本当にやるかどうかは別として、4人以上出産した女性を表彰してはどうか、という話が自民の山東昭子さんから出て、まあいろいろ波紋を呼んでおるようです。実際には、批判八割ってところでしょうか。

自民の山東氏「4人以上産んだ女性、厚労省で表彰を」:朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/articles/ASKCP5RL8KCPUTFK017.html

 出生対策をある程度勉強したことがある人ならば、1920年代にフランスが鉄道事業の一環として大家族カードを作り、表彰制度から拡張して企業協賛や特典をつけていって、フランス人の出生率を引き上げる対策の目玉にしていることはそれなりに有名です。ただ、日本の場合は「産んだんだね、偉いね」で終わってしまいそうですので、別の形で出生だけでなく育児支援などもセットでやらないと意味はないというのもありますし、表彰されたから子供を産むというよりは子供が産まれたので表彰されるという後付けの制度に意味を見出しにくいというのは分からないでもありません。

 しかしながら、朝日新聞の記事にもあるように過去に厚労大臣であった柳沢伯夫さんが「女性は子どもを産む機械」と発言して爆発炎上した事例と組み合わせる向きもあるわけなんですけど、見方を変えるとそれだけ出生率の低迷はあかんことになっており、危機感はあるんでしょうけどね。それなら単純に所得にかかわらず子供の出生に対する直接の助成や、育児・教育へのバウチャー制での補助といった、直接給付に近い出生対策を取らない限り、なかなか出生率なんざ上がらないんじゃないか? と思うわけであります。

 一方、最近では独身税とかその手の話がたびたび取り沙汰されるようになりました。

石川県かほく市ママ課「独身税」創設報道は飛ばしだった!? 市担当「大変困惑しています」|ガジェット通信 GetNews
http://getnews.jp/archives/1887579

 実際、独身者や子なし世帯は一連の子育て支援関連予算の恩恵は一切蒙らないうえに、子育て世代より上の世代は政策的支援なしに子供を育て上げたという点で「私たちは苦労したのに、いまの若い人たちは」みたいな世代間の分断の原因になるよなあというのもあって、非常に微妙です。事実上、税金として取り立てられることはないにせよ、独身者や子なし世帯は不利になるのは自明であります。

 また、最近の「働き方改革」の議論の中でも、子育て中の女性が時短勤務を許される一方、子育てをプライベートな事情とみるならば独身者のデートや買い物だってプライベートなのに時短勤務は認められないのかというような話も出てくるわけでして、正直「そこを突っ込み始めると政策議論にならない」という状況に陥ります。

 少子化対策の問題は、ただでさえ「現代社会で日本人に与えられた権利として『結婚しない』『子供を儲けない』自由」と「子供は欲しいけど頑張ってもできなかった」「結婚したいけど相手が見つからない」という事情とが交錯するところなので、結局は結婚したい男女を後押しすることと、産まれた子供が育てやすい社会にすること以外に政策の引っ掛けるポイントがないのが辛いところですね。