この手の話はデータが全部出ているので、きちんと調べればちきりん(伊賀泰代)女史の記事は半分当たり、半分間違いというタイプのものであることはすぐに分かります。

 簡単に言えば、ちきりん女史は「日本の自動車輸出台数の総計」と「アメリカの自動車輸入台数の総計」を見て、これらがすべて日本の輸出、アメリカの輸入であるかのように勘違いをしていることになります。もちろん、事実関係は違います。その意味では、ちきりん女史の書いていることは間違いです。

日本の自動車産業が直視すべき現実 - Chikirinの日記 (id:Chikirin / @InsideCHIKIRIN) http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20170125

 このちきりん女史の論法で言うならば、フランス(主にルノー)もドイツもアメリカに激おこされなければならないことになります。

外務省 自動車輸出の多い国
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/ranking/car_ex.html

 正解は、こちらです。

日本の自動車輸出国別 2015 年
http://www.ambtokyo.esteri.it/ambasciata_tokyo/resource/doc/2016/05/tabella_automotive_2_jpn.pdf 

 ちきりん女史の引用した2015年弩の日本からアメリカへの輸出台数は160万4,446台で、アメリカの2015年度の自動車輸入台数約537万台の29%であり、独仏に次いで3位です。

 もちろん、ちきりん女史の言う「生産台数が国内販売台数に比べて過大である」というのは事実なので、不均衡は是正しないといけないという主張は正しいと言えます。ただし、それらが日米の自動車貿易において摩擦の根源かと言われると微妙です。トランプさんはいろいろ言ってるけど。

 日米で言うならば、ソフトウェアや金融などを日本が輸入し、自動車や化学製品などを日本が輸出しているという単純な貿易の互恵関係がある一方、いわゆる外-外と言われる日系資本が中国やアジアへ進出して生産したものがアメリカへ輸出されるものもあるため、生産台数と国内販売台数を並べて450万台生産超過だ、これが全部アメリカに輸出されている、貿易摩擦だ、と言われてもピンとこないなあというのが正直なところです。

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 なお、日米の自動車貿易についてはさすが主幹産業でして豊富なデータが揃っている界隈です。
 細かくは、自動車産業ポータルを観てね。

自動車産業ポータル MARKLINES
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_usa_2016