まあ、言いたいことは分からないでもないんだけどさあ…。



「正義派の農政論」

TPPで1俵2200円の米がやってくる

http://www.jacom.or.jp/column/nouseiron/nouseiron130930-22295.php



 そりゃあ農家からすれば、凄い安い価格のお米がやってくるわけですから、商売上がったりだ、と言いたい気持ちは理解できます。



 でもねえ、それは保護されてきた業界だからですよ。それ以外の世界では、海外との産業競争や価格と品質のつばぜり合いをやって生きてきている。海外との競争に負けて潰れる製造業あり、生き残りをかけて海外へ生産拠点を移転する化学会社あり、それが経済ってもんだと思っております。



 翻って、8倍の価格差の維持を前提に、日本の農業の採算を取るという方向の議論はさすがにもうやめたほうがいいんじゃないでしょうかね。2,000円の米が入ってくるという予測をしていながら、16,000円の日本産米を守れ、維持しろというのはどういうことなのか良く分かりません。


 「日本はTPPで、米をはじめ農産5品目を死守しなければならない」とかいうお話、これは日本の消費者や納税者が、日本の農家のために、割高なお米を買ってくださいという主張ですよね。



 全部、農家と農政だけの都合じゃないですか。

 もう少し、日本人全体が受け入れられやすいような議論になりませんかね。



 米国ルールを採用するのが反対だ、と言いつつ、その価格差を維持する目的は単なる農家のエゴに見えてしまいます。なぜならば、安くて安全でおいしいお米が輸入できるのであれば、消費者、つまり農家以外のすべての日本人にとっては利益になるからです。



 もちろん、農家にはいますぐ死んでもらいたい、なんて思ってはいませんよ。

 ただTPPで米などを除外するべきだ、と主張したいのであれば、お前らの採算性とは違う別の、公益性がたっぷりのロジックで説得してくれないと。



 ちなみに、かの記事の文末に「ASEAN+3」を提唱したマハティール元首相の言葉が引用されているんですが、アメリカ抜きの地域FTA構想やったところで、アメリカからだけお米を輸入するわけではありませんよ。日越間、日中間でのお米貿易交渉が紛糾するだけのことです。



 個人的には、とっとと聖域を減らして関税を大きく引き下げたほうがいいと思いますよ。いきなりゼロにしろ、という話ではなく、いま現在の馬鹿馬鹿しいほどに高い関税障壁を下げるだけで猶予期間と競争原理が生まれ、危機感を持った地方が農業の経営改革をさらにすすめて、もっと良い農業に日本は転換できるかもしれない。そういう話です。



 地方経済が、非都市圏が、という問題とセットになりやすいんですが、そもそも助成金や補助金がないと成り立たない地方経済って、形を変えた地方への所得移転や公共事業と一緒じゃないですか。道州制どころではありませんよ、これでは。