙汰されたり、ネトウヨ方面が騒然とするような話もいろいろと出てくることでしょう。
“日本の頭脳”が予測 生活費無料の未来 | KEY PERSON|WEB GOETHE|ウェブゲーテ
https://goethe.nikkei.co.jp/article/128652019.html
第14回 日本イノベーター大賞 受賞者決定 大賞は、純国産のスパコンを開発するPEZY Computing社長の齊藤元章氏
http://corporate.nikkeibp.co.jp/information/newsrelease/20151022.shtml
なお、このPezy Computing、グループ会社内にはとても優れた技術者の方がいらっしゃいまして、そこは大変に惜しいところなのですが、さほどベンチャー投資のマーケットには名前が出ることが少ない企業でもありました。確かに天才かもしれないが… と言ったところでしょうか。
そこで、ご一緒していたのは日本アジア投資さん(JAIC)や、みんな大好きサイバーダイン(筑波大学)です。念のため、どこかで書かれていた話を置いておきますが、現在はすでにどこぞに売却済みになっている模様です。なぜ売り抜けられたのか、誰がババを引かされたのかは不明であります。
投資先PEZY Computing、ExaScalerがCYBERDYNEと業務・資本提携
https://minkabu.jp/news/945997
売上4億円だけど410億円おかわりファイナンス、CYBERDYNEがサイボーグ型ロボットより一足早くノーリスク型株券印刷ロボットの開発に成功 - 市況かぶ全力2階建
http://kabumatome.doorblog.jp/archives/65812054.html
CYBERDYNEの上場すごくよかった。とくに親指立てながら溶鉱炉に沈みかけた株価が生還したシーンは涙無しには見られなかった。 - 市況かぶ全力2階建
http://kabumatome.doorblog.jp/archives/65785066.html
とはいえ、起訴されたわけでも有罪判決がでたわけでもないので、現段階ではあくまで疑いであるという前提です。不起訴に終わる公算もおおいにあります。ただ、おそらくはこのPezy Computingのネタは単なる「NEDOから助成してもらった資金を目的外に利用した詐欺容疑」だけではなく、その「目的外に利用した」資金が何の目的でどこに流れていったのか、KEKや理化学研で彼らが何をしようとしていたのかなど、気になるポイントはたくさんあります。
いろんな意味で斎藤元章さんや、かの会社にいる研究者、技術者には優れた人がたくさんいるので、正すべき襟は正して、上手く乗り切っていただきたいと願っております。
なお、蛇足ですがPezyグループと同様にNEDOの事業採択から助成金が拠出され、筑波大学と連動する形で落合陽一さんが素晴らしいベンチャーを建立されました。新しい時代を切り拓くのに相応しい、良い仕事をして欲しいと思っています。
落合陽一率いるピクシーダストテクノロジーズ株式会社、第三者割当増資およびNEDOのSTS事業採択を通じ、総額6.45億円の資金調達を実施し、新体制を構築。
http://pixiedusttech.com/003/
せっかくの良い話なので、危ない橋を渡らないように切に願う次第です。
(追記 14:05)
経費の水増しについては、日経が少し踏み込んだ表現をしていました。
「スパコン」ベンチャー社長逮捕 助成金詐取容疑:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24265320V01C17A2CC0000/
[引用]
捜査関係者によると、逮捕容疑につながったメモリーデバイスはこれらのスパコンには使用されていなかったとみられる。
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まあ、誤解を恐れず単純に言えば「省電力スパコン開発のための高機能メモリーデバイス開発するわ」「ええで」「できた。4億6,000万ハラディ」「おう」「サンガツ」「待てや。そのスパコンの中、高機能メモリーデバイス入っとらんやんけ」「ほげええええ」という流れなのかなと思っております。
さて、水増しされた4億6,000万円はどこへ。
(追記 6日 9:54)
異論のようなものが出ていたので、併せて掲載しておきます。
PEZYの社長逮捕について、勘違いしている人が多いのでメモ https://anond.hatelabo.jp/20171206010544
ただ、この内容は当たり前の話で、本来目的とされていた助成内容とは違う開発に流用され、それが他のスパコン受注やソフトウェアの納品に使われたために地検が取引先である各社や研究機関に対面調査をやり、内偵までしていたのです。おそらく途中で返金その他警告もあったんじゃないかと思います。
NEDOへの報告書において水増しがなされていたであろうことは(その悪意の有無はともかく)事実であろうと思われるので、今回の摘発劇の前にPEZY周辺から出ていた話と見比べても相応の事件性があると判断されたのは間違いのないところでしょう。
私が言うのも何ですが、検察は暇なんじゃなくて単に真面目にやってるだけだと思いますよ。もちろん、PEZYの斎藤元章さん以下の嫌疑が充分に晴れ、無罪になることを祈っております。