どういう理由か、昨日発売された週刊『FLASH』でみんなの党の松田公太さんと対談した内容を元に取材や情報交換を業者が求めてくるケースが増えているわけなんですが…。



 かの対談で私が申し上げたことを簡潔に書きますと:



・ ネット選挙解禁というけど、公示日にはある程度投票結果は完成していて、そこから先の選挙戦でネットが使えるとしても「不利ではない状態にする」ことはできても「有利にする」ことはむつかしい。

・ ネット選挙が進むことはより有効な名簿に対するアクセスが効率よくなるという話で、それは選挙戦術的により組織化が進む。組織票に依存している政党は有利になる。

・ ネット選挙自体は投票率改善の役には立たない。ネット上で投票できるわけではない。有権者の消去法による候補者選択を覆すほどのインパクトはない。

・ ビッグデータはあまり関係ない。有権者との接点を作る手段としてネットが増えるだけで、情勢分析をするためにビッグデータをという話は本末転倒である。

・ っていうか未来予測でビッグデータを使うっておかしいから。ビッグデータによる解析は遅行指数だから。

・ 候補者や議員や政党がネット選挙に前のめりになって、サーバーや回線など設備投資に目覚めるのは勝手だけど、それよか良質な名簿を集めたり、情報を更新したり、問い合わせにネットで対応する組織のほうが大事。


 というわけで、ネット選挙解禁だーってことでそっち方面の人々が営業面で色めき立つのは分かるし、それ自体に反論したりするつもりはないけど、不必要なものを政党や議員に押し込むと反動が怖いと思いますよ。



 例えば、検索データを活用することで選挙予測をすることは可能です。ただ、そのデータ自体は中立なもので、いま雨が降っていることがわかるだけです。その後、どうなるのかというところが類推できなければ、多額の金を支払ってビッグデータ解析をしようとしても、外れる天気予報が出るだけです。



 なので、当たる情勢分析をやりたい、ってオーダーなのであれば、選挙期間中のネット利用解禁は無関係で、選挙期間でない時期にいか情報を集めて定点観測をするべきかという話になりますし、ビッグデータにいたっては無用の長物です。将来的には要るかもしれないけど、いまはそれ以前の状態なんだからそこに投資したって何の効果もないでしょう。



 逆に言えば、例えば「現在新聞社や通信社がやっている電話調査のほうが、投票結果に対するバイアスを見極めるうえでデータが揃っているのでそっちを使って予測かけましょう」という説明のほうが正確かもしれないですよね。あくまで例えば、ですが。



 そういうと、反論として「いまや固定電話を持ち日中に家に居る人など限られているのだから、そのような電話調査は時代遅れだ」という主張がきます。理屈としてはそうでしょうし、将来的に固定電話が死滅する可能性もありますから、長い目で見ればその通りでしょう。



 でも、いまはまだ違いますし、情報も蓄積があり、電話調査の結果と出口調査の結果との相関をしっかりと調べれば、現状でビッグデータがどうというシステムを億単位の金かけて振り回すよりもp値が低く遥かに正確な予測を統計的にはじき出すことができます。5年かけて情勢分析をネット化していきましょう、という話だったら理解できますけどね。



 なので、選挙期間中のネット選挙解禁と、ビッグデータによる政治の情勢予測の話をごっちゃにして、あたかもネットに金をぶち込めば選挙に勝てるようになるのだ的なプレゼンをするのはやめて欲しいと思います。