特定方面にセンシティブなタイトルを付けてみましたが、本件に関して言えば突然密漁が始まったわけではなく、また自然発生的にさんごが密漁されたということでもないので、中国の海洋当局の黙認ないしは何らかの指示があってのものであることは自明であります。



中国のサンゴ密漁船か、伊豆諸島沖で120隻確認

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141101-00000031-asahi-soci



 外務省も3日前に中国政府に申し入れをしているわけなんですが、恐らく何の効果もないか、何らか動きがあるのは数ヵ月後になると思います。というのも、中央政府の中南海に幾ら言っても、各地方の軍閥化した担当者にまで話が降りて妥結するまでに時間がかかるからです。



外務省、サンゴ密漁で中国に申し入れ

http://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/141030/plt14103018010024-n1.html


 日本も中国も恐れていることとしては、尖閣諸島と同様に一触即発の事態に陥ることで偶発的な事件に発展し、両国の世論が抑えきれなくなって降りられない戦いに発展してしまうことです。前野田政権下の尖閣諸島国有化問題でもありましたし、フィリピンでもベトナムでも同じ現象がありますが、結局のところ、中国が手を出すときは必ず漁船がまずやってきて既成事実を作ろうとする動きが出ます。



 そういうものの回避と言うのは、究極にはアメリカ海軍がやってくるか、ないしはその同盟国である日本が軍隊を動かすかという示威活動があって初めて撤収の決断をするという話になるわけでして、海上保安庁がいかに優れた組織で練度の高い人員を抱えていようとも装備面で飽和してしまう以上、警察力の範疇では対応しきれない事態に直面したということで海自を投入する検討を始めるしか方法はないのでしょう。



 この辺はとてもセンシティブで、尖閣諸島に中国民間人が上陸する際どうするのか、武装していたらどうなのかという話はどうしても出ます。どこまでが警察力での対応とするべきか、どこからが自衛隊なのかという議論は、まさに尖閣諸島でのシミュレーションに近い状態になっております。



 その意味で、中国のさんご漁は日本の本気度を試しているという点で冒険主義的ですが、日本はこの挑発を好機として、既成事実として「警察力を明らかに上回る危機が発生しそうなときは、自衛隊を出すんだ」というルールを作って、今後の尖閣諸島その他での有事への対応策を練ってしまうのがいいんじゃないかと思うわけであります。



 一説には、安倍政権の安全保障面での碩学の人であり、安全保障のあり方に強い影響を与えた岡崎久彦さんが亡くなられたことも、中国の判断に影響しているんじゃないかと分析している人たちもいるようですが、さてどうなんでしょうか。むしろ中間選挙期間に突入してアメリカが細やかな対応の出来ない時期を選んで漁船がやってきているという分析のほうが正しい感じはするんですが。



 ただ、中国としては日本と喧嘩して本格的にアメリカが呼び込まれてしまうと面倒ですので、あくまでアメリカの考えや出方を占うために日本を挑発しているという見方が一般的です。で、中国に関してはとりわけこの手の海洋政策はあまり一枚岩ではないのもまた事実なので、見極めとしては誰がこんなことを容認して日本に面倒をかけてきているのか、ちゃんと調べたほうがいいんじゃないのと思う次第です。