-30度のところに比べると、札幌や千歳は温暖に感じられるのです。

 あまり馴染みのない仕事に従事しておりますが、私自身もともと交渉ごとに強く、国際的な貿易の実務や契約については付け焼刃的ですけど多少の知識がありましたので、心配されたような暗礁に乗り上げる系の行き詰まりもなく淡々とディールがまとまっております。やればできるじゃん>私

 以下、守秘義務とか抵触しない程度に現段階での所見などをメモ風に。
● 日本の商社は本当に頑張っています/重宝されています

 日本の商社は一時期不要論だなんだといわれておりましたが、総合商社も専門商社も契約のボリュームで劣勢な部分があるものの、中国系、韓国系その他に比べてまったくヒケを取らない情勢であります。

 中国の人たちは決断が早く、現場でバサバサ案件を仕切るので、一見優勢に見えるんですけれども、言ったことを守らない、国境渡しで話が通っておらず決済されなくて物資が滞留するといった事態が日常茶飯事で、売り側にも買い側にも中国系はあまり信用されないのが現実です。なぜか日本人やユダヤ系ロシア人が間に立ってコーディネートしたりしてるみたいで。なんぞと思います。

 日本は買いのボリュームが微妙な場合が多く、決裁が遅いものの、買うというときは必ず守るし、払いも受けも正確で、ダブつきそうなら日本に回しておけ的なことを考える機会が多いそうです。

● 日本の建設会社、鉱山会社も頑張っています

 工期や業務が正確で、重宝されていました。悪い話を聴いたことがありません。というか、もっと日本人死ね的な話でも出るのかとドキドキしていましたが、こちらが韓国人ではなく日本人であることが分かると露骨に態度が良くなるロシア人がいっぱいいました。

● サウナで商談が決まるので体作りが大事です

 寒いところに住んでいる偉いおじさんは、寒い場所で仕事をするのが嫌いです。で、サウナに昼から入ってたりして、サウナであれこれ話をしようと誘われます。流暢なロシア語よりも、いい身体であることが大事であることが何となく分かってきて(というか、まともなマネージャーさんたちはみんな留学経験があって必要最低限以上の英語をお話になられる)、ちょっとだけだけど筋トレしてて良かったと思いました。

 凍らない程度の室内プール横のサウナは危険です。いい商売がまとまってハラショーなので冷たいプールに一緒に飛び込もうとか言われるのは大変です。何度もやると心臓が痛いです。

● 軍事の知識は知ってても言わないほうが無難です

 まあ子供のころはシステムソフトの大戦略シリーズで遊び、大人になってもハーツオブアイアンで弱小国を指揮するのが好きな私ですが、向こうの偉い人は結構本気の兵役経験者が多く、甥がアフガニスタンに従軍して右手なくなって帰ってきたけど志願してダルフールに逝って自動小銃のマスタリーになってるとか、ドイツに大包囲されたレニングラードで生き残った婆さんがようやく死んで遺産が入ってきたので大変ハラショーだとか、ベリヤのお陰で死んだ親族の名誉が回復されたけど他のタバーリシが軍属に入ったままなのでおこぼれがなかったので銃殺したいとか、そういう話ばっかりなので、日露の軍事や戦争に対する観念のレベルが違いすぎて話になりません。

 ロシア人は偉い人も現場の人も強いロシアが大好きで、強かったころのロシア、ソ連の話が大好きで、そのころのロシアを取り戻すためにはまず軍備であって、それをもってしっかり周辺国を脅かしながらいつでも戦争出来る体制にしておくのが国益なのだとはっきりした意識がおありで、凄かったです。

● 最後にはだいたいモンゴル人が騙されます

 何か抜き差しなら無いことが起きると、とりあえずモンゴルか新疆ウイグルあたりに押し付けておけば大丈夫的なことを言う中国人やロシア人が多く、ある程度のコモンセンスになってるみたいです。これやると結構な汚染水や廃棄物が出るので処理しないと云々という話をしていると、それは列車に載せてモンゴルに送り込むかシベリアのどっかに大きな穴掘って埋めるか北極海あたりに流すから気にするな的な結論になって、しかも契約書上もだいたいそういう内容になっているので驚きです。

● 人の価値が安いです

 前にベトナムやパキスタンの仕事などでも似たような話はあったんですが、彼らのビジネスは現在進行形で人の価値の低さが衝撃を与えるのに対し、極寒の地のビジネスにおいては「あの取引は実に良かった。10人ぐらいしか人が死ななかった」とか「あのディストリクトの鉱区開発に250人の作業員を中国から連れてきて、180人しか宿舎にいなくなったが気にするな」とかすべて過去形で語られます。

 どっちかっていうと、機械を突っ込んで効率を上げて採算を取るよりも、人海戦術で人を送り込んで現場が二本の手でどうにかするというドクトリンが大好きです。

● 何か想定外のことが起きるとチェチェン人のせいになります

 極東でチェチェン人を見たことない、というかトランスウラルのほうからの人をあまり見ないんですが、なんか事故ったとかうまくいかないとかの話は「チェチェン人がいかん」という良く分からん結論になって沙汰止みになります。

 何かのギャグなんだろうと思っていたんですけど、過去の報告書とか読んでいると「ウイグル人の山賊が出て積荷を奪われた」とか「国境付近でチェチェン人の一団が現れて積荷を奪われた」とか「中国人の匪賊がビハーク地を襲撃して人質を取られたので交渉の結果積荷を奪われた」とかそういう話がいっぱい出てきます。本当かいな。

● 意外に賄賂が通用しません

 中国でビジネスをしている感覚だと、結構大掛かりな接待攻勢をして賄賂というか親しく仲良くするというのが必要ですが、人種がたくさんいるところでビジネスをしているとどこぞの人々と仲良くしていることが割れて、我も我もという話になりやすいことの警戒と反省から、あんまり露骨に袖の下をやり取りするというようなことはないみたいです。

● 日本人が少ないです…

 日本人が少ないですが、なんか中国人が経営している日本料理店とか、どう考えても直営とは思えない日本車専用の中古車ディーラーとか、いろいろあります。一番人気は日本の建機だとか。寒冷地でも壊れないんだって。へえ。