ゲスい話だなあと思いつつも、ついつい敏感に反応してしまうわけですけれども。



[Web] ベストセラーなのに増刷から262日経っても部数が変化しない安藤美冬『冒険に出よう』の謎

http://d.hatena.ne.jp/hagex/20130823/p9

安藤美冬『冒険に出よう』7万部突破の謎 部数の耐えられない軽さ - 常見 陽平

http://blogos.com/article/68647/



 たぶんこの本は我々のようなゲスいおっさんは確実にターゲットの外であろうから(もちろん好事家であるHagex氏や漆原直行氏は安藤美冬女史のサブスクリプションサービスに興味本位で参画していたけど)、外野がやいのやいの言ってもしょうがないわけであります。


 もちろん、これは遠因があって、ディスカヴァーが刷り部数を「盛った」かどうかの話は邪推としてはあるんでしょうが、本当にディスカヴァーが盛ったのであれば、その後も順調に盛れば良いだけのことです。7万部で足踏みしていることを満天下に知らしめて著者の商品価値が落ちるよりは、盛れるなら遠慮なく盛るでしょう。



 しかし、その後の数字に変化がないということはディスカヴァーは彼らなりに守るべきものは守っていて、盛っていないということの証左でもあります。むしろ、突っ込むべきは「初動が良かったからって初刷り2万の本を5万も刷り増すのかよ」って話のほうじゃないかと考えるわけですね。



 この前、似たような座組みでサイバーエージェントにて面白イベントもやっていたようです。



サイバーエージェントがディスカヴァー・トゥエンティワンと共同で U30 の若手ビジネスパーソン向けセミナー「U30東京仕事会議」を開講

http://www.cyberagent.co.jp/news/press/detail/id=7477&season=2013&category=ameba



 いやあ、この本で煽っておいてセミナー商売で回収するって美しいですよね(ゲス顔)。でも、この発売初週で強気の増刷! というのは著者育成の観点からいうと非常に重要で、ディスカヴァーらしいマーケティング巧者ぶりを示しているなあと思うわけですね。



 逆の言い方なら、やっぱり少しあざといんでしょうが、仮にモンキービジネスに過ぎないのだとしても、それでターゲットにしっかり刺さって、一歩でも二歩でも前に行こうという気持ちになれる若い人がいたらまあそれでいいんでしょう。



 また、いわゆる「ノマド論」も消費されてしまったようにこちらからは見えるのと、その代替としていみじくも常見陽平さんが対比している『ブラック企業』方面の言説というのは生き方論、世代論としての変遷を考える上で興味深いです。若い人が「働くこと」を考えるにあたって、企業や組織からの抑圧から逃れて自由を獲得し自分らしく生きていくための「ノマド」と、企業や組織からの抑圧自体をブラックと定義し否定的に捉える概念としての「ブラック企業」のありようです。



 だから、そこに不正があった、おかしい、というよりは、ある種の「旬が終わった」という印象を私は最初に受けました。また、そこにさらに追って増刷だ新しい刊行物でシリーズ化だという方面には追加投資せず、セミナーで一山いくらでの売り方でうまく被せているディスカヴァーは意外に誠実に扱ってるんだなとも思いましたね。