ヒマネタの領域ではありますが、まだやってたんだ、という話がありましてピックアップしてみたいと思います。

 あらすじを簡単に言いますと、週刊アエラとかいう木村カエラとカメラの木村の弟分である雑誌に中途採用で若手記者が入ってきまして、先輩記者に紹介された右翼を取材する過程で美人局にバッチリひっかかり、それをネタに新聞協会の偉いポストを狙ってる朝日新聞の偉い人を見事直撃、関係者右往左往という阿鼻叫喚の構図のようであります。

 話の振り出しは一誠会なんですが… しばらく民族系右翼を標榜する右翼団体の間では、無難というか人畜無害というか堅気を自称するぐらい穏健で、高齢化する日本の活動家集団の縮図みたいな感じの人々です。話をすれば人柄が良く物分りがいいという。ロフトプラスワンなんかでもちょくちょく平野さんらと壇上に上がっておられるようです。もっとも、Wikipediaでは堅気であるとか書かれていますが、警察が言うには立派な反社会勢力でありまして、誰がこんな編集をしたのか突き止めてみたい気分になります。反社会勢力だから何かいかんのか、どういう軋轢があるのかという点はいろいろと議論があると思うのですが、本稿では特に触れません。

 で、そのAERAの若手記者氏、どういう経緯かこの大日本一誠会の取材をすることになりました。話を聴いた右翼のおじいちゃん達が言うには、かなりとっぽい記者だったようで、頑張って勉強しているんだなあ以上の印象を受けなかったとか。なので、こいつをちょっと「使って」やれ、となったそうで。そして、取材途上に突然現れた右翼活動を良く知る謎の女性に急速冷凍で篭絡されて、ものの一ヶ月前後で美人局のど真ん中に嵌ってしまったようであります。一誠会の取材から謎の女性に到る経緯もまた面白いんですが、この辺は割愛。もちろん取材に限らず、出先で女性からアプローチがあったらまず背景を疑えというのは基本かと思うんですが、この女性がまたプロでありまして、その意味で素晴らしい女性なんだそうであります。

 また、そういう古典的な真似をするから反社会勢力だと思われるのもまた致し方のないところで。話では、この若手記者氏が詫び状を書いて、示談金100万円だかを支払い、しかもそれを脅かした側が受け取っちゃったということで、そりゃまずかろうという話であります。なんとか一誠会も矛をおさめて、丸く着地させようという経緯もあったようなんですが、常識的に考えればおカネの授受があった時点でアウトですかねえ。

 問題は、美人局に吸い付かれた若手記者氏を、ピンでなんで取材に出したのか、誰がそんな当たり先を紹介したのかなんですが、これがまた藤生明記者という、右翼系の面白記事をAERAで連発している、界隈のちょっとした有名人です。どんな記事を書いているのかというと、取材相手との癒着というよりは、もう完全なヨイショ記事をAERAでやるわけです。

「世界愛国者会議」って?
http://www.aera-net.jp/summary/100620_001725.html
芸能界と裏社会
http://www.aera-net.jp/summary/111106_002636.html
政治結社と裏社会
http://www.aera-net.jp/summary/111120_002657.html

 最近の記事では、ネット右翼のデモがなってないってことで、こともあろうに一誠会の渡邊謙二会長って人に右翼活動とは何であるかを語らせて活字にしたりしているわけですね。何というか、社会事象を斬る傍らで右翼団体のリクルート活動の片棒を担うとはまことに結構なことです。

 で、騒動になっているのはこのAERAの紹介者であるはずの藤生記者が、違法性の疑わしい美人局の収拾を図るでもなく、右翼方面では「俺が話をつけました」的なことを言ってたということで、なかなか豊かな人間性をうかがわせます。話を聴いたときの私の正直な感想としては、AERAは懐が広いなあ、よくこんな記者飼ってるなあというところでありましょうか。確かに、食い込んでるという意味では凄いんでしょうけれども。

 別の右翼団体の側でも、朝日新聞への揺さぶりが目的だとしてもいまどき美人局はねえだろ、ましてや現場記者相手に、みたいな話もありましたが、過日も外務省職員が某ホテルオーナーの女性にのめり込んだり、大手IT企業経営者が変態的なサービスを提供するクラブで写真を撮られて大金を巻き上げられたりといった事例があとを絶ちませんので、まあもうこの辺はそういう人たちの伝統芸能だと思って諦めるしかないんですよね。

 事態解決のために立ち上がって、いま座ろうとしているのは、AERAのスター記者、大鹿靖明氏であります。なんでここにきて大鹿氏のような熱い男が出てくるのかというと、美人局に嵌った若手記者氏は、大鹿氏にあこがれてAERA編集部に入った、ということでありまして、いやあそれお前どうなんだよというところではありますが、事実そうなんだということなので、私のほうから語るべきことはございません。

 大鹿氏は実績もある優秀な記者ではありますが、まあ何と申しますか猪突猛進というか、思い込んだらどこまでもといった風情の御仁でありまして、ヒルズ事件のときでも外資系証券会社の言い分を真正面から擁護する不思議な本を書かれたり、佐藤優氏の件では本人のために良かれと思って誤報を流すといった、煮えたぎる系の人ならではの逸話で溢れております。

 当然、自分を慕って入ってきた後輩が、同じ編集部の藤生氏に刺されたも同然の事態になって黙ってみているはずもなく、猛然と介入… といえば聴こえはいいんですが、しばらくこの後輩の若手記者氏は、大鹿氏に事情を話してなかったっぽいんですよね。何か思うところはあったのでしょうか。というわけで、藤生氏と大鹿氏のバトルの様相を呈するのですが、あろうことか藤生氏は大鹿氏を「脅かしてやったら黙った」と語っておられるようで。また武勇伝に1ページが。一方で、大鹿氏が問題の舞台となった右翼団体の面々に直接会って何か交渉しようとした、という話はいまのところ伝わってきていません。

 そして、舞台は朝日新聞本社へ。どういう経緯か、この事件が理由で新人記者氏は朝日新聞を辞めてしまったようです。これはまずい。どうも朝日新聞としては本件に蓋をしたくて揉み消そうと頑張ろうとした経緯があったようです。もちろん、大新聞社としては社員を守り、組織を保つためにはこの程度の問題は公にせず穏便に済ませるというのが基本だという考え方もあり、事件をうやむやにしようとしたからといって一概に否定されるべきものではないと思います、とフォロー。ご対応の社長室だかと法務部の皆さまは誠にお疲れ様でございます。

 ただ、朝日新聞からおカネなり影響力なり毟り取りたい意向の強い右翼サイドからしますと、基本的に「問題を隠蔽しよう」とするから「問題を暴かれたくなかったら、こういたせ」という恐喝に付け込む隙が看て取れるわけですね。弱みを握った、というのは相対的なものであって、本人がそれが弱みではない、開示してOKでござるとなった瞬間に、合理的目的での恐喝は成立せず、あとは嫌がらせ程度の話になってしまうのです。

 この辞めた若手記者氏、身辺整理にあたって、律儀にも彼をはめる側に回った人にまで「辞めることになりました」とご挨拶をしたとかで、逆に同情票が集まって評価がうなぎ上りなんですね。忸怩たる部分はあると思いますが、次なる人生でこの失敗を活かし存分に羽ばたいて欲しいです。

 こういう人間模様があるからこそ、朝日新聞からすれば傍流であるAERAの、しかも入社何年も経ってない中途採用の記者が美人局に引っかかったぐらいの話が年末の忘年会ネタになってしまったりするのですね。まあ、一般論としては、普段まったくもてないのに、分不相応に若くてセクシーな女性が近寄ってきたら、自分のポケットに気をつけましょう、ということで。

 一日でも早くmixiの株価が暴落することを期待しております。