貧困バッシングで先陣を切っていたサイゾー系のビジネスジャーナルが吹っ飛んだので、少しは落ち着いた議論でもできるようになったんでしょうか。良く分かりませんが、撃墜したNHK関係者や実在するかどうかは分かりませんが「外部ライター」の方々はお疲れ様でございます。

 んで、見ていたら雨宮処凛女史が例の「時給1,500円」の話の延長線上で、貧困バッシングの話を書いておられたので、興味深く読んだわけです。

すべての貧困バッシングは、通訳すると「黙れ」ということ〜「犠牲の累進性」という言葉で対抗しよう〜の巻 - 雨宮処凛
http://blogos.com/article/188788/

 「賛同まではしないけど、理解はできる」という話ですね。主張すること自体はもちろん社会的に許されていることですし、デモでもネット記事でもわいわいやって、話題を盛り上げるのは良いことなのではないでしょうか。

nanchou_ojiisan


 個人的に思ったのは、今回「貧困バッシング」という言葉で括られているのは、貧困をダシにして飯を食うメディアに対する批判であって、貧困で苦しんでいる人たち自身に対して、恐らく叩いている人らは何も興味はないのだろうなあ、という点です。あるいは、貧困に陥っている人が公的扶助を受けていること自体が、働く能力があるにもかかわらず働かないことを正当化する人たち的な見え方をして、そのまま叩きに回られているという話です。

 時給1,500円の話が付随するんですが、「収入が低い」とデモをするぐらいなら「誰かに雇われるのではなく自分で仕事を作れ」風のマッチョリズムが批判としてどうしても出るでしょうし、安い給料で自分なりに働いて、ちゃんと評価されれば社員登用されたり実績をもってより給料の高いどこかに移ればいいじゃない(by マリー)みたいな反論が出やすいのでしょう。それができないから貧困なのにね。

 正直、時給と貧困の問題は本来賃金相場が決めることであるはずが、相場に見合わない働きしかできない人は最低時給しかもらえず、その最低時給は法的に定められているのだから、それを引き上げれば貧困は回避できるはずだ、というシンプルな主張がされているわけですね。まあ、そう考えているのであればどうぞ。私も理解はできるし、議論してけばいいんじゃないでしょうか。

 また、「生活に困ってたら、ライブや映画に行っちゃいけないのでしょうか」という主張は結構むつかしくて、法的には別に生活保護のお金も含めて貧困家庭が自分の資産をどう使おうが本来は自由ですから、原則論としては生活に困ってようが無かろうがライブや映画に行くことは好きにどうぞ、という話です。

 ただ、他人さまからお金をいただく立場の人が、自分の生活を立て直してより良い仕事をしたり、未来に向かって自分なりに職業訓練をするなどして扶助を受ける側から脱する努力をしましょう、という一定のコンセンサスを無視して「映画にいって何が悪い」と強弁してしまうと、本来であれば得られるであろう支持を得られずに活動が盛り上がらないことになるでしょう。貧困も問題だけど、勤労意欲がないことも問題ですからね。せっかく「反貧困」というちゃんとした旗頭があるのに、「ライブに言って何が悪い」という主張をしてしまうと、それを批判するサイドから「そういうだらしない金の使い方をするから、お前らはいつまでも貧乏なんだ」とか「そんな遊ぶ金をくれてやるために納税者はいるわけじゃない」などという批評に説得力を持たせてしまうことになるのです。 

 このデモの主張したいことは反貧困のはずなのに、なるほどそういうことを言うから貧困なのだという別の腹落ちをしてしまうようだと本末転倒です。

 生活水準を底上げさせるために、一定の賃上げは本来必要だろうと思いますし、最低賃金の引き上げは重要です。それによって、救われる家計もたくさんあるでしょう。しかしながら、その扶助を受ける側が一足飛びに「時給1,500円にしろ」と無理筋の主張をし、貧困を叫ぶ人が友達と飲みにいって何が悪いと開き直られて、果たしてどれだけの中間層が彼らの活動を支持するのかは分かりません。

 片山さつき女史のごとき与太話は論外としても、彼らの貧困を救うことができるのは雇用主であり納税者なのであって、そちらにも利害はあります。普通の人達は真面目に日中働いて努力して我慢も妥協もして給料を得て映画を観に行っているわけで、彼らが「なるほど、貧困に陥っている人を助けなければな」と広く納得してもらえる主張でない限り、同調もされず広がってもいかず、内輪の胴上げのし合いでタコツボ化してしまうのでしょう。貧困に陥っている奴がアニメグッズを持つな、アクセサリーをつけるなということではなく、それは別に言わなくてもいいことなんじゃないの? 貧困問題を解決させるためにも必要な賃上げを現実的な金額で検討しませんか、みたいな話であってほしいと思うんですよね。

 結局、主張を先鋭化させすぎて、なんか訳分からんことになってるんじゃないかと思いました、まる。

 追記ってほどでもないですが、片山さつき女史は馬鹿すぎて見るに堪えないので、良い意味でこのデモと刺し違えて対消滅していただけると世の中がほんのり良くなる気はします。デモはデモでぜひ頑張ってください。