なんか不思議と好評な小説『赤い絨毯』の3回目が出ました。正確には昨日出ていたんですが、告知を忘れていましたすみません。



【第3回】友達|山本一郎|赤い絨毯|cakes(ケイクス) https://cakes.mu/r/XrBJ



 連載の評判が良いことに気をよくして次回作でも作ろうかとあれこれ模索をしているところであります。こんな駄文の習作を読んでいただいてありがとうございます。



 それだけだとCakesの奥深さが勿体無いので、最近私がCakesを読んでいて「面白い」と思ったテキストなどをお奨めピックアップしてみました。書き切れないので、強く推奨第一回ってことで。


■近藤正高さん



 どっちかっつーと鉄道ファン御用達な感じの近藤さんがあれこれ資料を元に故人を語る不定期連載。これがねえ、面白いんですよ。樋口さんは経営者ヲタの間でも人柄を偲ぶ向きは多いんですが、近藤さんとはやっぱり見ているスコープが違う。エピソード重視で人の持つ心の分厚さを計るような書き方をする。



 普通、故人を語るときの口は実績で言うことが多いんです。何をなした人か、その人が亡くなられたのでそれを語るというのが定番ですが、それは押さえつつも近藤さんはエピソードを語り、人柄を探っていく。文献の中から、恐らくそういう読み取り方をしようという突き詰めが習慣づいているからこそ、こういう味になるのだろうと思うのです。



 この万人向きでないのがいい。みんなが読むような偉人の伝記にはならないけど、だが確実に時代の一面を担った人たちを考え、その生きた時代を肌で感じるとはどういうことなのか。もちろん、みんな故人は戦後を駆け抜けて成功した人たちばかりで、翻って、ある意味で昭和を思い返す的なのが物凄く心に響きます。



 なんだろう、この好事家な感じは。近藤さん自らが好事家って言っちゃってるけど。



宮史郎――女の悲哀を歌っても醸し出す「道化の味」|近藤正高|一故人|cakes(ケイクス) https://cakes.mu/r/brBJ

樋口廣太郎――「聞くこと」から始めたアサヒビール再建|近藤正高|一故人|cakes(ケイクス) https://cakes.mu/r/ZrBJ



近藤正高「『国のかたち』を問うた2012年物故者たち」

http://blogos.com/article/53114/



■古賀史健さん



 自分で書き方語っても、人に語らせても良いのが古賀さん。『20歳の自分に受けさせたい文章講義』(星海社新書)の人。というか、前に出ても遜色ない書き手であるにもかかわらず、一歩前に出ない感じが好き。講義と書いてますけど、まだ書いたことのない人もさることながら、すでに書いている人も見失いがちなスコープについてなど基本動作の重要性を再認識させてくれる内容も数多くて、アマレッスンというよりはプロコーチのような感じです。古賀さん自身も、書き方にリズムがあり雑味がない。それでいて、古賀さんらしい書き方ってのが見えてて凄いと思うわけです。



 最終講はハッとします。あー、これは私が勝手に思ったからかもしれないけど。タイトルからして『読者はどこにいるのか?』。ウェブで書いていると、特に見失いがちですし、本当は、最初にテーマと一緒に決めておかねばならぬことなんですけどね。まだ書くことに慣れていない人には、あまり「想定読者」といってもピンとこないかもしれないんですけど。



 私のような片手間ライターじゃなくて、プロってこういうもんだと思いますねえ。



【第1回】cakesが見つめる「普通」の未来。|古賀史健|cakesが見つめる「普通」の未来|cakes(ケイクス) https://cakes.mu/r/ArBJ

第四講 文章のカメラワークを意識する|古賀史健|文章ってそういうことだったのか講義|cakes(ケイクス) https://cakes.mu/r/ErBJ



■岡田育女史



 文章の良し悪しに凄いムラがあって、ホームランをぶっ放したかと思えば振り回してカスリもせず三振も良しという一発長打が魅力のokadaic女史。一連の文章の中で、いちばん間口が広そうで、いけてる回を激しくチョイス。ここから奥へ入っていけるのであればドハマリすること間違いなし。



 要約すると二十字で余すところなく説明できてしまうようなテーマでも、okadaic女史にかかれば風呂敷いっぱいに論じられてしまい、無駄も多い割に読み進めるごとに半笑いになる魅力が確かにそこにはあります。何というか、液晶の前で「分かった。とりあえず話は聞こう」ってなれれば、その表現の独特さもふくめてするすると最後まで読めてしまう面白さ。



 いきなり「私は普通の人間です」とか言われてもなあ。どう見ても違うだろ。言うなれば、赤ちゃんをあやしている女性を見て「彼女は若い男が好き」と断じてしまうような流れだ。見るからに普通ではない。普通ではないからこのような文章を書ける才能が備わったと解釈して、まず間違いはないと思う。

 

【第10回】遭難する準備はできている(前編)|岡田育|ハジの多い人生|cakes(ケイクス) https://cakes.mu/r/IrBJ

【第11回】遭難する準備はできている(後編)|岡田育|ハジの多い人生|cakes(ケイクス) https://cakes.mu/r/PwBJ



 ちなみに、二村ヒトシさんとメガネ着用異性のネタが被っています。この彼我の着眼点の違いや、ありふれたものに拘った結果、物好きが催す劣情の性質の肌触りを感じて欲しいなあと思うんですよね。



第11回 メガネ男子のメガネは男性のシンボルである【愛と変態の冒険と展望 ①】|二村ヒトシ|キモい男、ウザい女。|cakes(ケイクス) https://cakes.mu/r/drBJ



 いやー、Cakesって本当に楽しいですね。