一個前のエントリーで、こういう反響があったので軽く触れておきたい。



[引用]inamenai 元記事は物流とか在庫とかの話がしたいわけじゃないと思うんだがなんでわざわざそういう回収の仕方をするんだろう。



ビッグデータもバズワードになったんだなあ

http://kirik.tea-nifty.com/diary/2013/05/post-0776.html

[元記事]靴屋とデータマイニングと季節外れの冬物衣料

http://d.hatena.ne.jp/AntiBayesian/20130423



 別に元記事すべてを否定するつもりはないことは、先のエントリーでも書いた。



 ビッグデータであれデータマイニングであれ、もちろんマーケティングの面で「より多く売る」アプローチをとりがちな情シス部門やコンサルタントが多いのも事実。ただ、元記事が何度も書いていたように「意外性」や「需要」「顧客満足」といったものは、すべて物流、在庫といった兵站のバックヤードと連携しなければ、利益を享受できない。



 というのは、置き場の効率化というのは置き場での創意工夫ではなく、仕入れや在庫状況と連動した精度の高い売上予測が必要になるからだ。そこに意外性といった感情の挟まる余地はない。春に冬物が売れる需要があったとして、何日何時まで流通が冬物に対応するかを厳密に決めるためにデータを駆使するとき、負担になるのは店頭よりもむしろ物流だからだ。


 ビッグデータを使ったマーケティングを売り込みたい人たちが誤解しやすいのは、この顧客満足とその上昇によって得られる利益の見積もりの問題であり、実際のところ、店頭で数%の売り上げ増、あるいは1%程度のリピーター増を追い求めるために必要な経費についてきちんと考えて提案してきた会社はほとんどない。



 むしろ、必要なことは、未来予測に基づいて得られるであろう売上候補のどれを捨て、限定された仕入れを行って調達経費や流通経費を圧縮することだ。ぶっちゃけ、マーケティングに使われたビッグデータによる数%の売上増よりも、未来予測に使われたビッグデータによる適正在庫化によって得られる仕入れ費用の減少のほうが、売り逃しや不良在庫の削減に繋がって圧倒的に店舗面積あたりの利益率は伸びる。



 しかも、これは一般論であって、個別店舗や商品群ごとに状況は異なる。生鮮食料品とペットボトルの水物では仕入れの方針から流通のあり方まで全部変わる。セブンアンドアイが一筆書きでトラック出してるとか、まあ品目によっては嘘ではないのだろうけど、扱う品目の性質によって求めるべき効率がそもそも違う。



 データマイニングやってたり、その辺に強いコンサルタント会社やデータ解析会社が出してくる資料に違和感があるのは、いまある売上がどういうコンテクストで成立しているのかあまり考えていないところ。



 この手の話は、以前ヤフーニュースにも書いた。



ビッグデータという、99%の事業者には効果の無い話

http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/20130328-00024117/

1割のヘビーユーザーが6割の売上を支える現実 5,200万人を超えるPonta会員データを活かすローソンのCRM戦略

http://markezine.jp/article/detail/17384



 もちろん、ローソンがもう少し具体的にどのようなことに取り組んでいるのかはある程度知っているけど、ここには書かない。ただ、決算書を見れば分かるとおり、ビッグデータにおおいに取り組んでいる割には店舗あたり売上や一人当たりはご覧の状況で、やはり削減が進んでいるのは物流コストや配送であって、いまやすべての小売りがシステム化をマーケティングだけではなくサプライチェーンの改善に取り組んでいるんだ。



 むしろ、マーケティングにデータマイニングが活用されて、画期的な収益増になったリアル小売業があるようであれば、ぜひ教えて欲しい。だいたいマーケティングに活用されるときは割引クーポンなど押し込んで、やってきたお客様がバーゲンハントする人たちばかりで平均客単価下げるケースばかりを耳にする。あるいは、商品構成のルーチンを変えるものが多くて取り扱い商品点数が増えて店舗あたりバックヤードコスト増って事例はとても多い。



 地域ごとにEコマースサイト併設とか、店舗から戸別配送だオフィス向け配達だってやってるけど、リピート増えても利益率がなあ…。



 まあ、いろいろスマートそうなこと言ってるけど、やるべき作業の9割はバラバラに入ってくる情報をDWHに入れなおしてデータのクリーンアップをする土方作業ばっかなんですけどね。あと、買った子会社の不思議なシステムを統合するお手伝いという名の炎上案件。段取り整理して周知徹底する資料作るだけでも一苦労ですね。もっとも苦労するのは私じゃなくて社員だけど。