日経で非常に素晴らしい連載があって、これは通勤中でもクソ中でも目を皿のようにして読むべき記事だと思うわけです。



スター誕生の裏側 小保方博士と理研の迷宮(中)

http://www.nikkei.com/article/DGXBZO71055780S4A510C1000000/



 今回は理研が採用している研究者任期制を取り上げて、希望や夢を抱けない若手研究者の苦悩を記しているわけですけれども、


[引用]  日本で研究を続ける場合、35歳がターニングポイントになる。大学で助教になるか、研究所や企業の研究職に就職しないと、その先はポストを探すことが難しくなる。そもそも博士課程を修了すると30歳近くの年齢になるため、理研に入った研究者は、任期が切れた後に不安を抱く。



[引用]  「研究の現場は、5年経てば全員が入れ替わる。こんな巨大研究組織は世界でも珍しいのではないか」。理研横浜研究所に在籍していた研究員は、その現実に憤り、大学の研究室に戻った。任期制の優秀な研究員が次々と去っていく一方で、一部の終身雇用の研究員は居座り続ける。若手研究者の間では、この枠を「座布団」と呼んでいる。



 「高齢の研究者がやめないから、座布団があかない」。定年が60歳から65歳に延長されたことで、その座を狙っていた若手研究者が行き場をなくしている。




 これ、シンガポールの学術研究のあり方と酷似してるんですよね。大して能力のないシンガポール人(シンガポール国籍)のマネージャーを座布団として、ここでいう高齢の研究者と置き換えればそう大差ないです。



 私自身はあんまり理研には詳しくないけど、周囲には現役もOBもいるのでニュアンス的にはコネ採用のクズが大量にいるんだろうという雰囲気は伝わってきます。そういうところから日本の科学研究体制というのは劣化しているのだという話なんですけれども、じゃあ海外の研究機関はどうなのかというと、程度の差はあれ似たような仕組みで回っていたりもする。では、彼我でどうしてここまで状況が違うのか、という話になると、ガバナンスの有無という結論になるわけですわ。



 要するに、日本というのは名選手がそのまま監督になるように、優秀だった技術者や研究者がそのままプロジェクトリーダーとなり、組織の管理職になって、研究以外の雑務にも手を出さなければならなくなっていく。当然、それまでは研究のことしか頭になかった人たちですから、マネジメントだガバナンスだコンプライアンスだといっても能力を発揮できるわけがありませんわな。



[引用]  「今の理研はポスドクだけに頼り過ぎている。テニュア(トラック)を増やして、責任ある研究者を作っていくべきだ」。テニュアトラック制度とは、博士課程を修了した若手研究者で、任期の間に一定の成果を出していれば終身雇用の職を用意するというもの。この制度を導入すれば、優秀な人材が集まり、腰を据えて研究に取り組む環境が整うという。



 そうするとね、一定の成果をどう判断するかという人事を、誰がやるのかって話になるわけですよ。任期の間(=5年)に出せる成果は限られているし、生物学に限らず自然現象を扱う分野の場合、どうしてもその成果は運不運にもよるところがある。これは、シンガポールでもロシアでも同じ。結局、科学技術を担う親亀の甲羅にどう乗っかっていくかが研究者人生の生命線になっている部分もまた、あるわけでしょう。



 その意味では、それこそ文中にある京都大学の山中伸弥先生というのは本当に偉大だという話になるわけですけれども、そういう人をどんどん日本が発掘するために、理研を含めた科学技術開発の体制というものを考えるのにはとても良い機会なのではないでしょうか。