取引先とのメールで話題爆発(というか面白がり)していた。移動中なので、軽く触れる。先月の記事なんだね。箇条書きにするお。



靴屋とデータマイニングと季節外れの冬物衣料

http://d.hatena.ne.jp/AntiBayesian/20130423



前提: 内容をすべて否定するものではない。そういう見解も成立するし、ためにする議論ではない。



その1: 「データマイニングに必要なのは意外性だ!」



 そもそも意外とか仮説の段階で言っているとしたら、それは使えないデータ担当者だ。クビにするべき。


その2: これを利用して小売店や流通業界はデータマイニングをした。どんな意外性のある結果が出てきたと思う?例えばこんなものだった。「冬は鍋の検索回数が多い」 なんたる自明!



 小売や流通は常に売り場面積や仕入れ対販売という係数に支配されていて、いつまで鍋が検索されて需要があるかというようなロングテール的な解析がなされたとしても春先には夏物を売り、秋には冬物を売る。



 ネット屋出身のデータマンが使い物にならないのは、在庫と売り場の関係を忘れて「相関があり、需要がある」という観点でしかモノを見ないからだ。はっきりいって、薄い需要ならいつでもいくらでもある。それを手がけないのは理由があって、薄い需要に対応して他に売れるものを陳列しないとか、季節はずれの仕入れは在庫コストが高く利幅が薄いといった、当たり前のことに配慮しないから。



その3: しかし、データは語りかける。「1月を過ぎても鍋物の検索数は落ちない。つまり、需要は少なくない」と。彼らはその結果を見て、自分たちが今まで大切な商機を失ったことに気づいたんだ。



 季節が外れても需要があることぐらい、小売りの人たちは良く知ってるんだよね。大切な商機として見られるのはネット販売で、それほど大きくないロットのビジネスをしている人たちのスコープであって、分野や地域ごとにバイヤーを抱えているような大口小売りだと「その程度の商機は捨ててでも利幅と数量の取れる季節物を扱う」ってことであってる。



その4: 「夏」や「冬」が具体的に何月何日を指しているのか、それは果たして自明だろうか? まだ寒い日が続くなぁと思って冬物衣料を買いに行ったら、店内にはもう完全に春物ばかり、いやそれどころか既に夏物が顔をのぞかせていた、そんな経験が君にもないかい?



 それはもはやビッグデータの問題じゃないなあ。在庫と陳列のオペレーションの問題でしょう。



その5: 先ほど「データマイニングに必要なのは意外性だ」と言ったけど、ねぇ、それって本当? 意外なことを言うのがデータマイニングの本質なのかい? 考えてみよう、データマイニングの本質とは何なのか。僕はデータから顧客満足度を高めることや売上に貢献する可能性を見出すことだと思うね。



 コストはどこにいっちゃったの? 顧客満足度だけ考えたらどんな業態だって24時間営業ですよ。在庫リスクや仕入れ圧縮を考えずに夏物冬物語るのは良くないと思うんだよなあ、データマイニングの世界にいる人が。実際にモノを売ってない人が必ず言うんだよ、「たべみるや靴屋の例で出てきた”必要な時に欲しいモノが手に入る”という素晴らしさのインパクト」ってのを。いつでもネットでモノが買えたとしても、それはカネ積みまして戸別配送するんだよ。



 それが付加価値だ、その付加価値にかかる費用を支払ってでも「必要な時に欲しいモノが手に入る」サービスを受けたいっていう人がたくさんいるんだ、っていうのなら、それは小売りの世界とはまったく違う文脈の話かなあ。一応、外商っていうシステムもあるけど。



その6: 小話をすると、セブンアンドアイホールディングスのコンビニであるセブンイレブンは、配送ルートに一筆書きの概念を利用している。一筆書きの主な性質とは「1.指定された点を通る、2.二度と同じ経路は通らない」の2点だ。

これはつまり、各配送すべきコンビニ店舗を通りつつ、同じ道を何度も行き来するという無駄を省いた経路、ということだ。




 言っておくが… 物流や兵站で一筆書きというのは「ひとつの配送ユニットで荷物を捌き切る前提」でしか効率が上がらない、極めて初歩的な配送手段のことだぞ。これはさすがにいかんだろ。実際、究極の一筆書きはハブアンドスポークだ。行って帰るだけ。物流システムってのはそんな単純なもんじゃねえと思うよ。っていうか、セブンアンドアイが物流で一筆書きやってますとか書いたら、彼らが可哀想だから撤回したほうがいいと思う。褒めてるつもりなんだろうけど。



 某社はネットワーク配送とか、可変でノードを作るとか、集中配送の効率を損ねないようにしながら他品目を扱う試行錯誤をやってる。それでも配送効率は… でさ、究極の集配効率、集荷って小口や戸別の割合を減らすことだって知ってた? それは、なるだけ季節はずれの冬物とか扱わないで配送品目を減らすことが効率を考える上で究極なんだよねえ…。



 まあいいか。